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361: 夢の続きでまた会いたい、二度寝する幸せ色

森の奥深く
あなたが知っている
もしくは知らない場所にある色屋のお話。

まどろみからふと意識が上がり
朝の光が瞼に落ちる…
”朝か…懐かしい景色、懐かしい顔ぶれ…“
そうぼんやりと思った色屋は,またゆっくりと
夢の中に戻って行った。

………

暗い扉を開けると目の前に広がる景色は,
青々とした葉をつける高い木々,
開放的な青空と眩しい太陽,広いテラス。

テラスの左側には大家族がテーブルを囲み
食事を楽しんでいる。
僕は彼らに手をあげて挨拶をする。
彼らもまた,笑顔で挨拶を返してくれる。

テラスの右側の壁際を見ると,
古くからの時計屋があり
さまざまな時を刻む時計を売っている。
ここに小さい頃に紛れ込んだ時の記憶は
いまだに鮮明だ。

…コチコチと時を刻む音と,古い時計の板の艶,
白い髭を蓄えた老人が,
細かい作業をする時につける片眼鏡をはめて
チラリとこちらをみた時に,
入ってはいけなかったかもしれないと言う恐怖と
それでもどうしても引き寄せられる
さまざまな時計の魅力に
心臓がドキドキしたのだった。

「おや坊主。迷子かい?」
話しかけられてビクッとなり硬直する私。
「………」
「びっくりしなくてもいい。
乱暴に触らないなら好きなだけみていいぞ」
そう言われたので,ホッとして沢山のの時計を
飽きることなくみていたんだったっけ…

そんなことを思い出し,
時計屋の老人にも挨拶をして
相変わらず時を刻む時計たちにも
挨拶をするように,そっと触れる。

しばらくして大家族の末の娘が
「色屋さん,さっきはすぐ帰っちゃったでしょ?
私たちこれからデザートを食べるの。
よかったらご一緒なさらない?」
と誘いに来てくれた。

彼らはいつも純白の夏らしい服装をしている。
「おお,それは素敵です。よろしいのですか?」
「もちろんよ。長い付き合いでしょ?
パパも喜ぶわ。色屋さんのお話が好きだから」
時計屋を後にして向かったテーブルで、
一家の長の挨拶を受ける。
「よく来たね。久しぶりじゃないか?」
「なかなかゆっくりできなくて。
ご無沙汰してしまいました。」
「さぁさぁ色屋さんも座って?
今日のデザートは末っ子のリクエストで
ベリーを使ったピンク色のムースなのよ!」
「いただきます」

ワイワイと賑やかに会話が繰り広げられ
皆が大いに飲んで食べる食卓。
ムースはほんのり酸味を残して程よい甘さ…
末っ子の美味しいかしら?という問いかけに
ニッコリと笑い頷く私。

ゴクッと飲み下した時にハッと目が覚める。
色屋は夢で訪れるあの場所から
一気に帰ってきてしまったのだった。
「ああ,また おいとまのご挨拶もせずに
帰ってきてしまった…ムースも最後まで
いただけなかったし…
おや?私はいつからこんなに用意周到に
夢に向かうことができるように
なったんでしょうね?…」

手には先ほど一緒に食べていた
柔らかいムースのピンク色が
閉じ込められている瓶が握られていた。
「次に行けた時,
あの子にお礼を言わなくては」
そう言うと,うーんと伸びをして
色屋は眠りから覚めていったのでした。
何度も訪れる色屋の秘密のあの場所,
皆さんにも再び訪れたい夢の場所はありますか?





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