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203:グレープフルーツの苦味で目覚める勇気の色

森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。

「スッパ」思わず呟いた私の声は,
ガランとした部屋の中に響いた。
グレープフルーツは好きなんだけれども,
1人で食べるには持て余す大きさ…

ふぅ。と,ため息をついて立ち上がり,
“そういえば子供の頃は,お砂糖と
グレープフルーツの苦味が混ざった味が
食べたくて、もっと掛けてとねだったよね”
そんなことを思いながら,グレープフルーツに
ヨーグルトと,少しの蜂蜜を垂らして食べる。

ひとりぼっち。

不意に寂しさが押し寄せてきて,
目の前の景色が,色が,遠ざかる。
口の中のフルーツの味も酷くぼやける。

…大丈夫。大丈夫。

私の中の,色鮮やかに残る思い出を
一つづつ取り出して,冷えた指先を温める。
盛り上がってきそうになる涙を押し留めながら,
一粒ずつ弾けるグレープフルーツの房を
そっと噛む。

今日は遠くまで出かけるんだもの。
沈んではいられないの。

そう呪文を唱えながら,色鮮やかな黄色の
ボウルの中身を食べきり,出掛ける支度をする。

地図をもう一度確かめてから,カバンを持ち
家の扉の鍵をかけ,
どの色が私に元気を与えてくれるのか,
不安半分,期待半分を胸に満たして
駅までの道をたどる。

色屋さん。どんな所だろう。

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