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130: 甘く切ないドリア カスタード・ライスの色

森の奥深く。
あなたが知っている,
あるいは知らない場所にある色屋でのお話。

カランコロン…
「いらっしゃいませ」
「ここは色をあつかうお店…?」
「そうです。 あらゆる場所の色を集め,
お客様に提供しております。」
「私,旅に出る人を見送る時に
美味しい食事を食べてもらいたいの…

寂しい時,辛い時,挫けそうな時,
もちろん嬉しい時にも思い出してもらえて,
もう一度あの場所へ戻りたいって,
そう思ってもらえるような。そんな食事。

空腹が増すような思い出になるのは
避けたいけれども,灯台?と言うの?
岬の先に灯り,道筋を教えたり安堵をもたらす
そんな食事」

「大変美味しそうな想像が浮かんでまいります」

「お腹にたまって,暖かさが残って…
あらゆる人が美味しいなと思える…」

「こほん。
私,猫舌ですがドリアが大変好きでして…」
「ドリア?」
「米と芋などをホワイトソースやブラウンソースで閉じ込めて,チーズというものをふりかけて
窯で焼いて熱々で提供されるお食事です」
「なんだかすごいお料理のようね」

「そうですね…牛乳ベースで作るソースを
掛けるなら,このような色で出来上がるかと」
「遠くから見つけるとホッとする,
窓から明かりが漏れているような?」
「Custard Rice(カスタード・ライス)色ですね」
「この色なら思い出してくれそう…」

………

「旅に出る方のご無事を」

カランコロン。
扉が閉まり静かになった店内。
さまざまな瓶の中には
たくさんの物語が詰まっています。
次はどなたが買いに来てくださるでしょう?

色屋は空いたお腹をさすりながら待つのでした。





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