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一番好きな季節

私は自分の誕生日から夏の終わりまでが一番好きな季節です。

私の誕生日は、世界で一人しか知りません。
唯一、私の誕生日に「おめでとう」と、言ってくれる世界で唯一の人です。
でも、どうしてそのヒトが「おめでとう」と言い続けてくれるのか意味が分かりません。
もう、20年も会っていないし、この先二度と会うこともないのに…。

あ、市役所の人も知っている…と、言えるかも。でも、コンピューター化され、市役所の人もデータの渦の中で分からなくなるだろうから、やっぱり、私の誕生日を知るのは世界で一人だけになって、秘密の宝物のようで嬉しいです。

私の誕生日から夏の終わりまでは、緑が生い茂り、私も一緒に光合成をします。緑と一緒に自分も生い茂り、宇宙まで届きそうでワクワクするのです。
メランコリックな秋も、シルバーに染まる冬も美しいけれど、そんな秋や冬の晴れた日に光合成するのもいいけれど、やっぱり堂々と光合成できる誕生日から夏の終わりが好きなのです。
突然のスコールも好きです。モワッと湿度が高くなって、ポツポツからザーに。それが昼間なら、雨上がり、どこかに虹を見つけるでしょう。

いつ頃知ったのか忘れましたが、本当は、木の葉は緑ではないそうです。
「え?
 じゃあ、何色?」
…元々は、赤だそうです。
赤じゃあ、光合成できないじゃないか。
スゴイショックでした。
木の葉は元々、赤で、そこに葉緑素のシアノバクテリアが内部共生し始めたそうです。
秋に紅葉するのは、別に枯れたのではなく、木の葉本来の色に戻っただけなんですね。
私の光合成気分を返してくれ…と、思いました。
でも、よく考えたら、私の体にもシアノバクテリアが共生しているのかもしれません。だから、顔色が青いのかも…。それに時々、緑のニオイがします。
夏の終わりが寂しいのは、シアノバクテリアと、
「また来年ね。」
と、お別れしてるのかもしれません。
私が何百年か生きたら木になれるんじゃないかと思っていたので残念です。…その前に、何百年も生きないか。

チョット涼しい風が吹き、遠くで虫の声がし始めました。
それでも、残暑は続くでしょう。
美しい世界は次々に続いていく。私にとってここは、やはり楽園なのです。

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