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古式ゆかしいマナーは、エコだった。

食事中、食べ終わると、食器をなめるおばあちゃんがいた。

お〜、スゲェな〜。

と、ビックリしていると、

「○○さんも凄いのよ。食器にお湯を入れて、キレ〜に飲み干すの。もう、どの食器もキレイになってる。」

あれ?
それは、古式ゆかしいマナーでは?

ウチの祖母くらいの時代までは、
板の間で食事を摂っていた。

板の間は、まぁ、
フローリングの昔の呼び方。
黒くピカピカに糠で磨かれていた。

その床の間に、正座して、
高台のついたお膳に食器を
のせて食べていた。

大皿料理とかはなくて、
それぞれ一人分の食事が
お膳にのる。

もちろん、
座る場所も決まっていて、
上座に頭首。
次に男性陣が並び、
一段下がった板の間に
女性陣。

食べる作法は
箸を右手で上から持ち、
軽く箸先近くを左手に添え、
右手を箸の下側に回し、
箸を左手から離す。

先ずは、
味噌汁椀を左手で持ち、
箸で軽くかき混ぜる。

でも、
味噌汁は飲まず、
お膳に戻す。

そして、
ご飯を一口食べる。

次は副食。

その次に味噌汁。

ご飯、副食、味噌汁の
三角食いで食べる。
沢庵(たくあん)を一切れ残す。

食べ終わったら、
お茶を、お椀に注ぎ、
沢庵で、食器に残った食物を
キレイにこすり、
沢庵は食べてしまう。
お茶を飲み干す。

それが、
祖母までの時代では、
正しい食事のマナーだった。

片付けは、お膳ごとしまい、
毎回、
食器は洗わなかったようだ。

だから
食器をお茶でキレイにして
飲み干す必要があったのだと
思う。

私が子供の時は、
お正月だけその作法で食べた。

高台のお膳。
魚、煮物、漬物。
すまし汁。
ご飯。

でも、食器はちゃんと洗った。
塗り物の食器は、
熱湯で洗うと痛むので水で洗う。

私の世代でも、
そんな食事は珍しいのかも
知れない。

○○さんて…と、言った方は、
私より、20歳くらい年上だし。

母に世代交代すると、
板の間で食事する事はなく、
畳に低いテーブルで、
大皿料理になった。

高台のお膳は、
物置の奥に仕舞われた。

高台のお膳で食べる料理は、
特別な感じをかもし出し、
結構好きだったな。


お茶で食器に残ったモノをキレイにして飲み干す、と言うのは、今の時代だと、

「なんか汚い」

と、思えるかもしれないが、実は登山部の方もやっている。登った山の自然を汚さないためだ。

それに、毎回洗う水だってカナリ節約になる。もちろん、汚水だって減る。

祖母の時代は、
水は湧き水で、水量も多く、
今より使い放題だったけれど、
「水が勿体ない」
という感覚は強かった気がする。

異常気象で
一番心配されているのは、
飲水だ。

自然浄化力も落ちているから
さらに水の確保は難しくなる。

でも確実に、
今のほうが水を汚している。

私は、
ご飯を土鍋で炊いているのだが、
洗剤を使わず、
シュロのタワシで洗っている。
それでも十分汚れは落ちる。

でも…、
他のモノは、食器用洗剤で洗う。
もしかしたら、
傷が心配なければ、
シュロのタワシだけで
十分なのかもしれない。

除菌もいいけど、
飲み水がなくなるのは
辛いな…と、思う。



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