鉄人は草を喰む
オフィスに米国から電話があり、「いま友達と一緒に食事してるから電話変わるね」と言われ、いきなり受話器から別の声がした。カナダ人のお客さんだった。
「あれ?もうロスには来れちゃうの?」
「大丈夫だよ、もうワクチン2ショット終わったからね」
彼はランナーの先輩で前回初めてフルマラソンを走った時には、トレーニング方法などアドバイスをもらった。私は単なるファンランナーだが、出張先などで朝走っていることを伝えると、世の中には本格ランナーは意外に多く、皆さんそれなりの自論を持っており、こちらから尋ねずに教えてくれる。
彼からもらったアドバイスで特に良かったのは、フルマラソンを走る準備のためには、毎週少しづつ走行時間を伸ばしてゆけと言うもの。ここでミソなのは距離を伸ばすのでなく時間を延ばすこと。やってみればわかはずだが、時間を目標にすると気持ちが楽なのだ。別にゆっくり走ってもいいからね。距離基準だと進まなければいつまで経っても到着しない。でも時間ならほっといても経ってくれる。実際はだからといってゆっくり走るわけでなく普段のペースなのだが、心理的負担が驚くほど少ない。例えばその日は20キロ走ると計画すると、17キロくらいからしんどいのです。あと500メートルもけっこうつらい。でも2時間だと、あと15分だと思うとすぐなのだ。不思議なことに。
まあともかく彼のアドバイスは役に立った。
電話に戻る
ランニングの先生に報告がある。
「今月末にフルマラソン走るんだ」
「おおそうかい、そりゃいいね。結果をまた報告してくれよ。僕は今週末にアイアンマンレースがあるよ」
「ワオ!」
彼はそのために米国入りしてたのだ。
アイアンマンレースとは水泳3.8キロ、自転車180キロ、フルマラソン
恐ろしや。
水泳を想像しただけで尻込みする。
今回のレースは川を泳ぐそうな。
「もう水が冷たいでしょ?」
「問題ない。ウェットスーツ着るからな」
大会の概要をネットで確かめてみる。アイアンマンレースは世界中で行われてる。1番驚いたのはそのエントリー費用だ。795ドル〜。なぜそこまで払って苦役に臨むのか?
彼のユニークな点はヴィーガンだということ。つまり肉を食べない。娘さんがドキュメンタリーフィルムを観たことがきっかけで肉が身体に悪いと知り、一家でヴィーガンになったという。私も映像を観て少し気になっているが、1番心配なのは、野菜だけで体力が保てるのか?ってこと。彼はいう。サイやゾウを見よと。草食であの身体を維持してる。まあそもそもヴィーガンの彼がアイアンマンレースでランキング入りすることを見れば明らかだな。
レース翌日彼にメッセージ打った。
無事終わったかい?
彼の返信は想定外だった。
“The Ironman was cancelled due to extreme weather and flooding!”
洪水で中止
命懸けだ
以上