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最近のインディーゲーム宇宙でブラック労働しがち問題

最近、積みゲーしておいた早期アクセスの「Space Trash Scavenger」を遊んでみたが、ストーリーは「ブラック企業に雇われている主人公が宇宙で一人ぼっち作業」というもので、「またそういうやつ?」とデジャブを感じた。

正直、ゲームなんだから大事なのはシステムとか操作性とかグラフィック面であって、ストーリー面はフレーバー程度のもので十分だ。ゲームの概要にもストーリーのあらすじすら書かれてないものがほとんどである。だからストーリーはゲームの評価とはほとんど関係ないころではある。だけど、とにかく最近のインディーゲームの主人公は膨大な作業に追われながらプロレタリアートの悲哀を訴えがち。自分が遊んだことがあって思いつくだけで以下のゲームが挙げられる。

宇宙でブラック労働なゲーム

  • 「Infinifactory」(2015)

ある日突然宇宙人に攫われた主人公。軍事政権の宇宙人国家に囚われて、パーツ工場の立体パズル問題が延々と出される日々を過ごす。時々ステージには前任者の死体やログが見つかる。ご飯は独房に支給されるカリカリのペレットのみ。後半からはレジスタンスに拾われて一転、軍事政権打倒のための武器パーツ作りが始まる。ゆっくりじっくり考えるパズルゲームなのに無駄に展開がアツい。

  • 「SATISFACTORY」(早期アクセスリリース2020)

チュートリアルではプレイヤーはFICSITという企業の所有物だと強調される。一人ぼっちで惑星に投下され、一人ぼっちで巨大工場を建設し、でっかい軌道エレベーターに要求された工業製品を黙々と投入していく。クリーチャーとの戦いや落下でダメージを受けると「FICSIT資産へのダメージが検出されました」と表示される。

  • 「Hardspace: Shipbreaker」(2022)

主人公は借金を抱えさせられて宇宙船を解体する企業で働き続けることになる。解体中にうっかり命を落としてもクローンのスペアがあるから永遠に働けるよ!働くのが嫌すぎて溶鉱炉に身を投げるのが癖になる労働者もいるようす。他の労働者ともおしゃべりできる中でなんとか企業に抵抗する道を探す。

似ているがブラック労働とは言ってないゲーム

とはいえ、上記と似ている世界観だが特にブラック労働的な設定はないゲームも思いつく。

  • 「サブノーティカ」(早期アクセスリリース2014)

難破した宇宙船で生き残った主人公が未知の惑星を調査していく。危険な生物や環境に打ち勝っていくサバイバルの要素が強い。

  • 「Factorio」(早期アクセスリリース2016)

墜落した宇宙船からスタート。地上の資源を集めて巨大工場を作り、最終的にはロケットを完成して脱出するのが目標。敵対生物の襲撃に対応するのが忙しい。

特に「Facrtorio」はその後「SATISFACTORY」にも影響を与えたゲームだけに、ブラック労働的な設定が付与されるようになったことに時代の変遷を感じる。~2015年くらいまでのトレンドがマインクラフト的な「サバイバル」だったのに対して、「ブラック労働」というフレーバーがこの頃辺りから2020年代にかけて新たに流行するようになったと考えられる。

なぜ宇宙でブラック労働しがちなのかの考察

実際に宇宙でブラック労働なゲーム遊んでみて思うのは、「作業ゲー」がほとんどだということ。
(自分の選ぶゲームの好みの問題かもしれないが…)
作業ゲーというのは、危険やアクションは少なめで、似たような作業を淡々と繰り返すタイプのゲームのこと。これが無心に没頭できて落ち着く…という意見もあれば、仕事っぽくなってきて疲れてしまうという意見もあるとか。つまり「作業ゲー」は「仕事っぽい」のである。ここに着目していった結果、サバイバルに代わるトレンドとしてブラック企業的設定が増えたのでは?と考えられる。
次に宇宙が舞台であることの考察なのだが、現代が舞台ではリアルすぎてしまう、ちゃんと描くには誠実な取材や調査を求められるテーマとなってしまうことが負担になるからだと思われる。なお、上記に挙げた「Hardspace: Shipbreaker」は宇宙の話だが実際の船解体産業の労働者の暮らしから着想を得ているそうだ。

宇宙が舞台ということはたいてい未来のSFの話になるわけだが、そこが資本主義社会の成れの果てであるだろうこと、宇宙規模の大企業とそして労働者からの搾取がある世界であるだろうことが、現実の労働問題やさまざまなフィクションの影響もあって想像しやすいのだ。

映画やフィクションの影響も?

先程挙げた「Hardspace: Shipbreaker」の記事では開発者が映画「ゼロ・グラビティ」や「エイリアン」の影響を受けたことが述べられている。特に「エイリアン」は企業所有の宇宙船が舞台でそこにいるのは労働者という設定が新鮮だったことからも影響を受けているかもしれない。
逆に、ゲームみたいな設定を映画に持ち込んだ例としてラノベが原作の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」にも触れておきたい。何度死んでもある時間からやり直せるようになったトム・クルーズが、宇宙人との戦いの中でまるで死にゲーのようなループを繰り返す映画だ。これは「死にゲー」を映画的なストーリーに落とし込んだ例だが、ゲームのブラック労働描写も似たような工夫をしていると言えるのではないだろうか。つまり「作業ゲー」にまっとうなストーリーを与えるとすれば「企業とブラック労働」になるのだ。

宇宙ブラック労働の最新作にしてエポックメイキングな「Mouthwashing」

最後に同ジャンルの最新作を紹介しておく。

  • 「Mouthwashing」(2024)

本作は「作業ゲー」ではない。一本道のストーリーを追うサイコホラーゲームだ。リリースされたばかりなので大きなネタバレは避けるが、宇宙船が難破してしまい、4人の船員に残された食料は倉庫いっぱいのマウスウォッシュ液だけ。というストーリーだ。詳しい描写は省くが、今作も宇宙船でのブラック労働がテーマのひとつになっていると言っていい。宇宙時代には労働者の搾取が蔓延っているという背景も、数々の宇宙ブラック労働ゲームを経た我々には大変飲み込みやすくなっていると感じた。そう、あの甘いマウスウォッシュ液のように…。


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