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「ローカル」をテーマに挑む、新しい出版のカタチ

2019年4月11日に遊泳舎の第3弾となる書籍『1000年以上つづく例大祭 くらやみ祭ってナンだ?』(著・かぶらぎみなこ)が発売されました。「くらやみ祭」とは、東京都府中市にある大國魂神社で毎年5月に行われているお祭りのことで、この本は「くらやみ祭のイラストガイドブック」です。

「狭い」けど、とことん「深く」


遊泳舎の1、2作目である『悪魔の辞典』と『ロマンスの辞典』を知っている人からすると意外と思われた方も多かったようです。『悪魔の辞典』『ロマンスの辞典』は、ただ読みだけじゃなく、自室の書棚に並べたい、人にプレゼントしたいと思えるような“モノ”としての価値にこだわった本で、あえてテーマをつけるなら「スペシャル」だといえます。

対して、今回の『くらやみ祭ってナンだ?』のテーマは「ローカル」です。出版はマスメディアですから、日本全国を対象に広く本の販売を行うのが基本的な営業戦略になります。

しかし、「広く」は同時に「浅く」を意味します。もちろん「広く、深く」読者に本を知ってもらうことが理想ですが、現実的には難しく、広く展開するとなると、どうしても営業力、発信力、なにより資金力のある大手版元には敵いません。

そこで逆転の発想で「狭く」とも「深い」の本を作ろうと考えたわけです。それもとことん「深く」。まだ、発売して2週間ほどですが、府中を中心に京王線沿いの書店や販売をしてくださっている観光協会などからは上々の反応をいただいています。しかも、くらやみ祭の本番は5月3日~5日。その間も多くの方に手に取っていただく機会が増えそうです。

「わが町の文化」を「わが町の作家の本」で知ってほしい


ローカルという意味では、著者・かぶらぎみなこさんは府中出身、府中在住のイラストレーターです。この企画が成り立った理由として、彼女自身にイラストや取材の実力、そして柔和な人柄が備わっていたことはいうまでもないことですが、地元の作家ということもあり、制作時から府中の方々の多大なる応援と協力をいただけたことも大きな力になっています。

また、先日、府中観光協会が『くらやみ祭ってナンだ?』を買い取ってくださり、府中市の小・中学校に寄贈してくだるという嬉しいニュースがありました。なぜ嬉しかったかといえば、この本を読んでほしいのが、府中の方々、特に子どもたちだったからです。

今はスマホさえあれば、地球の裏側の情報でも簡単に手に入る時代。それだけに自分の身の回りのものを見ることが疎かになってしまいがちです。そんな中、わが町の作家が作った本で、わが町の歴史・文化であるお祭りを知ってもらいたいという思いがありました。

グローバルな考え方、生き方も良いですが、それと同じくらいローカルも大切にしてほしいのです。

くらやみ祭は、1000年以上つづいているお祭りです。そんな歴史と伝統を詰め込んだ『くらやみ祭ってナンだ?』は、10年経ってもその価値が失われることのない、息の長い本として読み継がれてくれることでしょう。

(文・中村徹)


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