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アニメ『君は放課後インソムニア』第3話「一つ星さん」星の名を読み解く
この記事の趣旨
アニメ『君は放課後インソムニア』のサブタイトルの星を読み解く|ゆえ (note.com)
アニメ『君は放課後インソムニア』第3話のサブタイトルは「一つ星さん」である。
かつて一人きりで天文部員として活動していた白丸結先輩の比喩と思われる。
方言としては、星に「さん」や「さま」などの敬称をつけて呼ぶ例は結構あり、星への敬いや親しみが感じられるものだ。
サブタイトルとしては、先輩への敬意や親近感を込めているようにも思う。
その時期や方向に目立つ星が「一つ星」と呼ばれるケースは複数あるが、今回のサブタイトルは「一つ星さん うお座フォーマルハウト」となっている。
「フォーマルハウト」という固有名を持つ恒星は、「うお座」ではなく「みなみのうお座」のα星である。
「うお座」と「みなみのうお座」は別の星座なので、サブタイトルでは「みなみの」が抜け落ちてしまったものと思われる。
みなみのうお座α星フォーマルハウト
フォーマルハウトは、秋の空の範囲で唯一の1等星とされる。
冬の空には1等星が7つもあるのと比べると、やはり秋の空は暗い星ばかりの印象がある。
実際に秋の夜空を見上げれば、他にも1等星を見ることはできる。
こと座ベガ、わし座アルタイル、はくちょう座デネブからなる「夏の大三角」は秋でも見られるし、時間が経てば「冬の星」の範囲とされるぎょしゃ座カペラなども上ってくる。
それでも、フォーマルハウトは、秋の時期の南の空の低いところに、ぽつんと光っているような印象がある。
北尾浩一『日本の星名事典』では「みなみのうお座」の項の「ヒトツボッサン(一つ星さん)」の記事には内田武志・野尻抱影からの引用情報しかなかったので、情報源となっている野尻抱影『日本星名辞典』を確認した。
こうしてぬか星ばかりでほの明るい星月夜に、めずらしくも一等星がひとつ見出される。みずがめ座の水の流れを飲んでいる南のうお座の主星でフォーマルハウト(魚の口)である。しかし、淡黄いろの、一等星も末位の星で、東南に低くぽつんと光っている姿は孤独感を誘う。漢名の〈北落師門〉もどこか淋しい。
けれど、航海用の目標の一つとなっているので、和名もあるはずと思うが耳にしたことがない。それで、北極星の〈北のひとつぼし〉から思いついて、仮りに〈南のひとつぼし〉と名づけておいた。
その後、静岡の内田武志氏の発表に、
ひとつぼっさん 駿東郡小泉村
があった。註に「冬の東南方にただ一つ現れる大星とあって甚だ簡単だが、フォーマルハウトを指しているものかと思う」とある。
「冬の」に疑問があるが、まずフォーマルハウトと思われる。そして、同氏が「南の一つ星サマ」と書いていたのが喜ばしかった。
フォーマルハウトは、よく「南の一つ星」と呼ばれるというイメージがあるが、これは野尻抱影による仮の命名だったらしい。
フォーマルハウト以外の「一つ星」
北尾浩一『日本の星名事典』の索引を見ると「ヒトツボシ(一つ星)」「ヒトツボシサマ」などのページ番号が複数掲載されているので、フォーマルハウト以外に「一つ星」と呼ばれているものを列挙しておく。
・北極星(こぐま座α星)
・カペラ(ぎょしゃ座α星)
・カノープス(りゅうこつ座α星)
・宵の明星・明けの明星(金星)
大抵の「ヒトツボシ」は北極星を意味するようだ。
りゅうこつ座α星カノープスは、冬の南の空の低いところに現れ、中国では「南極老人星」と呼ばれるとされる。
カペラについては、第1話「能登星」の記事でも取り上げた。
金星は恒星と比べ物にならないくらい明るく、薄明るい空でも目立つ。
空に一つ星さんを見てみよう
5月だと「一つ星さん」が上ってくるのは夜明け直前になる。
見やすくなるのは9月以降だろう。
ペガスス座の胴体にあたる「秋の四辺形」を見つけたら、その西側(見上げて右側)の辺を南(下側)に延長した先に、「一つ星さん」を見つけることができる。
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