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アニメ『君は放課後インソムニア』第9話「星合」星の名を読み解く

この記事の趣旨
アニメ『君は放課後インソムニア』のサブタイトルの星を読み解く|ゆえ|note


アニメ『君は放課後インソムニア』第9話のサブタイトルは「星合 アルタイル・ベガ」だった。
逢瀬が描かれたわけではないが、天文部の合宿の準備が進んでいるので、合宿の「合」の字を含めているのではないかと思う。


星合とは

星の呼び名として「星合=アルタイル・ベガ」というわけではないが、「星合」は七夕の概念の一部と考えればいいと思う。
小学館の『日本国語大辞典』によれば、「星合」とは「陰暦七月七日の夜、牽牛・織女の二星が会うこと。」とされている。
わし座アルタイルが牽牛星(彦星)、こと座ベガが織女星(織姫星)で、その擬人化された2つの星の逢瀬を「星合」と呼ぶ。
よく言われる、七夕の「天の川の両岸に離れ離れになっていた織姫と彦星が年に一度だけ会える」という物語のことだ。

「七夕/たなばた」のイメージは一般的に馴染みがあると思うが、文化や行事、織女と牽牛の物語などにはバリエーションが多い。
由来も複数あり、混ざり合って文化が形成されてきたため、詳細に語ろうと思うと、きりがない。
ざっくりとした概要ではあるが、以下の引用を読めば、どこかしら「これは知っている」と思う部分があるのではないだろうか。

七夕
旧暦七月七日の夜。この夜、天上の「織女」(織姫)と「牽牛」(彦星)は、天の川を渡って、年に一度の逢瀬を楽しむ。この夜、雨が降れば、天の川が増水して二人は逢えない。この二人の逢瀬を、「星合」「星の恋」ともいう。織姫は天の川の北岸、琴座のベガ(織女星)、牽牛は南岸の鷲座のアルタイル(牽牛星)である。二人は舟で天の川を渡って逢うとも、鵲が羽を連ねた「鵲の橋」を渡って逢うともいう。地上では、星の恋の成就を祈り、また、裁縫や習字がうまくなるよう願って、短冊を「七夕竹」に飾るなど、七夕の祭が行なわれる。この七夕祭は日本と中国の行事が合体してできあがった。一つは、古代日本の夏越の祓(旧暦六月末日)から続く禊の行事。これに、中国から伝わった七夕伝説と、裁縫の上達を願う「乞巧奠」の風習が重なった。

出典:『日本の歳時記』 小学館


伝統的七夕

一般的に「七夕」といえば7月7日だが、現在の暦(太陽暦のグレゴリオ暦)の7月7日は、日本では梅雨時のことが多く、なかなか星を見て楽しめない時期だ。
そこで最近は、いわゆる旧暦(太陰太陽暦)の7月7日に対応する日を「伝統的七夕」と呼んでいる。
だいたい8月のいずれかの日になることが多いので、梅雨も明けて晴れていることが多く、実際に星を見て楽しむことができる。
伝統的七夕の日は、グレゴリオ暦では毎年同じ日にはならないが、太陰太陽暦に基づいているため、月の動きと対応している。
伝統的七夕の日の月の形は、上弦(半月)に近いので、これを舟に見立て「月の舟で天の川を渡る」という物語にも繋げることができる。


空に星合のアルタイルとベガを見てみよう

2023年の伝統的七夕は8月22日だ。
頭の真上(天頂)を見上げると、明るい3つの星(ベガ・アルタイル・デネブ)からなる「夏の大三角」を見つけることができる。
暗いところであれば、ベガとアルタイルの間に天の川が流れているのも見えるかもしれない。
下図は、東を向いた状態で天頂を見上げたときの星の配置となっている。
夏の大三角のうち、最も明るいのがベガ(織女星)、その次に明るいのがアルタイル(牽牛星)だ。
今しばらく梅雨空の下、星合を楽しみに待っていよう。

2023年8月22日21時の天頂の空(石川県七尾市)


参考文献

出雲晶子 (2012) 『星の文化史事典』 白水社
オンライン辞書・事典検索サイト ジャパンナレッジ
『日本国語大辞典』 小学館
『日本の歳時記』 小学館


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