怪盗の犯行予告の気持ち
怪盗はなぜ、宝石を盗み出す前に予告状を出すのか。
ミステリーやサスペンス、クライム物でのお決まりで、決まって律儀に予告をする。
予告しなければ神出鬼没、警察や探偵に対策とられることもなく、リスクだって減るだろうに、と思ったこともある。
劇場型だからっていうのもあるし、演出的にその方が派手だからってこともあるかもしれない。
盗むにしろ、何か誰かをやっちゃうにしろ、
いつ・どこで・何を・どうします、って、予告して
そしてそれ通りにやってみせる。
律儀で自分のルールがあって、それを遂行してみせる計画性、そして自己顕示欲。
犯罪心理学を語りたいんじゃなくて。
ああ、私のこれは「怪盗の犯行予告と同じなのかもしれない」と思ったことがあって。
今日、上司に、
「ちょっと色々無理になった。明日休みたい」
と申し出た。
本当に色々無理になったので、どうしても明日休みたい。
当日朝いきなり休む方法だってあった訳で。
でも、何だか、先に話しておきたい気持ちで。
ああ、これが犯行予告する怪盗の気持ちか、と、
ふと思った。
が、次の瞬間、なんか違う気がする。とも。
休む事は悪いことじゃない。
もちろん、一応の社内規定としては、前日じゃなくてもっと前から申告しておいた方がいいが、体調不良とか色々あって当日休むなんてよくある事で。
けれど、何だろう。
ただの体調不良でしれっと当日朝休めば良かっただけなのに、それをわざわざ、理由付きで前日に伝えるという行為は、どこか劇場型めいていて。
やらなきゃいけない事と、参加したほうがいい会議を、前日の時点でもう無理と投げ出しますと、それを上司に伝える必要はなかったのかもしれなくて。
知らせなくてもいいことを予告して、さぁ!と言わんばかりで。
自己顕示欲、なのかもなぁと思った。
ただ休むだけじゃなくて、
「もう無理です」という意思表明を伝えたかったのかもしれない。
「休む」という行為に「もう無理」という意思を乗せて事前に伝えることが、
「盗む」という行為に何かしらの意思を乗せる怪盗の予告状に似てるのかも?と、考察してみたり。
ごちゃごちゃと書いたけれど、とにかく、そういう訳で。
とりあえず、1日、会社休む。
上司にあれこれ余計なことまで話したことの中には、きっと嘘も含まれていた気がする。
休むことと飛び交うメールへの罪悪感と、ほらみろとうとう休んでやったぜ(?)という妙な達成感。
……やっぱり、怪盗の予告状と同じだったのかもしれない。