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【ヴァサラ戦記二次創作】ヨモギ外伝③-4―目覚める能力―

 「はぁっ!!」
真っ先に飛び掛かったのはアマネだった。しかし、ヘイズはそれを燃え盛る炎の剣で片手で簡単に受け止める。ヒリヒリと肌が焼けるような熱さを間近に感じ、思わず飛びのく。
「あちっ……!」
「ハッ、威勢がいいのは声だけかぁ?」
「アマネだけじゃ、ないべ……!」
続けざまにヨモギも低い姿勢で剣を構え、斬りかかろうとするが
「田舎モンはすっこんでな!」
とヨモギの剣も簡単に弾き返す。剣先から熱風が吹きすさび、その熱さに驚いたヨモギは態勢を崩し、地面に片手をついた。
「大丈夫か!?」
「くっ……まだ、いけるべ……!」
すぐにヨモギは立ち上がり、再度正面に剣を構え直す。

「迂闊に近づいたら火傷するぜぇ? さぁ、こいつを渡せば、大人しく退いてやるよ」
ヒヒヒと俗欲にまみれた笑い声を上げながら、カスミの肩に乱暴に手をのせる。カスミの顔が一気に恐怖に包まれる。
「お前……!」
「アマネちゃん、挑発に乗ってはダメよ。ここからでも、剣の熱さを感じるけどアレ自体に攻撃力はないの。……二人とも、時間を稼いで頂戴」
 妹が危機に陥れられるのを見て、怒りに沸き立つアマネを抑えながらカトレアは妙案を思いついたのか大剣を抱えながらタッと駆けていく。

「何、ゴチャゴチャしゃべってんだぁ!?」
「くっ!」
振りかぶられた剣に、アマネは咄嗟に反応する。確かに剣からは熱さを感じるが、それ自体に攻撃性は見られない。
「妹は、返してもらう……!」
それを理解したアマネは、ヘイズの剣を勢いよく弾き返す。副団長であるカトレアのことだ。何か打開策があるのだろう、時間を稼ぎ、耐える作戦に出る。
「ぐっ!?」
「はっ!」
剣を弾き返して相手の態勢が整わないうちに、ヨモギは駆け出し、真っすぐに剣を振り下ろす。

「ちっ……!」
「この熱さ……、村が焼けた時に比べたら、なんてことねぇべ!」
ヘイズも負けじと剣を押し返すが、普段から農業で鍛えられているヨモギの剣は重い。
(この女、どっからそんな力が!?)
「背中ががら空きですよぉ」
アマネとヨモギの時間稼ぎの間に後ろへ回ったカトレアは力を込めて、大剣を振りかぶり、ヘイズへと斬りかかる。

 「炎の剣なめんなよ! インフェルノ・ウェイヴ!!」
ヘイズが炎の剣に力を籠めると、それまでただの熱気だった剣に炎が宿り、それを横へと一閃させる。周辺の物を激しい炎で焼き尽くす。
「うわあああっ!!」
「お兄ちゃん! ヨモギお姉ちゃん! カトレアさんっ!!」
周りの建物に火が回りはじめ、攻撃をまともにくらった三人は地に伏していた。
「ハハハ!! やっぱ、お前ら大したことねぇなぁ! こいつはもらってくぜ」
「行かせる、かよ……っ!」
いずこかへ妹を連れ去ろうとするヘイズの足を掴み、アマネは抵抗する。
「そんなボロボロの体で何が出来んだよ。お前はここで死ぬ。そんで、こいつはオレらに売り飛ばされる運命だ。こんだけ綺麗な可愛い子なら、相当いい値がつくだろうなぁ!」
蹴り飛ばすように、アマネの掴んだ手を振りほどく。
「なっ……! 人を、そんな物みたいに……!?」
同じく倒れたヨモギは、ヘイズの口から飛び出した事実に愕然とする。
「男なら奴隷として死ぬまでこきつかってやるだけだ。だがな、女なら慰み物としての価値もある。 欲に飢えた男をイカせて気持ちよくしてやれんだからよぉ……。光栄なことだと思わねぇかァ?」
「ふざけないでちょうだい……。この子の未来を、なんだと思ってるの……?」
大剣にすがりつきながら、カトレアも息絶え絶えに反論する。
「そんなもん知ったこっちゃねぇよ。そこのでっかい剣の姉ちゃんも、いい値段で売れそうだなぁ。いやぁ、今日は収穫日和だな」
「……ざけんな」
「あ?」
アマネは、ヨロッとしながらも立ち上がりもう一度剣を構え直す。
「カスミは、俺のたった一人の妹だ! お前が勝手に価値を決めていいもんじゃねぇ……! 妹は絶対返してもらうぞ!」
「やれるもんなら、やってみろや!」
ヘイズは再び剣を構え斬りかかってくる。その時だった。

 (何だ、この感覚……)
周りの音が突然シャットアウトされる。目の前の男の動きも、急にスローモーションになる。ただ、自分の鼓動の音だけがやけにうるさく高鳴る。
それに、腹の底から何か熱い物が湧き上がってくる。炎の剣から放たれるような暴力的な熱さではなく、春の陽光に包まれるかのような優しい温かさ。力が、泉のようにこんこんと湧き上がってくる。頭の中に、鮮明な技のイメージや言霊が溢れてくる。
(今だ……!)

 「雨の極み……『天穹一閃』滝落とし!」
剣に水を纏わせて、一気に振りかぶる。
「ぐぁっ!?」
突然の豪雨に襲われたかのような激しい斬撃に、炎の剣では受け止めきれずヘイズは大きく吹っ飛ばされる。
「アマネちゃん……!」
「アマネ……! それって!」
「ああ、どうやら『極み』を発動したみたいだ……」
アマネにも突然湧き上がった力に戸惑いを隠しきれないが、今は授かった力を活かすべきと前を見据える。
「こンのガキぃっ!」
「来る……!」

 「あたしも……この街を、カスミちゃんを守る……! もう悲しむ人を出さないって、誓ったべ……!」
激しい攻撃を受けた後だと言うのに、どこからか力が湧いてくる。その力をうけて、ヨモギは力強く立ち上がり、大地をしっかり踏みしめる。
(何だべ、凄く温かい力……)
身体の底から湧き上がる力。これが現状を打開する力だと確信した瞬間、ヨモギの身体から波動が溢れ出す。
「行くべ……! 食の極み『椀飯振舞(おうばんぶるまい)』……泥濘(ぬかるみ)!!」
紛れもなく、それは極みの波動だった。剣を地面に勢い良く突き刺すと、ヘイズが立っている地面が田んぼのようにぬかるんで、足を搦めとる。
「なっ……くそっ!」
「今度こそ、決めるわ……!」
アマネやヨモギの快進撃に、負けじとカトレアももう一度大剣の柄を握り、ありったけの力を込めて振るう。
「二人の活躍を無駄には、しない……っ!」
「ぐはぁぁっ……!!」
ヘイズは地面に勢いよく倒れ伏した。その隙にアマネは捕らわれていたカスミをその手に抱きとめる。
「お兄ちゃん……!」
「怖い思いさせてごめんな。もう大丈夫だ」

 「くそ……。こいつがありゃ、勝てると思ったのによ!」
ゆらりとヘイズは立ち上がる。握られている炎の剣を忌々しげに見つめる。
「何の信念もなく、ただ自分の私欲だけで動く貴方では、この子達には勝てないわ……」
「このまま引き下がれるかよ! もう一度立て直して……」
ヘイズは、立て直しを図る為に踵を返す――。

 「そうはいかねぇよ!」
よく通る威勢の良い声。それは紛れもなく……。
「ウキグモ、さん……?」
「ったく、面倒くせぇことしやがって」
「せ、セト隊長!」
遺跡での爆発に巻き込まれたはずの二人が、今目の前に現れて、現実に起きているのかと何度も目を擦った。
「て、テメーら……! 死んだはずじゃ!?」
「あんなのでくたばる俺たちじゃねえよ。サルビア自警団なめんな」
「ヴァサラ軍が、あんな事で諦めるわけねぇだろ」


 時は少し遡る。入口は爆発の衝撃で塞がれ、部屋にも大量の爆弾が仕掛けられ、状況は万事休すと言った状況だ。
「おい、セトの坊主。波動の調整は出来んだろうな?」
その中でも、余裕の笑みを浮かべながらウキグモはかつての教え子に問う。
「いつまでガキ扱いしてやがる」
セトは、ウキグモの極みの波動を感じ取りながら、その大きさを調整していく。
「団長? 何するおつもりで?」
「とっておきの必殺技みたいなもんだ。お前ら、危ないから下がってな」
ウキグモも、セトの極みの波動を感じ取りながら大きさを調整する。与えられた時間は少ない。ゆえに、失敗も許されない。団長として、皆を無事に帰さなければならない。事件解決より何よりそれは優先すべき事態だ。

 (ここだ……!)
「雲の極み『流水行雲』」
「風の極み『旋空神風』」
互いの波動の大きさが、ぴったりと同じになり、『極みの共鳴』が起こる――。
「野分ノ風(のわきのかぜ)!!」
全てを飲み込む激しい突風が巻き起こり、遺跡の薄くなっている壁に風の塊を思い切りぶつける。すると、壁には文字通り風穴が空き、道が開かれた。
「やった……!」
「急げ、時間が無い!」
自警団員たちが喜ぶも束の間、カウントダウンが迫り、急いで脱出を図る。ウキグモも殿を務めて、密室となっていた王座の間から脱出する。
 同時に、カウント0になった爆弾が一斉に爆発し、遺跡を木っ端微塵にしていく。その爆風に反射的に身を伏せる。
「くっ……! あの中にいたら、確実に死んでたな……」
やがて、爆風が止み、ふぅと一息をつく。咄嗟の判断だったが、極みの共鳴を起こし、突破口を開くことが出来た。周りを見渡せば、突入したメンバーが全員揃っていた。
「まったくだ。……それにまだ終わったわけじゃねぇ」
「敵の本陣は街の方だ。加勢に急げ!」


 「……てなわけだ。お前らが戦ってる間に、部下は捕まえさせたし、あとはお前だけだ。大人しく投降しろ」
これまでの経緯を話し、抵抗は無駄であるとウキグモは諭す。自警団員は、誘拐団を取り押さえたり、街の消火活動、救護活動とひっきりなしに動いている。

「その通り。もはやお前は必要ない」
ヘイズの背後から、いつの間にかゆらりと現れた男が低い声音を響かせた。
「あ、貴方は……シュヴァルツ様……!?」
その馴染みのある声に、肩を震わせながら振り返る。
「幹部候補だからと、少し目をかけていたが……何だこのザマは」
「も、申し訳ありません、シュヴァルツ様ッ! で、ですが、この炎の剣を使えば、今度こそ奴らを……」
「くどい。『必要ない』と言ったのだ」
シュヴァルツと呼ばれた黒の男は、ヘイズから炎の剣を取り上げ、それをヘイズに向けて斬りかかる。
「ぐわぁぁぁッ!? シュヴァルツ様……お許しを」
「なんだべ、あの人……」
ピリピリとした、鋭い空気が肌を刺す。あの男が現れた時から、ずっとその空気に圧倒されてただ息を呑むことしか出来なかった。
「う、うわぁぁぁ……!! あ、熱い……! 身体が焼ける……!!」
斬りつけた箇所から炎が噴きあがり、ヘイズの身体を焼き尽くさんと激しく燃え上がる。
「ダメだ、消えない……! どうなってるんだ……」
近くのバケツに溜まっていた水を掛けるが、ただの炎というわけではないのか一向に消える気配は見せず、むしろ激しくなる一方だ。

「お前っ、何をした……!?」
「使えない駒を始末しに来たまで。小さな街の制圧もままならぬ駒など不要」
抑揚のない声色で、男は黒のマントを翻すと一瞬にして姿を消した。
「消えた……どうなってやがる」
突如として現れては、消えてしまった人物に呆気に取られている内に誘拐事件の主犯――ヘイズは灰となって消えてしまっていた。


 数日後。騒がせていた誘拐事件は主犯の焼死で決着し、サルビアの街は久方ぶりの平和を享受していた。

 ――自警団本部、執務室。
そこではウキグモが難しい顔をして書類を整理していた。誘拐事件の事ももちろんだが、それ以外にも考えなければいけないことが山積みだからだ。
「お茶どうぞ。あまり難しい顔しているとシワが深くなっちゃいますよぉ」
カトレアはのほほんとした笑みを浮かべながら、お茶を机に置く。
「余計なお世話だよ……。俺ぁ、この事件まだ終わってねぇと思うんだ」
「そうなんですかぁ? 確かに犯人はあんなことになっちゃいましたけど……」
「だからこそだ。あの得体の知れない炎の剣の出処も分からねぇし、あの途中で現れた黒づくめの男……。あいつが裏で手を引いてるに違いない」
ウキグモは救出作戦の際に被害者の女性から貰った紙切れを見る。それには『搬出書』と記載されている。あの主犯の言葉をそのまま信じるならば、誘拐した女性達は奴隷か慰み物として売り飛ばされてしまうところだったのだろう。

 「黒づくめの……男……」
「カトレア?」
突然、カトレアの顔がふっと曇り始めた。いつも穏やかで悩みなんか無さそうな彼女が、珍しく神妙な面持ちで何か考えている。
「いえ……あの炎の剣、どこかで見覚えがある気がして」
ウキグモはかつて、カトレアを記憶喪失の状態で保護したことがある。本人は特に記憶喪失である事をあまり気にしていないどころか、『いつか思い出す』と気楽に構えていた。ウキグモも、手がかりがない以上は無理に思い出す必要も無いだろうと本人の意思を尊重していたが……。
(まさか、失った記憶とやらに関係あるのか? 黒づくめの男や炎の剣と何の関係が……?)

 コン、コン。とドアを叩く音が、ウキグモの思考を止めた。
「団長。ヴァサラ軍総督、ヴァサラ様がお越しです」
「えっ?! ヴァサラ総督が!? 通してくれ」

 「随分と難しい顔をしておるのぉ、ウキグモよ」
ドアが開くと、懐かしさを感じるものの、威勢を感じさせる声が執務室を満たした。
「ヴァサラ総督……何故、こちらに?」
「此度、この街を襲った事件の件でな」
「何か分かったのですか?」

「うむ……。思ったより大きな事件のようじゃ。――闇剣商会。近年、勢力を伸ばしている組織じゃ。表向きは貿易で財を成しているように見えるが、裏向きは人身売買したり、薬を密売したり……悪どい組織じゃ」
「そこまで調べがついてるとは……」
感心するウキグモに、ヴァサラは首を振った。
「まだこれはほんの一部じゃ。シュヴァルツとやらのボスの下に、今回の炎の剣のような、不思議な剣を使う幹部が控えておっての。そいつらを中心に悪さをしているようじゃ。今回は、その幹部候補が起こした事件らしい」
「不思議な剣……」
カトレアも何か引っかかっているのか、やはり冴えない顔で敵対組織の話を聞いていた。
「この組織を野放しにするわけにも行かんでな。そこでじゃ、ウキグモよ。お前の力を貸してはもらえぬか? 組織の壊滅に協力してほしいのじゃ」
もちろん、街のサポートも充分にさせるとヴァサラは意志の強さが宿った瞳でウキグモを見据える。
「そんなのこっちからお願いしたいくらいだ。この事件は、まだ終わっちゃいないと考えてるし、この手で組織を壊滅する事がこの街の平和にも繋がるからな。……どうか、よろしくお願いします」
お辞儀をしてから、ヴァサラの方を向く。彼は大きく頷くとニカッと笑った。
「決まりじゃな。頼んだぞ」
言葉は少なくとも、こちらを信用している物言いに心做しか心強さを感じた。
(闇剣商会……見てろ、この街を陥れようとしたこと後悔させてやる)

 「それともう一つ報告じゃ。入ってきてよいぞ」
ヴァサラは執務室のドアの方を向いて、声を掛けた。
遠慮がちにドアが開くと、そこにはアマネがいた。
「ウキグモさん……俺、ヴァサラ軍に入ることにしたよ」
「アマネ……」
アマネは、自警団に入るかヴァサラ軍に入るか迷っていた。その事は知っていた。ただ、どちらの道に進もうとも、亡きソラトの子を預かる者として、父親のような存在として、背中を押してやろうと決めていた。
「外にはあんな奴らがいて……、そのせいでカスミが怖い思いをした。だけど、世界にはもっと困ってる人がいるんだろうなって考えたら、この街にいたままじゃ出来ないことが多いって思って」
「……そうか。それがお前自身で決めた答えなら、俺から言うことは何もねぇ。カスミの事はちゃんと面倒見てやるから安心しな」
「ありがとう。あいつの傍を離れるのは寂しいけどな……」
胸を撫で下ろすアマネだったが、一抹の寂しさを顔に浮かべる。
「あいつはお前が思ってるよりもしっかりとしてるぞ。料理の味付けも辛くないし」
「え、そこなのか……?」
「はは、冗談だ。一個ずつ家事を覚えていってるし、お前が思ってるより自分でやれることも増えてきてるよ。ま、たまには様子見に来てやってくれ」
軽めのジョークを飛ばしながら、ウキグモなりにエールを送る。
「ありがとう。……それじゃ、準備もあるからこれで」
最後には、どこか清々しい笑みを浮かべながら出立の準備の為にアマネは執務室を去る。

 「ふむ、いつの間にやらウキグモも父親面をするようになったもんじゃのう」
二人のやり取りを黙って聞いていたヴァサラが目を細めながら頷く。
「ちょ、からかわないでくださいよ。あいつは親友の子どもってだけで、本当の父親ってわけじゃ」
「からかってなどおらぬ。血の繋がりが無くとも、お前とアマネとの絆は本物だと儂は思うぞ」
「そうですよぉ、本当、アマネちゃん立派に育ったと思います。それは他でもない、団長のおかげだと思います」
横からいつものような朗らかな笑顔を見せながらカトレアも育てぶりを讃えている。
「やめてくれ、照れくさくなるから。……ま、でもありがとう。総督に、カトレア」


 その頃。闇剣商会の本部会議室。
四人の幹部達が、先のサルビアの街の事件について口々に喋っていた。

「フン、あのいきがっていた幹部候補とやらは死んだのか。やはり、炎の剣を扱えるのは俺だけだな」
「そうらしい。全く、あんな雑魚、シュヴァルツ様のお手を煩わせる程でもなかったのに」
「いいじゃない、ライバルは蹴落としてナンボでしょう?」
「……シュヴァルツ様、来る」

 コツコツと乾いた音を響かせ、黒のマントをなびかせながら黒づくめの男――シュヴァルツが会議室の議長席に腰掛ける。
「フン、あんな雑魚は端から駒よ。だが、駒にすらなれなかった。捕らえた人間共は街の自警団に保護され、こちらには何の利益ももたらすことはなかったのだからな」
「おっしゃる通りです、シュヴァルツ様」
炎の剣を携えた一人の幹部が、恭しく礼をし、同意を示す。
「そして、ヴァサラ軍……『正義の味方』面をした彼奴らは、我々を目の敵にして潰しに来るはずだ。……お前達、奴らは必ず潰せ。何人たりとも我々の邪魔はさせない。闇剣商会の繁栄の為、お前達『四天剣聖』がいるのだから」
「御意」
四人の幹部――『四天剣聖』は皆、一様に跪いた。

 ヴァサラ軍と闇の組織、闇剣商会。光と闇、両雄の激突は秒読み段階に入っていた……。

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