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ポジ漫画紹介 第2回 「あずまんが大王」 〜あ!楽しい〜

何年前のことであろうか。いつも行っているスキー場に訳あって行けず、別の所へ滑りに行った時の話である。泊ったホテルはエントランスでくつろげるような造りになっており、本棚には漫画がいくつか置いてあった。
外の雪で青白くなった空間の中、最下段に置いてあった「あずまんが大王」の黒字タイトルがやけに目立っていた。4冊を手に取り、自分の部屋へと持ち帰る。それまで漫画なんかドラえもんしか読んでいなかった自分は衝撃を受けた。こんなに面白い漫画があるのかと。
3時間をかけて読み終わり、その日は床に就いた。翌日はまた少し滑り、帰路に就く。道中、頭の中ではあずまんが大王でいっぱいだった。しかし疲れもあってか、帰宅から3日経つころにはすっかり忘れていた。

それから3年後、西村京太郎の本でも立ち読みしようと思いフラリとブックオフに入った。いつもは気にしない漫画棚が気になった。
作者が50音順に並んでいる。頭から目を通そうと上を見やる。するとどうだろう。あの時と同じく「あずまんが大王」のタイトルが目に飛び込んできた。
「……あ」
思わず声に出た。


書籍情報

タイトル:あずまんが大王
作者:あずまきよひこ
出版社:メディアワークス
    小学館(新装版)
連載誌:電撃大王
    ゲッサン(補習編)
連載年:1999年~2002年
    2009年(補習編)
巻数:4巻完結
   3巻完結(新装版)

あらすじ

そこはとある高校。新学期、しかも1年生時に美浜ちよという転入生が。なんとその子は10歳の天才少女で……?そしてその次に転校してきたのはマイペースでおっとりとした大阪人、春日歩。2人のほか滝野智、水原暦、榊さん(2年時から神楽も)を中心になんてことのない日常を描く元祖空気系4コマ漫画。

解説・紹介

この漫画は前述の通り空気系≒日常系の走りだと言われている。
何かが起きそうで、何も起きない。何かは起こるけど、どうにもならない。そんな海でいえば凪の状態がデフォルトだ。
しかし漫画界に与えた影響は絶大で、後のきらら系の栄華はここから始まったと言っても過言ではない。
かわいい女の子たちが毒にも薬にもならないことをしている。話しているだけでウケる。この図式を確立させたのだ。

とはいえ本当にずっと何も起きないわけではない。開幕から10歳の天才少女が転入してくるし、イリオモテヤマネコが気に入った人間を捜しに西表島から東京(漫画では明言されていないがアニメではそう設定されている)に渡って来、なんなら飼ってしまっている。
これは少し前の漫画群……うる星やつらやドラえもん……の影響があると思われる。現実世界(リアル)と変わらない、近しい世界でありながら、明らかな特異点が存在する。
後発漫画と比較すると、「日常」ほど非日常ではないが「らき☆すた」よりは非日常。そのうよな立ち位置にある言えよう。



この作品の一番の特徴は「リアルと同じ時間が物語が進んでいく」ことだろう。入学から卒業まで、キッカリ3年をかけて描き切る。サザエさん時空にも突入せず、大学生編などもやらずにスッパリと終えた。
高校生という限りある時間を漫画空間で再現し、読者に疑似的な青春を味あわせてくれる。
そして最終回、読み続けた読者にとって登場人物は自分のクラスメイトであり生徒となる。卒業式は登場人物にとってだけでなく、読者へのものでもあるのだ。それまで現実であった漫画は、終わるとともに「アルバム」となる。
皆さんも青春を、高校時代をもう一度体験してみてはいかがだろうか。

余談

某日、オモコロチャンネルであずまんが大王ダービーという企画が行われた。これはあずまんが大王を初見の3人に読んでもらい、誰がどのキャラを好きになるかを3番まで予想する。というものだ。
そこでだ、自分も好きなキャラについて語ってみたくなったので以下に書き連ねる。

1番好きなのは大阪さん(春日歩)だ。

画面右が大阪さん

オモコロ内でも1番人気である他、海外でもかなり人気がある。
自分はそもそも天然、アホの子、不思議ちゃんなキャラを好きになる傾向があるのだが、大阪さんは天然でアホの子に該当する。
大阪人なのに天然でマイペース。運動やテストの成績はあまりよろしくはなく、智、神楽とひっくるめて「ボンクラーズ」と称されることもあるが、なぞなぞが得意など地頭はよいと思われる。

なぜここまで大阪さんには人を惹きつけるのだろうか。
彼女にはのほほんとした性格があり、察しの良さがあり、自分のやりたいことをやりたいと言える素直さがあり、それを実行する胆力がある。自分はこれを「母性」と捉えた。
また、彼女にはいたずら心があり、誰も思いつかないような柔軟な発想力があり、無邪気さがある。自分はこれを「子ども心」と捉えた。

そう、大阪さんは大人としての、そして子どもとしての魅力が両方備わっている。それを節々で自分は……いや、我々は無自覚のうちに感じ取り、自分たちの子ども心と親心の両方を揺さぶらせる。

これが大阪さんが世界中を魅了し続ける理由ではないだろうか。

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