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問題が起きることを前提とした組織づくり

少し前、こんな記事が話題になってました。すごく共感できる記事です。

タイトルにある「全員泳げる理由」云々よりも、「人は失敗をする生き物である」という前提の社会制度設計というところがこの記事の主題ですね。

つまり「人は失敗する生き物である」ということを前提として、社会制度を設計する発想は、何も水泳に限った話ではありません。オランダでは、基本的に「人は失敗する生き物である」という前提で全ての社会設計がなされている気がします。
だから、オランダは「チャレンジしやすい社会制度」「チャレンジしやすい心理的状況」を作っていると言っても良いかもしれません。スポーツにおいては、このマインドセットは非常に大事です。失敗するかもしれない「チャレンジ」の先にこそ、勝利や大記録があるからです。

この基本的な考え方は、企業などの組織運営においてもすごく重要だと感じています。

組織を問題が起きないように、失敗しないように、失敗しないことが前提として運営するのか、問題が起きるのは当たり前、失敗も付きもの、という前提で運営するのかでは、組織の在り方は大きく変わるなぁと。

少し前に、ゼミ生との活動のみならず、色々な刺激を頂いている近畿大学の山縣先生から、この本のことを教えてもらいました。最近やっと読めたのですが、もっと早く読んどけばよかったと少し後悔しました。

この本にも、組織運営やコミュニティの在り方に関してのヒントが満載です。自身もぼんやりと考えつつも、なかなか煮え切らずにあったことがかなりクリアになりました。

この本の中で、「自殺希少地域」の一つとして取り上げらている海部町では、まさにこのオランダの例のように失敗や問題が起きることを当たり前のものとして共有認識を持っていると分析されていました。

「人生は何かあるもんだ」と、問題が起こることを前提としそれを解決するための組織がある。問題が起こっても失敗しても、それは人生として当たり前だという共通認識があるとし、問題が起こったらみんなで解決しようという意識がある 

組織の健全さと、自殺希少地域を結びつけるのも違うかもしれないですが、何かヒントはあるように思うんですね。

問題発生や失敗を許容できない組織は?

失敗や問題発生を前提としてない組織では、それらはネガティブなものとして捉えられるでしょう。失敗や問題がネガティブなものとして扱われてしまう組織では、失敗しないこと、問題を起こさないことに神経がつかわれるので、どうしても今やってること、慣れたことを続けたいという慣性が強く働きます。新しいことに取り組みにくい、チャレンジしにくい、そういう環境です。

そもそも新しいことって、だいたい何か問題が起きます。失敗する確率のほうが高いと思うんです。それでも志もって取り組んでやろうという気概がある人でないとなかなか出来るものでもありません。

チャレンジマインドを持った人は、組織にはある一定人数は必要だと思うんですね。全員がそうである必要はないですが、そういう人がいて、そういう人をきちんと周囲が認められるってことが必要だと感じます。

失敗しない、問題が起きないことを前提とした組織や文化は、こういったチャレンジマインドを持った人にとっては、すごく働きづらい環境かもしれません。

これは、そこにいる人たちのマインドとか文化と密接に絡むことで、簡単にどこの組織や地域でも導入できるものではないかとは思うのですが、でも、できれば、こういう寛容性というか、失敗や問題が起きるのが当たり前なんだという認識は、そこに集うメンバーのなるべく多くが共有していると、それだけでも、随分と違いはあるのかなと思うのです。

問題が起きないためのルール/問題が起きる前提のルール**

問題が起きること、失敗することを前提とした組織という考えをツイートしたら、こんなリツートを頂きました。

あー、なるほど、そうか。問題が起きないように、失敗がないようにとすればするほどルールが増えていく。そしてルールが足枷になって機動力が損なわれていく。確かに、それはあると思います。

世の中の組織では、様々なルールがあると思いますが、その中に、問題が起きないためのルール、というのはかなりあります。

もちろん、生死に関係することや危険が隣り合わせのもの、重大事件や問題につながるようなもの、そういったことは、いかに問題を起きなくするか、失敗しなくするかに主眼が置かれるべきです。それは当たり前です。そのためのルール作りや整備は必要でしょう。

しかし、そうじゃない領域のことも、そういったものと同じレベルで、問題や失敗が起きないようにルールを設定すると、それによって別の様々な問題を引き起こしてしまいます。

似たような話では、こんなことを書いたことがあります。

この場合の問題とは、前日に洗車した車を、翌日にまた別の人が洗車する、というい無駄の発生です。でも、じゃぁ、この問題を起こさないように、色んなルールや決まり事を作った場合、その問題は防げるようになるかもしれないですが、自主的に自分の車を掃除するというマインドは損なわれてしまうかもしれません。

であれば、僕は、そこにルールは設けたくない。ルールを設けたくないというより、自分たちでルールは決めたらいいと思ってるんです。会社が決めることでもないなぁと。 そこも自分たちで工夫して考えてやればいいんじゃないかと思ってるわけです。

でも、こういう細かいことって、会社にはけっこうあって、そういうの1つ1つに目くじらたてて、こんなことは許されない、二度と起きないようにしなければならない、と徹底した対策を講じようとする人も中にはいますよね。

そうやって重箱の隅をつついて、問題の芽をつぶしていけばいくほどに、組織は窮屈になり、そこで働く人たちの意識には、失敗してはいけない、問題を起こしてはいけない、というマインドが醸成されていってしまうのではないでしょうか。

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