ラジオドラマプロジェクトができるまで(2018.7.10)
ラジオドラマプロジェクトの成り立ちや
大切にしたいことなど書いてみました。
てにておシアター ラジオドラマプロジェクトは、
「若者支援とは何か」という話し合いの中から
生まれたプロジェクトです。
敎育・福祉・放送・行政など
市民ラジオを通じて集まった
さまざまな経験とスキルを持った各界の有志が
ざっくばらんに「若者支援」について
語り合うことからはじめました。
その対話の場は広がり、
医療や発達障害当事者など
参加メンバーが入れ替わりながら
議論を進めてきました。
別々の業界、そして同じ敎育でも
大学・高校・特別支援など
さまざまなフィールドで活動する
メンバーの意見交換は刺激的であり、
それは視点の違いだけでなく
「課題は同じなんだ」という
新鮮な発見も数多くありました。
まずは「若者支援」というものに対する
それぞれの定義を披露し合い、
徐々によそゆきの会合から
真剣な対話へと発展していきました。
その中で大きかったのは、
若者が、いや全世代が
「自己肯定感が低く苦しんでいる」
ということです。
しがらみだらけの中、
平気な顔して何とか乗り越えていく。
でもストレスは溜まっていって・・・。
いつも評価にさらされ顔色をうかがいながら・・・。
「人生とはそんなもん」果たしてそうでしょうか。
そりゃ自己肯定感なんて得られにくいですよね。
いままでのやり方でマズイ部分はないのでしょうか。
例えば問題解決や合意形成を目的とするとき
「コンセンサス」が求められる。
仕事の場に限らず社会ではよくあることです。
アクティブラーニングがもてはやされ始めた
学校現場でも同様です。
しかし、そのコンセンサスは
本当に意見の一致をみたのでしょうか。
妥協ではないでしょうか。
会議の後「ホントはさ・・・」なんて
愚痴を言ったり聞いたりしたことはないでしょうか。
実際のところ見せかけの合意ばかりで
本当に意見が一致することは稀ではないかと思います。
後から「そういう意味ではない」
「そんなつもりではなかった」
なんてモメるなら会議は無意味になります。
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説得したりねじ伏せたりしたもの、
「反対が出ない=合意している」
という状態に問題はないでしょうか。
反対しないからと言って
決して同意しているわけではなく、
まして納得しているはずもなく、
反論や反証の機会を持たない・持てないだけで
同意・賛成したことになってしまうという状態は、
不健全な状態であると言えます。
そんな状況を打破するためには、
「問題」は「解決」しなければならないものではなく
「解消」することもできるのではないか。
「合意=意見の完全なる一致」ではなく、
それらの意見のそもそもの根本にあるもの、
本質的な考え方、
そうした意見や考えが生まれる環境や
「世界観」などの、共通認識を
合意の対象としてみるのが有効なのではないか。
表層的な意見は異なっていたとしても、
大本の根っ子には共有できるものが
きっとあるはずです。
そのような合意のことを
「アコモデーション」と言います。
アコモデーションの本来の言葉は
宿泊や同居といった意味合いなので、
異なった価値観を持っているもの同士が
一緒に寝起きし、住んでいる状態を
イメージしてみてください。
またアコモデーションには「列車の個室」、
という意味もあります。
欧米の映画などで見られる列車には、
よく個室が出てきます。
見知らぬ乗客同士が同じ部屋に入って、
向かい合って座っている様子が思い浮かぶと思います。
「異なった価値観を持つ人が
同じ目標(目的地)に向かって進んでいく」
と言う状況がよくイメージできるのではないでしょうか。
つまり合意形成として目指す場所を、
コンセンサスではなく
アコモデーションとして考えてみよう、
ということなのです。
意見の完全な一致ではなくて、
その場にいる人たちが
みんなで持っている共有の価値観を見つけ出し、
最終的な問題解決や最適解を求めるのではなく、
たとえ一歩ずつであったとしても
少しずつ状況を改善していこう、
そこから出発しよう、という考え方です。
『対立関係はそのまま存在するとしても、
その対立を、異なる見解を持つ人々が
「ともに事にあたろう」とする上体の一部として
取り込んでしまうこと』
これがアコモデーションの考え方です。
(以上、「問題は解決ではなく、解消せよ」より抜粋)
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わたしたちはまずはこのアコモデーションを
自分たちのプロジェクト運営に取り入れました。
畑違いの者同士が非営利で集まったんですから、
それが必要なのは当然です。
妥協ではなく、
声の強いものに従うのでもなく、
違いを認め合いながら共有しているものを鎹に
それぞれの強みを活かしながら共にに事にあたる。
これがわたしたちプロジェクトの基本方針です。
この考え方って、
まだ日本社会に浸透していない気がします。
学校や職場にアコモデーションが広まったら、
もう少し息苦しさも和らぐのではないでしょうか。
演劇という切り口で自己肯定感を高め、
対話により世界観を育てながら
自己や他者を受容しアコモデーションを身につける。
これが今回のプロジェクトのテーマのひとつでもあります。
世界観についてはまた次回書きますね。