投資銀行地獄物語
私はバンカーとして日本に貢献します。そして、この会社にYude(※Yudeはライターネーム)ありと言われるくらい存在感のあるバンカーになります。
これは私が投資銀行の最終面接の時に熱を込めて放った一言である。対する面接官は表情一つ変えずに頷くだけしてその日は面接が終了した。正直100%落ちたと思ったし、かなり落ち込んだのを良く覚えている。別にインターンの成績も普通だったし、投資銀行の仕事に向いてないんだなと涙目になっていた。今タイムマシーンがあるならその時に戻って日系大手メーカーを受けてそっちに行けと当時の自分に言い聞かせていると思う。
投資銀行の面接は日本の大手企業の面接フローとは少し異なる。普通の会社は三次面接くらいまであり、その次の最終面接で役員や社長が面接官として現れるフローである。だが、世に言う投資銀行部門の合格フローは短期のインターンでいい成績を残す(社員から好かれる)かボスキャリ経由の英語人材のどちらかである。あとは転職組で海外MBA取得組、五大商社や大手メーカー財務部等のエリートが点々と入ってくる程度である。それも途中でやめた人たちの席を埋める形である、、、
私はインターンに参加していた。インターンでは会社によって異なるが様々な部門で経験させてくれるのが一般的。私は日系、外資合わせて2社のインターンに参加した。投資銀行のオフィスは丸の内、大手町、六本木に集中しており、東京のダイナミズムを感じる場所に構えている。初めて投資銀行のオフィス入った時はこんな会社にインターンできている自分に酔った。それくらい華やかだった。(大手企業の顧客にもすごいオフィスですねと言われるくらいなので学生からみるとそりゃ華やかだろう)オフィスでは外国人が当たり前のように仕事をしており、英語が飛び交い、廊下には絵画などの骨董人がひしめきあい、あらゆるところでCNN、BCC等海外のニュースが流れている。ここで仕事ができれば自他共に認めるグローバルエリートになれる、そう確信した。
投資銀行にも様々な部門がある。基本外資系証券だと投資銀行部門と市場部門(証券部門)がある。大手の日系証券だとそれに加えてリテール部門がある。そして日本で言う証券会社ではリテール部門が何かとフォーカスされている。(どこかでリテール営業という素晴らしいビジネスモデルを語ることができればと思う。)
インターンで様々な部門をなめるように経験した私は特に投資銀行業務に興味を持った。憧れもあると思う。市場部門はマーケットと業務自体が大きく連動しており、ドラスティックである一方雰囲気が体育会でどこの部署に行っても数値でのパフォーマンスが評価としてついてくる。要は外部との接点が多いため、マーケットと連動しているために優秀かそれ以外の差がわかりやすい。実際仲の良いマーケット部門の人間と話しをすると、トイレに行く時間もないのでオムツして仕事している強者もいた。そういう奴が完全にフィットしている仕事だと思う。彼は十万以上するゼニア(高級メーカー)のスーツを着ているにも関わらず、オムツしてるのは大変滑稽だか、彼は例外ではない(笑)。外面はエリート、高収入、憧れを抱かれる仕事だが、実際内面は命を削って仕事をしている投資銀行と大いに被るとこがある。
話を戻すと、そうして私は熱烈に投資銀行業務を志望する形で就活を迎えた。インターンでは、社員の方は死ぬほど忙しい中大変お世話になった。その中でも投資銀行業務の証券化業務を担当している4年目社員の石川(仮名)さんに大変お世話になった。実際の面接でも私の評価を大きく釣り上げてくれて、上司にも私の採用を打診してくれていた。上司へ採用の打診ができるくらい石川さんは地頭もよく、イケメン、コミュニケーション力もあり、まさに優秀オブ優秀だった。石川さんは早稲田の政治経済学部を卒業されているが、東大、京大、数多いる海外大学出身の同期の中でも飛び抜けて優秀だった。その影響で私も就活の面接官をしているが、早稲田の就活生に対してポジティブな目で審査している。
そんな社員の方々のご尽力もあり、落ちたと思った投資銀行に晴れた内定をもらった。あまり感触が良くなかった最終面接の日の夜、石川さんから携帯に連絡があり、内定を言い渡された。「おい、Yude、よくやった。ヘッドの許可ももらってお前を取ることにした。今日から仲間だ、おめでとう。とりあえず大学は卒業しろよ。で卒業までは英語力上げるためにも海外にでも行ってこい。あと、証券アナリストはもう取っとけ。今からやると一次は取り終わるから。飯行こう。」電話でこんな感じで言われたと記憶している。内定を承諾する前提で話が進んでいっているな〜と当時なんとなく思っていたがもちろん投資銀行で仕事がしたいという気持ちと石川さんになりたい気持ちが強く、そのまま投資銀行の門をくぐったのである。そしてそこそこなサラリーと引き換えに地獄行脚の旅が始まる。