2018 年間ベストアルバム10

はい、毎年恒例のやつです。とはいってもちゃんと10枚選んだのは去年が最初でしたが...。総論的なものは最後に書いたので、早速いきましょう。1~3位以外はほぼ順不同です。

10 集団行動『十分未来』

もと相対性理論の真部脩一と西浦謙助が組んで、ボーカルを迎えた新バンドの2作目。ボーカルの齋藤里菜はオーディションで決まったそうだが、空気を含んだ伸びやかな声が曲のメロディーの良さと相まって、聴いていて気持ちがいい。優等生的なしっかり音譜を追う歌い方もよくて、1曲目「会って話そう」の細かい譜割の歌メロは癖になる。

9 Mogwai『Kin(Original Motion Picture Soundtrack)』

今年公開された映画『Kin』のサントラ(映画は観てません......)。と言ってもまるまるMogwaiが手掛けているので、Mogwaiの新作と言ってもいいだろうということで挙げました。サントラと侮るなかれ、これがなかなかいいアルバムで、バンドの持ち味がいかんなく発揮された良作なのです。彼らが奏でるピアノはなぜこんなに説得力があるのか。

8 People in the Box『Kodomo Rengou』

スリーピースバンドの6作目。もう15年のキャリアになるのか......。熱心なファンというわけではないが、金沢でART-SCHOOLとの対バンを観たことがきっかけで『Citizen Soul』あたりから聴くようになったバンド。歌詞の内容からか、初期の変拍子多用からか、何となく難解という印象を持っている人も多そうだが、意外とカタルシスのある曲構成やメロディーがあり、くせになるのです(事実、ライブで聴いた「沈黙」という曲の「凍結させてしまおう」と繰り返すフレーズが印象に残り聴き始めた)。今作では3曲目「町A」がそのいい例だろうか、「中古車センター」と歌うメロディーはつい声に出したくなる気持ちよさ。バラエティに富んだ曲たちで収集つかないほどとっ散らかした挙句、11曲目「かみさま」に収斂する構成は見事。

7 Bill Ryder-Jones『Yawn』

The Coralのギタリストのソロ。今作で初めてこの人の作品に触れたのだけれど、いいですね。レイドバックしたリズムにノイジーなギターがのり、声はぼそぼそと、歌うというよりほとんどつぶやくような。アルバムのうち何曲かはチェロがいい味出している。そういえばチェロが印象的なロックの曲って結構思いつくかも(NirvanaのAll ApologiesとかOasisのWonderwallとか)。

6 Snail Mail『Lush』

一聴して感じるのは「若い」ということだ。Snail Mail(=カタツムリ郵便?)ことLindsey Jordanが99年生まれの若干19歳と知らずしても、音の端々から伝わる「若さ」。ここでいう「若さ」は、「はつらつとした」「みずみずしい」という意味ではない。若さゆえに抱える痛み。具体的に何が理由とも分からず感じる喪失。そういう感情をありありと感じる。20歳前後で出会っていたらもっとドはまりしていただろう。

5 Albert Hammond Jr.『Francis Trouble』

The StrokesのギタリストAlbert Hammond Jr.によるソロ4作目。1,2作目は未聴で3作目はあまりハマれずだったのが今回はしっくりきた。なによりまず曲がキャッチ―で、2曲目「Far Away Truths」などはストロークスで演奏していても全然おかしくない。あとこの人の弾くリズムギターってほんといいよなぁ。

4 ベランダ『Anywhere You Like』

京都の大学で結成された4人組ロックバンドの2作目。良いメロディの曲を、素直なアレンジで、バンド演奏する。展開がちょっと特殊な曲が多い以外は、至極まっとうな音楽。すっきり洗練された印象で、繰り返し聴ける。声のさわやかさが嫌味なく、絶妙に鼻につかない感じで好み。

3 uri gagarn『For』

group_inouのMC担当、cpこと威文橋率いるスリーピースバンドの4作目。削ぎ落された無骨な演奏とあってないような歌メロの隙間から零れ落ちる寂寞感。ドラムとベースがぐっと下支えする中、不協和音を奏でるギターのヒリヒリとした緊張感が最高。

2 Yo La Tengo『There's a Riot Going On』

もう何作目かも分からない、USインディの重鎮Yo La Tengoの新作。「滋味深い」という表現がこれ以上似合う作品を他に知らない。ドローン~アンビエントな作風に寄った今作は、いつも以上に分かりやすい起伏がなくなり、まるでだし汁のような味わい。

1 アナログフィッシュ『Still Life』

Youtubeでも公開されているwowowぷらすとで、アーティストに「私を構成する9枚のアルバム」を語っていただくというコーナーがあって(現在は「ぷらすと×Paravi」で公開)、毎回楽しみに視聴しているのだが、SHE IS SUMMERのMICOさんが口頭で紹介していたのがこのアルバム(その時は、「最近聴いているアルバム」という名目でした)。名前は聞いたことがあったものの曲は全く聴いたことのないバンドだったので、アルバム聴いてあまりの良さにびっくりした。曲も良ければアレンジも良し、ミックスもカッコ良いと言うことなしの名作。バンドではあるものの、このアルバムはソウルやR&Bのフィーリングが強く、ボトム低めの音像がHiatus Kaiyoteあたりを好きな人にもお勧めできる耳なじみの良さ。歌詞はほとんどすれ違いのことを歌っているが、絶望的な感傷というよりは、やるせなさを抱えたまま生活を続ける哀愁という感じ。プロデューサーは吉田仁さん(大好きなthe pillowsを一時期プロデュースしていた方)で、流石いい仕事しなさる...と。笑


2018年 個人的な総論

今年はSpotifyで音楽を聴き始めたことと、近くにCDショップや品揃えのいいレンタルショップがない環境に引っ越したことがセレクトにも影響している気がします。通勤という概念がなくなったので、黄昏時にリラックスできる音楽を聴きながら帰路につくということもなく、ほとんど家で聴いていました(Rhyeとかi am robot and proudの新作が入っていないのとかはこれに起因しそう)。去年もしっかり10枚選んだので見比べてみたのですが、選ぶ基準、みたいなものはあんまり変わってないなと思います。どこにピンとくるか、観点みたいなものというのか。そう思って改めて自分の年間ベストをみてみると、その基準を複数充たす作品が上位に来ていますね、当たり前か。笑

2018年に発表された作品以外でよく聴いたものは、泉まくら『5 years』かなぁ。ベスト盤ですが。3月あたり、引越し+転職という環境の変化で揺れる精神状態に、ぼんやりとした切なさの滲むフィーリングがばちっとあって、よく聴きました。
あとは山本精一。もともとROVOは聴いていたもののソロや関連作は未チェックだったのですが、図書館で借りた『ラプソディア』が良かったことと、「HOMEMADE MUSIC 宅録~D.I.Y.ミュージック・ディスクガイド」に掲載されていた対談とディスク評が素敵だったので、いま関連作をかき集めています。

さて、ここまで読んでいただいてありがとうございました。来年も素敵な作品と出会えますように。

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