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震災の記憶
第7章 妻の死 【後編】
病院に到着した。
未だ、妻の意識は戻っていない。
身体中にたくさんの管が通り
心電図の音が鳴り響いていた。
私は妻が目を覚ましてくれることを
ただ祈るしかなかった。
妻と過ごした日々を思い出しては
わがままに生きてきた自分を悔いた。
妻は、明るくおおらかな人だった。
私のことを理解し、信じ、愛し、
ずっと私の傍で支えてくれていた。
神経質な私の性格にも全て合わせてくれた。
私と息子の為に大きな愛で尽くしてくれた。
私が唯一、頭が上がらない存在である。
「ごめんな」と「ありがとう」
を妻に伝えながら
ずっと妻の傍から離れず祈り続けていた。
そんな願いも叶わず
妻はとうとう息を引き取った。
3度目のくも膜下出血だった。
鼓動をやめた心臓の示す心電図の音が
頭から離れない。
悲しかった。信じたくなかった。
数日前の診断では 肩こりだったよな。
なぜ妻が死ななきゃいけない!!!
なぜだ!!!
妻の命をなんだと思っている!!
事実を受け止められず
肩こりと診断した医師に食ってかかった。
それでも、妻が生き返ることは
もうない。
私と息子に、声をかけてくれることも
笑顔を見せてくれることももうない。
受け止めるしかないのだ。
そんなこと出来るはずが無いだろう。
今まで味わったことの無い
深く底が見えない悲しみを抱えながら
自宅に帰った。