箱根駅伝:失敗が興味深い

箱根駅伝が好きでほぼ毎年見ているのだが、今回印象に残ったのは中央大学のピーキーさである。前々回2位になり前回は優勝を期待されたものの感染症の影響で13位、その後もトラックレースのタイムは出るが箱根駅伝予選会や全日本大学駅伝では下位に沈む、といった調子で下馬評は高くなく、優勝候補に数える識者も見当たらなかった。それが蓋を開けてみれば1区と3区で区間賞を取って箱根山中まで首位を突っ走っていった。そもそも1区で飛び出しに成功したわけだが、それも、他チームの中大自体への下馬評の低さゆえだろう。加えて、1区の吉居選手が、全日本大学駅伝では不振を極めていたので、いずれ落ちてくるという読みも他校の選手にはあったかもしれない。中大には良くも悪くも読めないところがあり、吉居君はその象徴のような選手である。

また印象に残った選手を1人挙げるとすれば早大の2区の山口智規選手である。2区は終盤が上り坂なので体力を残しておくのがセオリーらしいが、山口選手はあえて序盤から飛ばしていき、その結果終盤にかけて失速してしまった。しかしその後の記事によると、上りが苦手なので前半に貯金を作りたかったとのことで、彼なりの考えに基づくものであったことがわかった。
このように自分なりの考えを実地で確かめようとする姿勢は大変共感できる。しかも箱根駅伝という大舞台で実験してみたのが賞賛に値する。山口選手は昨年も2区を走っているし、箱根2区と同様出入りの激しい全日本2区では前半落ち着いて入って最終的にごぼう抜きを見せているから、セオリー通り走ろうと思えば走れたはずだ。それでも自らの戦略を打ち立てようとしたところに向上心を感じて清々しい気分になった。

中大(吉居選手)と山口選手に共通しているのは失敗と成功を繰り返している点である。常勝のチームや選手にはさほど興味は惹かれない。色々なアプローチを試し失敗から学び行動を改善していく、そのプロセスを実行しているチームや選手にいたく惹かれるのである。