E-Commerceにおける変動費 / オーダーレベルLTV計算のススメ
想定する読み手はコマース事業に従事する日本語スピーカーです。
今の仕事では、米国のD2Cファウンダーから学ばせて頂くことが多いのですが、Gross Profitの計算が甘いと感じることが多々あります。ここが甘いとLTVを想定より高く見積もってしまうので、Teatis (スナックコマース事業)ではどうやって考えているかを例にとって解説してみます。
LTV:CACを3倍目指そうとか、リテンションの概念の説明はMediumやNOTE等でたくさん落ちてるのでそちらをご参照ください。今回はLTVそのものの計算、定義は管理会計側を通して見るとこうなるというお話。
また、LTV = Salesで置くか、GrossProfitでみるかは会社のステージ、事業形態によってバラバラだと思います。
ただし売上が1ドル増えるごとにかかるコストには狭義のCOGS (原材料費)以外にも色々あって、「他にも色々ある」ということさえ知っておくと広告費をブーストするタイミングを見誤る可能性が少なくなります。
その他変動費
Discount (値引き)
=クーポンばら撒いてませんか?過去にActiveにしたクーポン、Onにしたままだったとかよくありますよね。。
Chargeback (チャージバック)
= 実はクレカ会社からチャージバック請求が大量にきてて対応に追われてませんか?米国では売上の約1.5%-2.0%がThreaholdでこれ以上のチャージバック請求がくると、決済代行会社で取引停止になる可能性があります。
Return & Return Shipping (返品とそれに係る配送費用)
= 米国のリターン比率を甘く見てはいけません。Amazonですら10%くらいと言われてます。日本より非常に高いです。
Payment Processing Fee (決済代行手数料)
= 大体総売上にかかる3%前後、取引ボリュームによるしカード会社にもよる。VISA・Masterは料率低め。実際の品物が届くもっと前、カード決済が走った時点で請求対象になるので、事前決済から配送までのリードタイム長い事業の場合は特に注意が必要。
Customer Support (カスタマーサポートの配賦コスト)
= オーダーあたりチケット数をKPIとして追ってますか?お問合せ多いなーと感じたら一度見てみても良いかも。
Shipping Cost
= 配送料。詳しくはこちらを。
Sale Tax
= 州によって異なるので一概に言えないが、ネットインパクトゼロなので無視。
これら全ての変動費を差っ引いて、黒字にならない限りは広告費を基本ブーストさせないというのが教科書的な教え。
オーダーレベルLTVでは、OrderID毎に、どの商品カテゴリーを購入して、どの決済会社を通して支払って、ディスカウントはいくらで、カスタマーサポートのチケットで受け答えが何回などと、オーダー毎の変動コストを見ることによって、儲かるカスタマーセグメント、商品カテゴリーを見極める分析を行えます。
ただここまで書いといてアレですが。例えばPayPayの広告100億円キャンペーン、新規事業で一気にクリティカルマスを取らなければやられるケース等、ユニットエコノミクス改善とユーザー規模が比例する場合は、そこまで役に立たない指標なのでご注意を。D2Cの場合でも、Liquid Deathみたいな過激マーケティング&ブランド力で勝負のような会社には当てはまらなそうですね。
ある時点でのユニットエコノミクスを無視してでも、Goするかどうかはカスタマーインサイトに基づく定性分析、参入タイミングの測り方、胆力、経験値、丸めて言うと直感の方がより大事だったりします。おわり。
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