意欲に関わる脳部位とは~脳画像から読み解く~
みなさま、はじめまして
見て頂いてありがとうございます🙇
今回は
【意欲と脳画像】
についてまとめていきたいと思います。
※できるだけ正しい情報の発信に努めていますが、あくまで個人のまとめ、私の臨床経験や考えも含みますので、より正確な情報を知りたい方は、原著論文や書籍の確認をお願いします。
脳卒中の臨床で
「リハビリへのやる気がない、一日中ぼーっとしている、自分で考えて行動することがない」
など
意欲が低い症例を経験したことはないだろうか?
よく交通外傷や前頭葉の損傷などで遭遇することが多い印象です。
そもそも「意欲」とはなんでしょうか?
なぜ
・前頭葉の損傷で意欲が下がるのか?
そもそも
・意欲に関わる脳機能部位と脳画像はどこを見たらいいの?
との疑問にできるだけ答えれるように、この記事をまとめていきたいと思います。
では、そもそも
意欲に関わる脳機能部位はどこなのでしょうか?
意欲に関わる脳部位
意欲に関わる脳機能部位はどこなのでしょうか?
それは「帯状回」という部分です
帯状回と聞いて、あまりピンとこない印象ではないでしょうか?
実はこの帯状回というのは、意欲もさることながらかなり重要な部分なんです
記憶との関連があるイメージはありますが、臨床で遭遇する「意欲」との関わりがとても深いんです。
では、帯状回について基本的な機能と脳画像、臨床で遭遇する症状についてまとめていきたいと思います。
帯状回の機能
まず、帯状回の大まかな機能ですが
帯状回は大脳辺縁系の各部位を結びつける役割を果たしており、感情の形成と処理学習と記憶に関わりを持つ部位である。また前部帯状回は、不適切な無意識的プライミングの抑制に必要な、実効制御(executive control)と関わりを持つことが知られている。また呼吸器系の調整とも関わりを持つ。
Wikipediaより引用
とされています。
ざっくり言うと
情動や感情とその処理、記憶、遂行機能や注意機能、意欲、自律神経機能などに関与する・・
かなり重要でしょ?
ここの障害があるとADL上でかなりの影響が起こることは容易に想像できるかと思います。
では、脳のどの部位にあるのでしょうか?
帯状回の解剖
帯状回はブロードマン地図における、
23野、24野、26野、29野、30野、31野、32野にあたります
➢帯状膝下野25野
➢前部帯状回 24野、32野、33野
➢後部帯状回 23野、31野
➢膨大後部皮質 26野、29野、30野
Wikipediaより引用
他の領域との関連もあり、帯状回は視床の前核および新皮質領域、そして大脳皮質の体性感覚皮質領域からの入力を受けています
つまり視床や大脳皮質とループを形成しているため、このループ機能にも影響がでてくるということになります
そして意欲との関わりが深い所は
「前部帯状回(25野)」という所です
まずは、脳画像から確認していきましょう
帯状回の脳画像
帯状回は
・半卵円レベル(図の左)
・基底核レベル(図の右)の画像で確認すると分かりやすいです。
前部帯状回は情動の運動中枢と言われています
つまり・・
情動の運動➡情動を起こす➡モチベーションを起こす➡意欲
となります
もう一つ重要な部位があります
それは前部帯状回と関わりのある
「島回」
と呼ばれる所で情動の感覚中枢と言われています
脳画像で確認していきましょう
島回の脳画像
島回は基底核レベルでの確認となります
さぁ、ここからは、
・前部帯状回(情動の運動中枢)
・島回(情動の感覚中枢)
との関連から意欲について詳しく説明していきます
情動の運動中枢が前部帯状回でしたね
そもそも情動は
私たちがよく使うモチベーションのことです
意欲ともいっていいでしょう
何かをしたい!という気持ちです。
「今度旅行に行きたい、おいしいものを食べたい、勉強したい。」
病院生活で言うと、「休みたい、トイレ行きたい、何か飲みたい」などです
つまり、帯状回がうまく機能しないと、この何かをしたい!というモチベーションが起こりにくいということになります
では、情動の感覚中枢➡意欲の感覚とはどんなことを指すのでしょう
「泣きたい」と「悲しい」を例に考えていきます
泣きたい!という気持ちはつまり何かしらの行動を起こしたいという衝動、動機を指します
それに伴う「悲しい」という感覚が情動の感覚になります
その行動に伴う主観的な感情体験のことを言います
そして、感覚の島回が機能しないと、悲しいとか、気持ちいいとか、嬉しいとかの感覚が乏しくなるので、あまり感情がないような人になったり、そのような感覚が鈍麻してしまいます
なので、何をしていてもぼーっとしていたり、何かをする気にならなかったりします。
ましてリハビリを目的をもって意欲的に・・・なんて気持ちが沸かなくなります
すごく重要ですよね
これが、私たちがよく臨床で見る、「意欲のない患者さん」を指します
そして、前部帯状回にはもう1つ重要な機能があります
前部帯状回のもう一つの機能
それは、自律神経を運動させる中枢でもあるということです
自律神経の運動中枢➡自律神経を駆動する
つまり自律神経に関係することへの衝動が発する部分でもあります
例えば
・水が飲みたい
・おしっこがしたい
・眠たい
などが考えられます
学生の頃に習ったホメオスタシス、これを保つための行動、それを発するのが前帯状回、もしくは内側前頭前野ということになります
そのため、前帯状回の損傷があると、便意・尿意の中枢である内側前頭前野にも影響し、「トイレに行きたい」という衝動が生まれず全失禁などが起こるとされています
よく水頭症で尿失禁が症状として上げられるが、これは内側前頭前野の障害とされています
内側前頭前野も画像で確認しましょう👇
内側前頭前野の脳画像
自律神経との繋がりは、帯状回の情動領域、認知領域ともが視床下部と連絡があると考えると分かりやすいかと思います
前帯状回と内側前頭前野の用語が混ざっていますが、前帯状面は内側前頭前野に含められることが多いので、内側前頭前野の機能として説明されているものは原則、前帯状回の機能の一部として考えると良いと言われています。
モチベーションを担う前帯状回、ADL、特に排泄や食事などに密接に関わるため、なかなか意欲、モチベーションが上がらない方、自律神経系における衝動が起こりにくい方は、脳画像で前帯状回や内側前頭前野を確認するのも必要かも知れません。
以上となります
最後まで見ていただきありがとうございました😊
参考・引用書籍
粳間剛(著):国家試験にも臨床にも役立つ ! リハビリPT・OT・ST・Dr.のための脳画像の新しい勉強本,三輪書店
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