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教えることは、誰かが新しく輝き弾ける瞬間に立ち会わせてもらえること

大好きな映画のひとつに「天使にラブソングを2」があります。
今の日本でいう底辺校の学生が、コーラスでメキメキと力をつけていく成長物語。
底辺校だけどヤンキーとか強気な子ばかりではなく、弱気な子も自信のない子もいて、そういう子たちもみんな一緒に成長していきます。
この映画はいい場面ばっかりなのですが、特にOh Happy Dayのところは何回見ても本当にいいです。自信のなかった男の子がある瞬間弾けるんですが、5億回見た今も泣ける。

さて、わたしは地元に帰ってきてから早3年(に5月でなりました)。
気がつけば地元で英語とか写真とかSNSとか教える機会に恵まれており、特に英語の方は老若男女に教える機会をいただいております。

わたしはこちらに帰ってくるまで、自分自身が教師などの何かを教える側になることにはあまり興味がありませんでした。ただ、20代前半の頃は学校を作りたいと思っていて、学校経営を学びたいと思って前の仕事はそれこそ学校……というより大学の事務でした。
わたしはこれまで、自分の能力を高めることはとても興味があったのですが、それゆえ自分以外の誰かの能力を高めることにはあまり興味がありませんでした。中学の同級生が「教えるのが好き」と聞いた時、上から目線だなーとすら思った記憶があります。教える仕事については、それほどやろうと思っていませんでした。

さて、そんな私が実際教えてみて思ったことはなんなのかというと、「教えることは誰かの人生の掛け替えのない時間を共有させてもらってるんだな」ということです。

学習塾に来る中でも特に勉強のできない子は、自己肯定感がとてつもなく低いことが多いです。本人がわからないうちに授業は進んでいくのに、周りはなぜか合点した様子です。でも、当の本人は自分がなにがわかってないのすらわかりません。そういう子は怯えた目で周囲を観察するようになるかもしれません。下をうつむいてしまって表情がなくなっているかも。声はか細いかもしれません。

だれでも一度は経験があると思います。人にバカにされたり、見下された視線や態度を当てられた時。悔しいですよね。胸の中にはやるせない気持ちと怒りと悲しみがいっぱいに同居するかもしれません。もしかしたら、彼らはクラス全体や教師たち全員からそういう目を向けられていると思うと-もしかしたら家族からもそういう目で見られているのかもしれないと思うと-つらくなります。

なので、わたしはなるべく相手には肯定的な言葉だけかけるようにしています。「わからない」と言えたら褒めます。だって、わからないことでバカにされ続けてきた彼らにとっては、その一言を発するのは大きな勇気が必要ですから。相手の目線に立ち、彼らの固くほつれた「わからないの根本」をほぐしていき、彼らがどうすれば立ち向かえるようになるかを考えます。自分がこう動いて欲しいのではなく、どうやったら相手が動けるようになるかを考えるのです。そして「君ならできる」と信じます。信じられた方が人は頑張りますから。そうして、「……わかった!」「……できた!」と覚醒する瞬間に立ち会えるのが、教える仕事の醍醐味なのだと思いました。

冒頭の映画のワンシーン、感動しますよね。でも、相手(生徒)に届く言葉や所作で指摘・指導できると、ああいう場面に毎日巡りあえます。これってきっとかけがえのないことじゃないかと。映画は画面の中のだれかの話だけど、現実はまったくそのまま私の話になるからです。

勉強というのは、成績うんぬんかんぬんの前に、自己肯定感を高めて人生を楽しく生きるための方法の一つにすぎません。将来の選択肢を広げるとか学年でトップになるとかはまず置いておいて、自分が自分を好きになれるかどうか、自分で自分のことを見つめられるようになるかどうかがまず大切だと思います。自分が好きになれたら、そのあとは自分が好きな方向へ羽ばたいたらいいんです。自分を好きになる過程で視野も広がり、世界も広がっていくでしょうし。生きているとつらいことも多いですが、そういった「できた!」という体験の積み重ねで、彼らの幸福度や自身の土台作りは大きく変わってくると思います。自分自身が好きになれたら、辛いことがあってもいつかはOh happy dayと歌える日が来るでしょう。

誰かの輝ける瞬間に立ち会えるのはとてもかけがえのないことです。その一助にわたしがなれればそれはとても光栄な事だと思います。3年前にはまったく想像していなかった教える仕事をすることで、わたしもまた一つ自分や社会の可能性を見つけられた気がします。

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ユカロニ
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