「私もあなたも路上生活者とかわらない」っていう話
3年前の別の媒体に書いた内容を再掲してこちらにかきます。
大分前の話ですが、2021年にメンタリストDaigoさんが、公式のyoutubedで生活保護受給者や路上生活者に対する発言で物議をかもしたことがありました。
内容は以下の通りです
「【超激辛】科学的にバッサリ斬られたい人のための質疑応答」という内容で生配信を行い、「ぼくは生活保護と人たちにお金を払うために税金を納めている訳ではないからね。生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら猫救って欲しいと僕は思うんで。生活保護の人、生きていても僕は得しないけどさ、猫はさ、生きていたら、僕得なんで。」
「人間の命と猫の命は、人間のほうが重いなんて全く思っていなからね。自分にとって必要がない命は僕にとっては軽いので。」
「みんな思わない? どちらかといえば、いない方が良くない? ホームレスって。いっちゃ悪いけど、本当にいっちゃ悪いこといいますけど、いない方が良くない? いない方がだってさ、みんな確かに命は大事って思っているよ。人権もあるから。一応、形上、大事ですよ。でもいない方が良くない? 正直」
発言は止まらず、「邪魔だしさ、プラスにならないしさ、くさいしさ。ね。治安悪くなるし、いない方が良いじゃん。猫はかわいいじゃんって思うどね、ぼくはね」
「元々人間は自分たちの群れにそぐわない、社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑してきているんですよ。だから犯罪者殺すのと同じですよ。犯罪者が社会にいると問題ですし、みんなに害があるでしょ。だから殺すんですよ。はい。同じですよ」
けっこうぶっ込んで発言されましたね。
これでね、「Daigoさん性格悪いなー」とか思った訳ではなく、みんなにも「少しはそう思う」って所があったんじゃないかなー。と思ったんです。
私自身、社会学部で、こういう社会の現実や課題を学んで学んでとにかくいろいろ学んできて、それからも曇りなき眼で見定めてきた積もりでいたのですが、やっぱり自分の中にも偏見があるのだと気づいたので、少しシェアさせて頂きます。
私は、大学を出てから看護の道へシフトチェンジし、大学病院で救急集中治療の現場で勤務してます。
心臓の疾患での救急搬送では、生活習慣がよくなくて倒れてくる人も多いです。
路上で倒れているのを発見されて、身元もわからなくて、治療して、補助循環装置つけて、呼吸器つけて、、、後になって住民票もないホームレスやんってことが分かっても、最善の治療をして、生活保護うけれるようにMSW(院内の社会福祉士さん)たちが動いてくれて...なんて例もあります。(生活保護うけてないと病院も治療費を回収できないからっていう側面もあると思う)
循環器分野では、手術なしの狭心症は約3日の入院で44万円、カテーテルなのど手術をすれば約5日の入院で220万円、手術なしの心不全入院18日で160万円、大動脈瘤でステントの手術をすれば14日で620万円、弁膜症の手術では24日の入院で994万円。これらのお金、生活保護に人は皆負担なし。でも私たちも保険料を払っていれば1〜3割負担。しかも、高額医療費制度があるので月数万トカ僅かでいいのです。それ以外は全部、税金や保険料からです。
(治療費は全部平均の概算です。入院が長くなったり、治療の内容や薬でも大分変わるし、もっと高くなることもあるし、低くなるることもあります。病院によってもちがいます。)
大動脈弁のカテーテル治療(TAVI)はまだ新しく予後が不明なのもあって、高齢者にしかしない(若い人は開胸手術)のですが、私がみてる実感としては80歳代〜100歳代の方がする手術。そのためにの1回の入院で800〜1000万円くらいするそうです。けど、本人にかかるのはせいぜい10-30万くらいじゃないでしょうか。
この1週間でも、100歳の人がペースメーカーを植え込んだり、88歳の人がCABG(心筋梗塞に対する開胸手術。肋骨切って、一回心臓とめて、補助循環回して、足とか脇の下から血管を引っ張ってきて心臓を栄養してる血管につなぐバイパス術のこと)したりって例がありました。えーって思うかもですが、ざらにあります。
自分で治療費払ってんだぜって思ってる人も、実は皆んな周りの人に払ってもらってます。当然の権利として。みんなに払ってもらってるなんて意識もなく。
さっき挙げた、100歳でペースメーカーとか、90歳手前で大手術とか、「あと死ぬの待つだけじゃないの!?」って、余命数年しかないかもしれなくても、最新の治療がなされて、数百万、数千万の税金つかってます。これが現実。でも、これが日本人に与えられている権利。憲法でいう生存権ってやつです。
救急搬送された身元不明で誰かもわからない人に、私たちは精一杯の医療と看護を提供します。正直「生保なのに、集中治療室の病床使って、補助循環装置使って、開胸術して、治って、退院して、また同じこと繰り返して入院してくるやん。この人〜」て思ってしまうような人もいました。(ここ私が偏見もってるよね。)医療者間でそういう会話がされるのも、少なからず確かにある...と思う。(そうはいっても治療はやめませんよ)
でも、それでも治療をして欲しいと病院に来るなら治療を受けられるのが権利。生きる権利。日本人として生まれてきてから、安い治療費で風邪治したり、子供の時無料で予防接種受けたり。全部一緒だよ。私たちも一緒。
そして、路上生活者や生活保護受けてる人全員が怠慢じゃない。(怠慢な人やずる賢い人もいます)
病気とか高齢だから働かせてくれないとか、コロナのせいで倒産しちゃったとか、理由は人それぞれだけれども...このセーフティネットなかったら、日本はもっと荒れてるし、治安が悪くて犯罪も多いし、死人がそこらで横たわってるような世界かもしれない。
彼らは、弱者なだけであって、悪者ではない。その弱者には自分だってすぐなれる素質(?)があると思うの。例えば、うつ病を発症して、働けなくなるとか...、小さいころから親となんかうまくいかなくて(愛着障害とか発達障害につながる)、なんか他人との距離感がわからなくて、気づいたら孤立してたとか...LGBTで周囲の人に理解されなくて辛くなっちゃったとか...生まれた時から障害があるとか....事故で身体が動かなくなっちゃうとか...言い出したらいキリがないんだけど。それらって全部繋がってると思うんです。
そもそも申請しなかったら生活保護もうけられないし、それをする気力がないとか、申請することを知らないとかもあるだろうし。申請するのをサポートする人が居る居ないでも違う。それって、大きな差だけど、些細な差でもありますよね。
ほんと些細なことから始まって、その延長線上なだけであって、生活保護受けてる人や路上生活してる人と自分との差ってそんなにないんじゃないかなって思った最近です。他人事に思えて、全部自分事です。
自分の中に偏見があるんだなって気づかせてくれたメンタリストさんには少し感謝もあるし、ここから自分には何ができるのかなって、考えていけたらなって思いました。
そこからね、みんな、それぞれが、
病気にならないように健康になるように生活をしようとか(毎日5000歩歩くとか)、フードロスをなくせるような活動をしようとか(そこまでいかなくても.今日のご飯を残さず食べようとか)、LGBTがもっと理解されるような世界にしたいとか(LGBTといわれる人とも普通に友達になるとか)、犯罪少年たちの社会復帰を支援したいからうちの会社で雇おうとか(BBSのサークルに入るとか)、世界中の低賃金労働者をサポートするためにそういう製品・商品は買わない(フェアトレードの商品を買う)とか、大気汚染に気を使った会社運営をしようとか(ゴミの分別するとか)、学校の先生してるなら.ハンデがある子どもでも理解できるような授業をしようとか、生活の中でちょっとでも意識したら、それが誰かの健康につながったり、幸せになれたり、元気付けたり、きっかけを与えたり...いい方向につながると思うのです。
みんなそれぞれの、ちょっとした意識で私たちの世界や社会はピッと1mmでもいい方向に向かえるじゃないのかなぁって思うんです。
例えばね、私だったら、
・できるだけ添加物や重金属を身体に入れないような食事や生活用品を選ぶように心がける。(ストレス溜まってマクドナルドとかミスドとか食べたくなったら、思いっきり食べるけど)
・子どもに毎日大好きって言う
・子どもがLGBTでも悩まないように男女どちらでも使える名前をプレゼントする(名前をつける)
・子どもと一緒に美味しいって言いながらご飯を食べる
・看護師として、誰であれ一生懸命看護ケアにあたる
・患者の家族の心もケアする
そんな普通にできることでいいと思う。誰かが少しでも楽な気持ちになれたり、幸せな気持ちになれたり、そんなことを考えながらすれば.ほんの些細ななことでいいのです。特別なことじゃない。
長くなったし、ちょっと何言ってるか意味わかんないって人もいると思うけど、私の個人的な考えに時間を割いて、最後まで読んでくれてありがとうございました。
自分にできること、いっこ考えてみてください。そして、やってみてください。なんでもいいです。いつもやってることでも、誰かのためになってるなって思えたら、それを続けてほしいです。