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そのへんのOLのカジュアルお遍路のすすめ 15 荒天編(高知④)
暴風雨、横殴りの雨の予報だった。
今夜は室戸に泊まって、明日の朝室戸岬なのに。こんな日に限って嵐はやってくる。
途中唐浜から神峯寺まで上るのだが、ここは結構な難所らしい。
そこでタクシーを予約しようとしたのだが、そんな日だからかタクシーも予約でいっぱいだと言う。
午後からなら空くかもしれないから明日午後また電話をしてくれ、と言ってくれた一社に望みをかけることにした。
18日目 室戸
高知駅から徳島まで向かう。
使うきっぷはこちら。
公共交通機関利用のお遍路のために作られたのかと言うくらい便利な切符だった。
徳島のバス以外ほぼこれで賄える。
宇和島から高知まで使った四万十・宇和海フリーきっぷの高知・徳島版かな。
お寺を回りながら、丁度3日で徳島市に着く。
はじめの一歩はJRで後免駅まで。そこから土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線に乗ってなはりに向かう。経路上に札所が幾つかある。
第28番 大日寺
土佐くろしお鉄道のいち駅から徒歩で行ける。と言っても片道30分あるがお寺に着くまでは平地なのでそこまで苦にならない。
のいちは開けていて、駅前にファミレスも大きなスーパーもある。
高知の葉牡丹を教えてくれた友人はのいちの出身で、故郷を田舎だ田舎だと言っていたが、全然そんなことはない。コンビニもあるし、とても住みやすそうだ。
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これは図書館。エンタシス!?
まだ雨は降っていない。
歩道もあるので歩きやすい。
そう言えば四国は歩道が作られていることが多い。お遍路で歩く人がいるからだろうか。
全国的には歩道はあんまりないよね。
着いたが、なんかまた山の上。
大した山ではないのだけど、高知のお寺は市街地でも山の上に作られてることが多い。
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団体さんとかち合ったが、足の悪いおじいちゃんが苦労して上ってらした。参拝を済ませるとすぐに降りたようで、帰りにもすれ違った。
この階段を一歩一歩杖で体を支えるようにしながら降りていた。
同じ団体の人たちは上でまだ写真を撮ったりしていた。
「迷惑をかけるから先に降りてるんです」
とおじいちゃん。
このお寺には上まで車道が通じていて、バスでなければそこまで車で行ける。そこからも2階分くらい階段を上がるのだが、下から上がるよりはずっとマシだ。
ツアーによってはバスで上がれなくても、徒歩を車道にするプランもあるそうだが、今回のツアーは階段なので難儀する、と言ってらした。
こんなに気を遣って参拝をしているのだから、じいちゃんに良いことが訪れますようにと祈った。
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暴風雨どころか日差しが出て来たが、多分これから暴風雨が来るのだろう。
写真に写っている団体さんは(手前のおばあちゃんも含めて)階段ですれ違ったおじいちゃんのお仲間さんたち。
ツアーに乗っかっているのは意外に四国在住の人たちが多い。
何周もしているのか、納経帳が御朱印で真っ赤な人もいる。2周目からは同じ納経帳に重ね印と言って御朱印だけをいただくのだ。
タクシーを呼ぶと、そのタクシーの運ちゃんも何周もしていることが多い。
タクシー運転手同士で誘い合って一緒に回ることもあるそうだ。
四国の人たちにお遍路ってどういう存在なんだろう。
第27番 神峯寺
タクシー会社に電話してみると今なら大丈夫だと言うことで、唐浜駅前の休憩所から無事に神峯寺までタクシーを使えた。雨天の山は足下も悪いし、無理をすべきじゃない。
降ってないけど。
降りそうな天気ではあるし、降った形跡もある。路面は濡れている。
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駐車場からも坂を上り、山門を通った後も長めの階段がある。
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麓から神峯寺駐車場までの道は細く、車道でもバスは通れないそうだ。
そこで団体ツアーは麓から地元のタクシー会社を借り上げて客をピストン輸送する。
午前は団体客が入っていて、近隣の個人タクシーは皆呼ばれ、予約できなかったのだった。
雨だからじゃなかった(笑)
歩く気で居たので、神峯寺の時間はたっぷり取ってあり、お陰でタクシーも待てた。
タクシーはほんとに楽でいいね。次はタクシーかな。
四国遍路のために免許を取ろうかと考えていたら周り中に危ないからやめなさいと反対されてしまった。
神峯寺は今では奥の院となっている神峯神社に始まる。神峯神社は神武天皇が東征の時に立ち寄り建てたものらしい。
神峯寺の縁起では神功皇后が建てたと言うが、神功皇后はよく豊受女神と混同されていて、豊受女神は神武天皇と同時代と思われるので、多分神社の言ってることの方が正しいのかも。
時間的には神峯神社に行く時間はあったが、タクシーを待たせていたので断念。
神峯神社に行基が十一面観音を刻み、神々とともに仏を祀ったのが神峯寺の始まりだ。
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第26番 金剛頂寺
歩き遍路だと、金剛頂寺から神峯寺までの山道が相当にきついらしい。
公共交通機関を使うなら、足摺岬と奈半利駅を結んでいる路線バスのジオパーク線で、元橋で降りる。そこから平地を進んだ後、上っていくのだが、徒歩はこちらとある方角に進んだところ、遍路道だった。
土の道。雨なのに! 降ってないけど。暴風雨の予報なのに! 上ってる途中で暴風雨が来たら動けなくなるかもしれない。
往復2時間で収まれば次の津照寺の閉門に間に合う。
今までの経験からして、遍路道は明らかに速い。元橋バス停から30分くらいだとどれを読んでも書いてあるが、車道を30分ではないだ。遍路道を30分だ。おそらく車道だと1.5倍から2倍の時間がかかる。
しかし遍路道は私の体力とスキルを越えていることが多かった。
迷ったが、そのまま突き進むことにした。
遍路道に入るまでに10分歩いているので、20分くらいで着くはずだ。
が、思ったより長かった。
雨が降った後らしく土の道はつるつる滑ったし、よけいにながく感じた。
途中で歩き遍路のお兄さんにすいすい抜かされた。
無事到着。
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遍路道もう嫌……。帰りは車道にする。1時間20分あるのでいくら車道でも余裕で間に合うだろう。
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雨は上がっていて、しっとりした空気が境内を包む。
昔は女人禁制だったらしい。
弘法大師の創建で、このお寺で大師は初めて「南無大師遍照金剛菩薩」と唱えたのだとか。遍照金剛というと大日如来を思い浮かべるが、弘法大師の灌頂名だそうだ。
帰りの車道はとても歩きやすかった。
パラパラと雨が降り出した。
車道にして良かった。
第25番 津照寺
雨はすぐに止んで、室戸に着いたときには晴れ間も見えた。
室戸と言っても室戸岬ではなくてその手前、室戸市役所のある市街地が宿泊地だ。
宿の裏に津照寺がある。
バス停は市役所の前にあるので、そこからは案内看板に従って曲がりくねる細道を海の方に歩いていく。
横の小高い丘をまさかここじゃないだろうなと思いつつ見上げていたが、そのまさかだった。
山門をくぐると目に入る長い階段。
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数々の高いところのお寺を参拝してきたのでこの程度は大したことない。体力ゼロのOLも成長する。
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素晴らしい眺め。
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本堂は近代的な建築で、サッシの引き戸になっていて、中で参拝をする。
戸が固くて参拝のおばあちゃんが閉めるのに苦労をしていた。
心持ち持ち上げ気味にすると閉まる。実家と同じだ。
大師堂と納経所は階段の下にある。
港に近い小高い山の上にあり、津(港)を照らす灯台のような寺と言う意味だそうだ。
元は津寺と呼ばれていた。
本日のお遍路はここまで。
おつかれさま!
暴風雨の件
そうそう忘れていた、暴風雨、横殴りの雨だが、道中のタクシーの運ちゃんや参拝者、宿の人に訊いたところ、私の居ない間に横殴りの激しい雨が降っていたそうだ。
天気予報は間違っていなかった。
たまたま雨の止んでいる土地を雨雲を避けるように進んでいたようだ。
愛媛では大分雨にやられたが、基本的には雨に降られることは稀で、友人たちの間では晴れ女で通っている。
ところでこんなデータがある。
偏差値50、つまり全国の平均的な晴れ日数でも210日を越える。
雨の多い日本だが、それでも雨の確率より晴れの確率が多いのだ。
晴れ女というのは気のせいだ。
しかしこんな確率なのに、どこかに出掛ける時は大体雨、という雨男雨女もいる。
この場合は、あり得るんじゃないのかなあ?
非科学的だけど。
私の友人の雨女には、渇水の四国を3日間旅行して、台風と共に移動してた子がいる。
渇水の夏、群馬に旅行に行くというので、ダムでも見学して雨降らせてよ、と声を掛けたら、本当に雨を降らせた雨男もいる。
ちなみに私は天照大神と観音巡りで8割の雨確率だ。
伊勢神宮に行くときは雨の方が多い。太陽の女神のくせにどうしたわけなのか。
しかし稲の生育にとっては、渇水よりもきちんと雨降る方が有難いはずなので、本当に最高神は太陽の女神なのかな?
水の女神だという説もあるのだけど、そちらの方が合ってそうな気がする。
豊受女神が植物と水の女神であるので、豊受女神が稲の生育を担っているのかもしれない。
お稲荷さんは豊受女神だしね。
もしかして、伊勢で雨に降られるのは、内宮の天照大神ではなくて、外宮の豊受女神のせい??
(などと非科学的なことを大真面目に考えつつ)
科学では説明できないし、単なる偶然なんだろうけど、巡り合わせというか運のなさなのか、逆に恵みの雨を降らせるので運があるのか、雨男雨女は実在する、と思う。
室戸に泊まった日は夕方は晴れて、綺麗な夕焼けがお部屋から見れた。
明日は快晴らしい。
一週間予報ではずっと雨だったので、予報が変わって嬉しい。
足摺岬を見られなかったので、室戸岬は楽しみにしていた。
室戸の宿の料理がとても美味しかった。
またここに泊まりたい。
窓からは室戸の港の船が目の前だった。