そのへんのOLのカジュアルお遍路のすすめ 12 炎熱編(高知①)
私の中のおいしい都道府県ランキングの上位4都道府県は長いこと、
北海道
石川
岡山
高知
だった。
高知は、わかるわかる、と言う人もいるが、高知? と聞き返す人もいる。
皿鉢料理が有名だから皿鉢料理のイメージが大きいのだろう。大皿に盛り付けている以外のイメージがないからかな。
なお今ではここに愛媛もランクインしている。
宇和島鯛めしがヤバい。
今治の焼豚玉子飯と鉄板焼鳥もランクインに貢献している。
14日目 中村
第39番 延光寺
とにかく暑い日だった。
宿毛駅から中村行きの電車に乗り、平田駅で降りて炎天下を歩いていく。
車道脇の日陰の少ない道、目を楽しませる何かがあるわけでもなく、ひたすら長くて暑い道だった。
右に折れるが、車用にも歩行者用にも延光寺への標識があるのでわかりやすい。
曲がっても暑い。
帽子を被ったり日傘を差したりぬれタオルを被ったりしたが、何をしても暑いものは暑かった。
ぬれタオル、扇風機、日傘のトリオが一番効いたような気もするが、駅で濡らしたタオルは着くまでにすっかり乾いていた。
奥まったところに延光寺はある。
駐車場はお寺のすぐ横なので車なら簡単に来れそうだ。
くそ暑かった国道56号線も、車ならすいすいだし涼しいことだろう。
亀の伝説があり、山号を赤亀山という。創建も神亀年間なので余程亀に縁があるお寺だ。
延光寺の亀は竜宮の亀だが、竜宮の亀は多分籠目の舟で亀じゃないんじゃないかななどと思いつつ……。
東京でへらへら過ごしている食べるのと遊ぶのが大好きなOLのカジュアルお遍路も、この辺りまで来ると精神力もついてきて、帰りの炎天下も心を強く持って歩けた。
東京だったら倒れてるよ、マジで。
第38番 金剛福寺
金剛福寺は足摺岬にある。
中村駅前からバスが出ていて、アクセスは良かった。
ただ、終点のバス停なので、15分後に帰らないならば2時間足摺岬に滞在しなければならない。
くそ暑い日だった。
お店もないところで炎天下2時間は辛い。レストランらしきものはあるが、レストランで2時間は潰れない。
足摺岬のバス停から金剛福寺はすぐだ。走った。参拝をした。般若心経は黙読だ。
お庭がとても綺麗に整えられている。
書き割りのような空だが天然物だ。
納経所は空いていて、すぐに書いていただけたため、走ってバス停に戻ると、丁度バスが出発するところだった。
乗り込むと、
「あれ、お姉さん、さっき降りてなかった?」
と運転手さん。
「お寺に行ってきただけなので」
「あー、次のバス2時間後だからね。ご苦労さんです」
乗客は私一人だ。
途中、会社と連絡があるとかで、海があるところで停めてくれて、
「降りていいから景色見といて。ちょっと時間頂戴ね」
と言うので、木々の隙間から海を眺めた。
足摺岬を全然見られなかったからちょっと嬉しい。
次来るときは絶対ちゃんと見よう。
って言うか、観光優先だったのにいつの間にこんなにお寺優先に。
お土産屋さんもあったし、食事をしてのんびり2時間足摺岬に居ても良かったのじゃないの?
足摺岬から中村までバスで1時間40分かかるので、確かに、着いてから洗濯とか考えると辛いのだが。
15日目 高知
第37番 岩本寺
高知を振り返ると、このお寺が一番楽に行けたように思う。
窪川駅で降り、昭和の地方都市のかおり漂う街を歩いて10分ほどでたどり着く。
中村から土佐くろしお鉄道なので特急も乗れるのがありがたい。窪川駅はフリーエリアの外れの駅でそこから高知も特急が乗れる上、途中下車も可なのが有難い。
速いことよりも乗れる電車が増えるのが一番の利点だ。
鈍行しか乗れないと、ただでさえ1時間に数本しかないのに、うち1、2本が特急なので、なかなか乗れる電車が来ない。予定が大きく遅れることになる。
元はここから北西に進んだところにある四万十川のほとりの高岡神社の別当、福圓満寺が札所だった。
高岡神社は仁井田明神と呼ばれていた。
今の岩本寺に移ったのが天正だというから、安土桃山時代だ。バチカンに4人の少年が渡った頃だ。八十八カ所の歴史の長さを感じる。
丁度お昼時、駅併設のカフェでお弁当を作ってくれると言うのでお願いした。
駅併設のカフェのくせに美味しかった。
さすが高知。高知の食に裏切られたことは一度もない。
第36番 青龍寺
青龍寺に公共交通機関で行くのが大変なんだよ……。
ドラゴンバスをうまく捕まえられれば楽なのだけど、うまく捕まえられなかった。
ドラゴンバス以外でどう行けば良いかというと、まずは朝倉駅で降りる。
駅前をとことこ歩いて向かい側、朝倉駅前から宇佐行きのバスに乗る。
宮前スカイライン入口で降りたら、そこから歩く。
暑そう。
海風が強いので飛ばされないようにね。
日陰もなくて辛いっす。
めっちゃめちゃ暑い日だった。
風が強いので帽子も日傘もさせなかった。
橋を渡ると山の陰が涼しい。
日陰が涼しいって素晴らしい。
青龍寺はこの道から山側に入っていく。
青龍寺と言っても特に龍にまつわる伝説があるわけではなくて、弘法大師が唐の青龍寺を懐かしんでこの名を付けたらしい。
その割に土佐市のコミュニティバスがドラゴンバスと言ったり、何かこの地に龍の伝承がありそうだがと調べてみると、土佐市のマスコットキャラクターがとさごんと言う竜だった。
このとさごんは、土佐市の形が龍の顔に似てるから作られたものらしい。
そうかなあ?
こんなに長い階段上ってきたのだっけ。
帰りはドラゴンバスがある。
乗り換えて朝倉駅に戻り、一日が終わった。
暑い一日だった。
朝倉駅は構内に踏切があるからね!
踏切内から激写。
日が沈んでいく。
鰹の藁焼きを食べよう
高知と言ったら鰹だ。かつおの藁焼き。かつおのたたきだ。
これがもう東京あたりで食べるのとは全然違う。
肉質もっちり、旨みと甘みが舌の上で踊る。生臭さはなし。
タマネギと一緒に食べるのが美味しい。
いちもんや
中村泊から高知に入っていたので、心はすっかり宇和島鯛めしの虜だったけど、やはり土地の名物を食べないとと、ホテル隣の道の駅のようなところで食べたよかつおの叩き丼。
こんないかにもチェーン店のようなお手軽なところでも普通に美味しい。
まあでも「普通」に美味しいので、他のメニューでも良いように思う。
クレメントイン高知
高知のホテルはクレメントインだ。
今治のクレメントインが最高だったので、高知もクレメントイン一択だった。
今治に比べてお高かったのは日程のせいだろう。ほぼ倍のお値段だった(泣)
今治は真冬に行ったが、今回は夏だ。夏と言えばバケーションで行楽シーズンだ。
個人的には、今の気候なら夏より冬の方が動きやすいのではないかと思うのだが旅行界隈では違うようだ。
冬に行くとバスも運休しちゃうしね……。
クレメントイン高知は、朝食が凄かった。
朝から藁焼き!
ほんとに出て来た。
これがちゃんと美味しかった。
この朝食会場は夜になっても満席だったので、何でだろうと思ったら、地元で有名な居酒屋チェーンの経営らしい。
葉牡丹
友達が高知出身で、高知に行くと言ったら、この店が美味しいよ! と教えてくれたのがこのお店。
はりまや橋の交差点から西に200メートルほど進んだところにちんまりとある。
古くて歴史ありそうな居酒屋で、まさかこういうたたずまいとは思わず、二度見してしまった。
中では元気に人生の先輩のお姉さんたちが接客をしている。お客さんとお店の人の距離が(心理的に)近い。まさに昔ながらの居酒屋という感じ。
ご飯ものはありますか? と聞くと定食があるよと教えてもらい、早速友人おすすめのたたき定職を注文。
うっまい!
鰹が厚切りでびっくり。
うまい!
鰹が美味しいから厚切りでも美味しい。鰹の味が口いっぱいに広がる。その味と一緒にタマネギ、ニンニク。うまい。
ひろめ市場
葉牡丹に行った日は理由あってタクシーをお願いしたのだけど(その理由は次回書く)、そのタクシーの運ちゃんに、今日は葉牡丹で食べると言ったら、明日はここがお勧めだよと教えてくれたのがこちら。
ところが翌日は理由あってそれどころじゃなかった。
次回必ず行くので!
次回。
宇和島あたりから、次回のことを考え始めていた。
次は順打ちかな?
ツアーに乗っかりたい気もするが、歩き遍路もしたい。でもタクシー遍路で車遍路も体験してみたい。
特に最初の方はちゃんと出来ていなかったから、ちゃんとやりたいって気持ちもある。
そりゃあ昔の人みたいに、白衣は死に装束、笠は棺桶、金剛杖は墓標、なんて覚悟を決めたお遍路は出来ないけど。
先達の教えを聞きながら、きちんとまた回りたいな、って思うようになってきたのだ、その辺にゴロゴロいるただの旅行好きのOLが。
ひろめ市場はフードコートみたいになっているらしい。次は一人じゃなくて誰かと回りたいな。
始まりがコロナ禍だったので、ずっと一人でまわっていた。
コロナ前は旅行は必ず誰かを誘ってしか行かなかった。
一人旅をするようになって、一人旅も楽しいなと思うようになったが、楽しいもの美味しいものを見つけたときは、誰かと分かち合いたいなと思うのだ。
高知の夜は学生アリスを読もう
ドラマにもなったので、「臨床犯罪学者 火村英生の推理」は知っている人も多いだろう。
有栖川有栖の本格ミステリーシリーズだが、原作の方は面白い仕掛けがしてある。
有栖川有栖が語り手になるシリーズは2種類ある。
火村先生が探偵役の作家アリスシリーズが、ドラマになった方だ。主人公の有栖川有栖は推理作家で、友人の火村と事件を解いていく。アリスのヘボな推理が味わいがあって面白い。作家アリスが書いている推理小説が、学生アリスシリーズだ。
この学生アリスシリーズが大好きで、特に2作目の「孤島パズル」の心を揺さぶられる青春の1シーンの切なさというか、雰囲気がとても好きなのだ。
3作目の「双頭の悪魔」の舞台が、ここ、高知だ。
山奥なので、高知の北部が舞台になる。
もーたっぷり雰囲気味わえるよね。
この学生アリスシリーズの主人公有栖川有栖は、将来作家になろうと思っていて、学生アリスの探偵役、親友の江神にこんな作品を書きたいという夢を語る。
それが作家アリスシリーズなのだ。
高知に来たとき、まず思い出したのがこの「双頭の悪魔」だった。
読んだのははるか昔だが、再読しよう。
大歩危小歩危も目にした今なら、随分と鮮やかに世界が広がることだろう。