納豆とテレビ好きの奥さんによくスルーされる優しい?紳士50歳ぐらいの《結城勇樹》さんは---あの時の---【中編】 〈カフェ14 勇樹1中 〉
「娘と息子がいるんですが、名前は長女が〈悠菜〉ゆうな、長男が〈勇斗〉ゆうと。娘は、奥さんの〈悠〉に菜の花の〈菜〉。息子は私の〈勇〉に、北斗の〈斗〉。わかりますか?名前の由来」
勇樹さんは、私に聞いた。
「由来ですか?。ただお子さんも〈ゆう〉って付くんですね」
私が聞くと
「そうなんですよ。その名前の付け方が問題なんですよ」
「名前の付け方?」
私が不思議そうに聞くと、
「納豆が大好きな奥さんは、生まれた子に納豆の〈な〉と〈と〉をつけたんですよ」
「あぁ、なるほど。--- えっ、納豆?。でも、〈悠菜〉さんと〈勇斗〉さんって名前はなかなかいいですよね。素敵。由来は面白いですけど奥さんセンスあるかも」
確かに名前は私的には好きな名前。由来を聞けばちょっと笑えますが。
「ママも参るなぁ。実は私が奥さんと出逢ったのも逆ナンで、こう見えて私は当時は恥ずかしがり屋で内気だったんですよ」
--- 今でもなかなかのダンディーな紳士。若い頃はかなりモテたのでは。
「モテたでしょう」
「自分で言うのもなんですが、たぶん人気はあったと思いますが何せ内気で、当時、たまたま友達がナンパした女の子と一緒に居たのが奥さんで気に入られましてね。あの当時は優しい女の子でした」
あらら。よくあるパターンかな。私は静かに聞いていた。
「出逢って名前をお互い言うと、(え〜。名前も名字も同じ〈ゆうき〉。おまけに私も〈ゆうき〉だなんて本当に運命みたい。信じられない)とか言っていたのに、子供を妊娠した頃からは、(何で同じ名前なのかしら。ほんとややこしい)、ですよ。で子供が産まれたら、子供の名前も全然考えてもいなくて、(名前どうしよう。どうせなら皆〈ゆうき〉にする?)とか言い出すし。(それは駄目だろう)って言えば、(じゃ、何にするのよ)って。そしたら突然(納豆が食べたい。病院のは少ないのよ)って言ったかと思ったら、(納豆?。なっとう。な。--- あ。〈ゆうな〉にしましょうって勝手に言って漢字は奥さんが決めました。まぁ名前は、可愛いから気に入りましたが、で、次の一言が、(納豆、〈な〉と〈と〉、〈悠菜〉〈ゆうと〉あなた次は男の子よ)ですよ。私は、一瞬ビビりましたよ。もう次?。更には男の子、更には名前も決めて」
--- あらま。
「で。何とか無事に次は男の子が授かりましたよ。女の子だったらって冷や冷やでしたけど。そしたら、(ねぇ、あなた、〈ゆう〉って呼べば皆呼べるからいいわよね)ですよ。同じ名前で喜ばれたり文句言われたり散々。子供が大きくなれば、(あなた達は納豆のお陰で素敵な名前が付いたのよ。納豆に感謝して食べなさい)ですよ。名前の由来聞いても子供達は〈この親からなら、そんなもんだろう〉みたいな反応で慣れて黙って食べてましたが」
淡々と話す勇樹さん。
--- でも面白い家庭と言うかちょっとユニークな奥さん。
「あ。すいません。何か余計な話しになりました」
「いえいえ、大丈夫ですよ。皆さん〈ゆう〉が付くんですね。確かに奥さん言うみたいに、〈ゆう〉って呼べばいいから、いいかも」
つい私も言ってしまった。
「ママもですか。ま、確かに便利ですが。実は、家の奥さん、納豆以上に好きなのがテレビでして、特にサスペンスと刑事もの。先日は酷い目に合いました」
「酷い目?」
勇樹さんは、ため息をつきながら更に話し始めた。
「そうなんですよ。あの久しぶりに雪が降った日ですよ」
--- 雪が降った日?。あ、咲希ちゃんが来た日だ。
「今はもう子供達も一人暮らしや寮に入って奥さんと二人暮しなんですが、あの日あの日ですよ。聞いて下さいよ。テレビ好きの奥さんには参りましたよ。ま、あの日に限った話でも無いんですが」
勇樹さんは、何か興奮しながら更に話し始めた。
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