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ホスト《雪❅冬矢》君の盗まれた真っ白いコーヒーカップはまさかのキューピット??? 〈カフェ11 冬矢2後〉
「ママ、実はちゃんと真っ白いコーヒーカップ、俺にしたらそれなりにちょっと高価なヤツを買ったんだぜ」
「そうなの」
何だか真剣に話す冬矢君。
「あの日の次の日買いに行って夕方来るつもりだったんだよ。でさ、真っ白いカップ持って店に入ろうかと覗いたらお客さんが居たからさぁ。あの日は遠慮してカップ持ったまま店に行った訳よ。ロッカーに入れて店に出たまでは良かったんだ」
すると冬矢君が思い出したように
「そうそう。例の俺の名前。〈冬矢〉から〈雪❅冬矢〉にしたいって店長に言って〈雪❅冬矢〉って読み方変えたら〈セツトウヤ〉窃盗屋になるって店長に話そうと思ったら、店長が話す前に気づいて、(---ん。〈セツトウヤ〉〈窃盗屋〉じゃねえか)とか言って大笑いされてさ。何か話すタイミングはズレるし更に店長が面白がって皆に話したんだよ」
「ま、店長さすが ---とは思ったけどさ」
冬矢君は、ここは小さい声で言った。
「店長って、なかなかセンスあるわね。やっぱり、うふふ」
私も頷けた。
「そしたら皆が俺の事〈窃盗屋〉に引っ掛けて〈セツトウヤ〉って言い出してさ」
「あらま、〈ゆきとうや〉って素敵なのにね」
「ま、それもいいんだけどさ」
冬矢君はちょっと一息コーヒーを飲んだ。
「でさ。まだ新人だからヘルプでナンバー2のホストの客に一緒についたのよ。それから真っ白い俺のコーヒーカップが盗まれる運命が始まった訳よ」
「ぇぇ?、コーヒーカップの運命?」
面白い事を言う冬矢君。
「若い女の子とおばさんが居てさぁ、たぶん女の子の指名なんだろうな。そのホストが俺を(新人のセツトウヤ君だよ。宜しく)って紹介したんだ。そしたらその女の子が(セツトウヤ?、窃盗屋?。何それマジウケる〜)とか馬鹿みたいに大笑いだぜ。---ま、その女の子にも興味無いしヘルプだからいいんだけどさ」
また冬矢君は一息。
「それでさ、もう(セツトウヤ、窃盗屋、マジウケる〜。おまけに真っ白白。マジウケる〜)連発。俺より絶対年下のくせに。ヘルプだから俺も(アハハアハハ)って笑ってた訳よ。そしたら---」
一瞬、冬矢君が口を尖らせた。
「(あなた、名前はどう書くの、〈セツトウヤ〉って)って一緒に居たおばさんが聞いて来たんだよ。でさ、まだ名刺無いしとっさに真っ白いコーヒーカップ思い出したんだよ。実は、真っ白いコーヒーカップに金色でさ〈雪❅冬矢〉って名前書いてあったから、俺ロッカーに取りに行った訳よ。ナンバー2に了解貰って。でさ、その真っ白いコーヒーカップおばさんに見せて、(雪冬矢〈ゆきとうや〉です。読み方変えたらセツトウヤになりますから皆さんにはセツトウヤって呼ばれてます)って言ったんだよ。そしたら、おばさんが(それ、おいくら?)って言ったんだ」
冬矢君はちょっと不思議そうに言った。
冬矢君のコーヒーカップに、--- おいくら?。
--- へぇ。
何か面白くなりそう。私は何かわくわくしてきた。
「でさぁ、おいくらって、売り物じゃないから俺、(あ、これ俺のコーヒーカップで売り物じゃないんですよ)って言ったんだ。そしたら、(ちょっと見せて貰える?)って言うからおばさんに渡したんだよ。おばさんジロジロ見て(売って貰えない?)ってまた言うんだ。(いやいや、売り物じゃ無いから)って言ったら(譲って貰えないかしら)って言うんだ。何でこのコーヒーカップ?。まして俺の名前入ってるし。って思ったんだけど」
また冬矢君は一息ついた。
「俺さぁ、ついつい(そんなのが良かったら、どうぞどうぞ貰ってやって下さい。いっぱいありますから)なんて言っちゃったんだよ。1個しか無いのに。おばさん(うふふ。いいの?。ありがとう)って。ま、盗まれた訳じゃないけど俺があげたんだけど、何か複雑な気分なんだよなぁ。俺からしたら上手く盗まれたような気分なんだよなぁ」
冬矢君は、また口を尖らせた。
そして、冬矢君はポケットから出したスマホを見て
「ヤベ、もう行かなきゃ」
そう言って、コーヒーを飲み干した。
「ごめん。ママもう行くわ」
冬矢君は、代金を支払って立ち上がった。ちょっと急いでいる。私は預かったコートと帽子を渡した。
「真っ白いコーヒーカップ、私が用意しようか?」
思わず私はそう言っていた。
「マジ?。ママ宜しく頼むよ。格好いいヤツ」
冬矢君はそう言って、コートを着ながらちょっと急いでドアを開けて店に向かった。
私もドアに行って見送ったが、
--- 新人でヘルプ、まして初対面で冬矢君のコーヒーカップを欲しがるなんて。更に〈おいくら?〉って。まったく興味の無いホストの物を欲しがる訳がない。確か、おばさんって言っていた。まぁまぁ年上だよね。
私は、さっき冬矢君の --- 考えすぎる優しさを心配したけれど意外や意外かもしれない。何か面白くなって来た。
私が、ちょっとニヤニヤしていると。
--- ん。
「ギャー!」
--- え!
冬矢君が行った方から歩いて来た男性の変な声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
男性は、50歳前後かな。ちょっとお酒臭い。フラフラもしている。
「い、今。真っ白いお化けが---」
「え!、お化け?」
--- あ。そう言われて思いあたった。冬矢君だ。確かに酔っ払ってあの真っ白さじゃ間違えるわ。
「大丈夫ですよ。お化けは居ません」
私が言うと
「ですよね。飲み過ぎました。すみません」
男性は、申し訳なさそうに言って、それでも不思議そうに店を覗いて、また歩き出して行った。
「気をつけて下さいね」
時々ふらふらしながら男性は帰って行った。男性の後ろ姿が何故か印象深かった。
--- もう今日は誰も来ないわよね。
私は、ドアに掛けてるプレートを返した。
---《今日は終わり》---
そして、ドアを閉めた。
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