故郷ってやっぱり恋しいものですね。ありがとう♡勘当された親父と逢えました〈カフェ41〉
カランカラーン。
昨日は雨が降っていた。梅雨の真っ盛りだから当たり前なのだけれど、当たり前が時に当たり前では無くなる季節の変化を感じる今日この頃だ。
暑くなっても雹が降り、寒い季節でも時に真夏の様な気温になる。
確かに、こうだからこうなんだという決まり事は正しい訳では無いけれど、やたら自然の決まり事が崩れて行くのがちょっと気になる。
昨日来たお客さん。40歳過ぎだと言っていた。
若い頃にお父さんに勘当されて、かなりずっと疎遠だったのに家庭を持って故郷を訪れた。
勘当されたお父さんにも逢いたくなって。両親が気になったのだろう。やはり心配になったのだろう。
それでもやっぱり、庭越しから両親の姿を見ても声を掛けられず、帰ろうとして雨が酷くなってここに寄った彼。
私と話をしながら落ち着いてから、彼は〈もう一度、親父の所に〉と言って出て行った。
それから彼は来なかった。
私は、きっと上手く逢えて泊まったのではないかと思っていた。
カランカラーン。
私はなんとなく感じた。
---ん?。
入って来たのは、やはり昨日の彼だった。
そして、彼の後からちょっと年老いたと言っても年齢の割には若々しいかな。たぶんお父さんと入って来た。
「いらっしゃいませ」
昨日は雨だったけれど、今日は久しぶりの快晴だ。
「ママさん。昨日はありがとう。ママさんのお陰で親父と母さんにも逢えました。本当にありがとうございました」
彼はそう言った。
「良かったですね。本当に」
彼とお父さんは、昨日座った窓の見えるテーブル席に座った。
私は、おしぼりと水の入ったグラスを持って、テーブル席に向かった。
「いらっしゃいませ」
改めてそう言うと、お父さんが私を見て言った。
「ママさん、本当にありがとうございました。いろいろ息子から聞きました。私もあの頃は若かった。今思えば何で勘当なんてと思って居ました。息子の居場所はわからず、妻には叱られ。それでもやはりだんだん気になりましてね。妻と、息子が元気で居てくれると信じてこの歳になりました。本当に、本当に息子に逢えて。ママさんのお陰です」
嬉しそうに、ちょっと涙を浮かべながら。
私は、その涙を見て何だか微笑む事しか出来なかった。
〈良かったですね〉そんな言葉で良かったのかもしれないけれど、この場では何となく言葉が軽く感じて、私は言いたい言葉が見つからなかったからだ。
だけど、
「親父が、ママさんを見たいし、お礼が言いたいからって連れて来ました」
そう言った彼の言葉には
「ありがとうございます。嬉しいですよ」
と、答えていた。
すると、
「あ、ママさん、カップは私はあの淡い紫色で、親父は緑色でお願いします。な。」
そう言って彼はお父さんを見て、私を見て言った。
---〈な。〉って、お父さんの好きな色を知っているかのように。いえ、知っているんだよね。
すると、お父さんも笑って頷いていた。
「はい。わかりました。少々お待ち下さいね」
カウンターからは彼の姿、顔も見える。だけどお父さんの姿は後ろ姿。顔はちょっと見えづらい。だけど、楽しそうに話す彼の顔から、きっとお父さんと楽しく話して居るのがわかる。
昨日の彼の雰囲気からは、まったく違う姿。笑顔が本当に微笑ましい。
親子なんだね。
どんなに月日が過ぎても、やっぱり何かが繋がっている。若さゆえの強がりや拘りは意地を張っていたら、きっと時間と共に何故か反省や後悔にさえなってしまう。
更には、それを認めたくない頑固さがいつまでも引きずって、最悪には永遠に交わる事が出来ずにわだかまりだけが残る事もある。
若さゆえの角張りも、月日の中で丸くなればいい。
角張っている時は、けして格好いいものではない。だけど、角張ってみたい時もある。それは仕方ないとしても、やはりいつかは丸くなって欲しい。
角張っていたら痛くて近寄れない。丸くなって見るといろいろ寄ってくるし、いろいろ見えて来るから。
私は、淡い紫色と緑色のコーヒーカップにコーヒーを入れ、同じ色のコースターを持ってテーブルに行った。
「お待ちどうさまです」
私が、コーヒーを置くと
「ママさんも良かったら一緒にどうですか」
そう彼が言った。
嬉しい。だけど、何だかお邪魔なんじゃないかとも思ってしまう。彼も、彼のお父さんも私を迎えてくれているのはわかるけど。
やっぱり、あまりの二人の笑顔が逆に私を拒ませる。
「あの」
「息子から聞いてます。ママさんも是非ご一緒に」
お父さんも優しく言ってくれた。
すると、
カランカラーン。
ドアが開いた。お客さんが入って来たのだ。
「ありがとうございます。嬉しいですがお客さんがいらしたので」
私は何だか、ちょっとホッとして二人に言った。
「そうですか。ちょっと残念ですが」
そう言ってくれた。
私は、今来たお客さんに感謝した。
「ゆっくりして行って下さいね」
「あっ、いらっしゃいませ」
そう言って、私はカウンターに戻り今来たお客さんを迎えた。
カウンターでお客さんにコーヒーを入れながら、彼達を見ると本当に楽しそうだった。私は、それだけで嬉しく満足だった。
あまりお客さんの中に入り過ぎてもいけない。
もちろん、入り過ぎる時もあるけど。
それから二人は1時間ぐらい居たかな。
帰り際にこう言った。
「ママさん、ありがとう。また来るね」
「本当にありがとうございました。私はそんなに家が離れてませんから、また寄らせて貰います」
そんな言葉が私には本当に嬉しい。
「はい。お待ちしてます。ありがとうございました」
これから息子さんを見送りに行くのだろうか。
何だろう。今日は何だかそっと見守って居たかった。いろいろ話したい時もある。だけど今日の親子には。
また来る時があったら、ゆっくり話したいなと。
親子の後ろ姿さえも、ほんわか温かく感じた。
私は、お客さんが待っていたので店に入った。
すると、カウンターに居たお客さんに
「親子さんですかね?」
と聞かれた。
「はい」
私はただそう言った。
「いいですね。羨ましいですね」
そうお客さんは言った。
このお客さんにあの親子の姿がどう映ったのかはわからないけれど、少なくても羨ましい親子だったのだろう。
ちょっと私は、カウンターのお客さんと世間話をしながら、またお客さんにコーヒーをご馳走になった。
お客さんの名前までは、聞いたり聞かなかったりだけどお客さんの顔は覚えている。たぶん。
お店は、私のホッとする空間。
お客さんにとってもホッとする空間になって貰えたらといつも思っている。
今日は快晴だけど、また雨が降る。梅雨が明ければ暑い夏が来る。
それでも、ホットコーヒーのみのカフェじゃ、どうなんだろ。
そう思ってみても、やっぱりホットコーヒーのみかな。
アイスコーヒーを出そうかな。
暑くなったら考えようかな。
うふふ。
ちょっと、微笑んでみた私だった。
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🌈☕いらっしゃいませ☕🌈コーヒーだけですが、ゆっくりして行って下さいね☘️☕🌈