初めてのお客さんにちょっと戸惑う時♡《ママさんに逢いたくて来ました》って言われても---♡〈カフェ64咲希4*音夢1前編〉
いつの間にか風が冷たくなった。
秋はいつ来たのか。そんな感じに訪れた秋も、いつの間にか更に風が冷たくなった。
真夏の熱い日射しから、太陽の暖かさに感謝したくなる季節。
日本という国は、紅葉という素晴らしい景色が見える。
人々はその艶やかなキャンパスの彩りを、楽しみに秋を迎える。
新しい葉を春につける為に、冬の前に葉を散らす。
その前に鮮やかに彩る葉。
--- 凄いな、自然って。
そんな事を思っていると、ドアが開いた。
カランカラーン。
ん。
初めてのお客さん。若い女の子。
ショートカットの小柄な、ジーンズにダボッとしたダークグリーンのトレーナーを着ている。
「いらっしゃいませ」
私がそう言うと。
「こんにちは。待ち合わせなんですけど、いいですか?」
そう、女の子が言った。
「どうぞどうぞ、お好きなお席に」
私は、可愛い女の子を見ると何だか微笑ましく思う。何故なのかはわからないけれど、微笑ましく思ってしまう。
私が言うと、女の子は当たり前のようにテーブル席に行った。
私は、おしぼりと水の入ったグラスを持っていくと、
「あの」
そう言って、カウンターの奥の棚を見出した。
私は、ちょっと不思議に思ったけれど、とりあえずおしぼりと水の入ったグラスを置いた。
「いらっしゃいませ。コーヒーしかないですよ。コーヒーにしますか?」
すると
「ママさん。橙色のコーヒーカップでお願いします」
そう、女の子が言った。
「えっ」
初めて来たお客さんだけど、カップの色を指定して来た。
コーヒーしか無いのは、看板見ればわかるけど、七色のコーヒーカップがある事は入らなきゃわからないし、初めてなら指定はあまり突然にはしない。
「ママさん。私、ママさんに逢いたくて来たんですよ。コーヒーも美味しいって」
「えっ」
また、同じ言葉で返した。
女の子は、ちょっと意地悪っぽく優しく微笑んだ。
「私に?。逢いたくて?」
「はい」
女の子は、そう言ってまたニコッと笑った。
そして私も、無理矢理ニコッと笑ってみせた。
「ありがとう???」
そのちょっと不思議そうな困ったような私の姿に、女の子はまたクスクス笑っている。
〈どうして?〉と聞けばいいだろうけど、何故か言葉が詰まってしまう。
「お待ち下さいね。コーヒー入れて来ますね」
そう言って私は、カウンターに戻った。
コーヒーを入れながら、ちょっと考える私。
ニコニコしながら窓の外を見ている女の子。
何だか、開店して初めてのお客さんだった〈咲希〉ちゃんを思い出す。あの時の咲希ちゃんは涙を溢していたけど。
私は、言われた橙色のカップに入れて、コーヒーを持って行った。
同じ橙色のコースターと。
そして、
「お待ちどうさま」
そう言ってテーブルに置くと、
「ありがとう。ママさん」
そう言って、またニコッと笑った。
女の子は可愛いけど、何だかちょっと不気味にさえ思ってしまう。
--- どこかで私を見たのかしら?。
私に逢いたくて来てくれるのは、凄く嬉しいけど初対面でと言うと戸惑うものだ。
「ゆっくりして行って下さいね」
私は、そんな事しか言えなかった。
--- 私って、意外にひねくれ者?。照れ屋?。
そして、カウンターに戻ろうとした時、またドアが開いた。
「いらっ」
「咲希、遅いじゃない」
--- えっ。あ。
咲希ちゃんが入って来た。
待ち合わせって、咲希ちゃんとだった。
--- あらま。
女の子も言わないから、私は安堵感からクスクス笑ってしまった。
「もしかして、咲希ちゃんと、待ち合わせだったの?」
私が女の子に聞くと
「はい。咲希が秘密って言うから言えなくて、ママさんも戸惑ってたよね。みんな咲希が悪いんだからね」
「ごめん、ごめん。もっと早く着く予定だったんだけどね」
「ママさん、ママさんの事は咲希から聞いてたんですよ。だから逢ってみたくて咲希に頼んで連れて来て貰うつもりが、私が先に来ちゃって咲希が遅刻しましたぁ」
女の子はそう言って、また笑った。
「うふふ。なるほどね。でも、ありがとう。改めて嬉しいですよ」
私は、テーブルに向かってくる咲希ちゃんとすれ違いながらカウンターに向かった。
「ママ、私は桃色のカップでお願いします」
咲希ちゃんがそう言った。
私は、変なわだかまりが解けて、更に嬉しかった。
咲希ちゃんは、やっぱりジーンズにベージュのトレーナーをラフに着こなしていた。
私は、コーヒーを準備しながら、咲希ちゃんにおしぼりと水の入ったグラスを持って行った。
すると、咲希ちゃんが面白い事を話し始めた。
〈続く〉。
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🌈☕いらっしゃいませ☕🌈コーヒーだけですが、ゆっくりして行って下さいね☘️☕🌈