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【小説】二番目のシンデレラ -49-

ルークは、教室の机にひじをついて、窓の外を眺めていた。

見えるのは、グラウンドとは反対側の風景。木、山、空、以上。たまに鳥が飛んでいるくらいで、絵画を見ているのとあまり変わらない。

窓の外に向かって、深い溜息をついた。少しは暗い色にでもなるかと思ったが、相変わらず緑は輝き、空は澄んでいた。その眩しさに、また溜息がもれた。

正面に掛けられた時計を見ると、もうすぐ次の授業がはじまる時間だった。次の授業は歴史。ルークは教科書をとり出そうと、椅子にもたれて机の中に手を入れた。

急に窓の外が暗くなった。雲で太陽が隠れたのだろうか。そう思って、空を見上げると、大きな翼の先が見えた。同時に、声が響く。

大鷲おおわしだ!」

まわりの生徒たちが、いっせいに廊下の窓にけよった。ルークが目を向けると、砂ぼこりの旋風が見えた。

「かなり、でかいぞ」
「本物だ」
「気をつけろ」
「窓、閉めろ、窓」
「おい、誰か捕まってるぞ」

ルークは座ったまま、その様子を見ていた。大鷲のうわさは聞いたことがあった。どこからともなくあらわれて、えさになりそうなものを奪っていく。その両目が緋色ひいろだったことから、緋眼ひがんの大鷲とよばれていた。

噂の大鷲が本当にいたことには驚いた。けれど、みんなのように、わざわざ確かめに行くほどでもなかった。それに、いまは、そんな気分ではない。

教室の全員が窓際に集まる中、ルークは自分の机で変わらず肘をついていた。何度目かの溜息をついたとき、アーサーが勢いよく走ってきた。教室の前の扉から、ルークに目を合わせる。

「ルーク、ミチルさんは?」
「えっ」

頭が真っ白になった。鼓動が速くなる。二限が終わったとき、ミチルはグラウンドの前に座っていた。そのとなりを通って教室にもどった。目も合わせずに、そこに残してきた。それから――。

ルークは、椅子を倒して立ち上がった。教室を飛び出すと、人とぶつかるのも気にせず、廊下を全力で走った。

ミチルの悲しそうな横顔が、脳裏をよぎる。ルークは、こぶしを握りしめた。

階段横の扉の前で急停止する。ガタガタと音をたてる扉を押した。旋風が扉を押し返す。ありったけの力で、扉を押し開いた。

砂ぼこりに目を伏せる。おさまると空を見上げた。

翼を開いた巨大な鷲。獲物を見るような緋色の眼。かぎ爪には捕らえた獲物。

「ミチル!」

かぎ爪の中のミチルは、意識を失っているようだった。


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大塚裕人:ゆう
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