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【小説】二番目のシンデレラ -0-

第三会議室では、ふたりが待っていた。ひとりは年配の女性。椅子にゆったりと腰をおろし、テーブルの上のモニターを眺めている。もうひとりは、若い男性。女性の後ろに立ち、同じようにモニターを見つめている。

第三会議室には、十二名が座れるようテーブルがコの字型にならべられている。それぞれの席には、小型のモニターが備えつけられていた。

「なかなか典型的ね」

窓際に腰かけた女性が、モニターを見ながら呟いた。

「ほんとうに、なかなか典型的ですね」

男性は、女性に同じ言葉を返した。
静かにモニターを見つめる。モニターからは、わずかに音がもれている。会議室の正面に掛けられた時計の音が、そのわずかな音をかき消していた。
女性は、時計に目をやった。

「そろそろかしら」

時計の針は、午前十時をさそうとしていた。

「そろそろですね」

男性は、ポケットから銀色の懐中時計をとり出してフタを開いた。文字盤を目にしたちょうどそのとき、懐中時計の秒針が長針と重なった。

午前十時から、第一会議室で選考会がはじまる。ふたりは、この第三会議室でその結果が発表されるのを待っていた。見ているモニターには、選考対象が映し出されている。最終選考まで残ったのは三名。その三名が、数十秒おきに代わるがわる表示されていた。

背後にある大きな窓から、雲間の光が射しこんだ。見ていたモニターが反射する。ふり向いた男性は、初夏の陽射しの眩しさに、目を細めた。

三階の高さの窓からは、みずみずしい新緑が見わたせた。背後にそびえる山々も、全面に緑をまとっている。

男性がカーテンを引こうかと窓の端に目をやると、そこには、ほこりっぽい暗幕だけが垂れ下がっていた。しかたなく、自分が立つ場所を変えて、モニターへの陽射しを遮った。

「決まりじゃないかしら?」

女性は椅子にもたれかかると、顔を上げて男性に視線を送った。

「おそらく、そうでしょうね」

女性の視線に応えて、男性は柔らかい笑顔を返した。

「しばらく、忙しくなりそうだわ」

女性は、窓の陽射しに向かって、大きくのびをした。

ふたりが見ていたモニターには、長い髪を後ろで結んだ、ひとりの少女の姿が映し出されていた。



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大塚裕人:ゆう
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