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【小説】二番目のシンデレラ -58-

「あなたの安全を最優先に考えた結果だと思うのよ」
「そんな……。もう少しなのに」

ミチルは、床に目を落とした。

「オレも行く」

ミチルが顔を上げると、ルークが真っ直ぐミチルを見ていた。

「ミチルが帰るなら、オレも行く。先生、言ったじゃないか。ミチルの叶えたいことが見つかるまで、そばにいろって」
「そうね」

グレイシーは、肩をすくめて微笑んだ。

「ミチルさん。あなたにひとつ、伝えたいことがあるの」
「はい」
「あなたが受賞した『不遇な末っ子大賞』なんだけどね」

そういえば、そんな賞を受賞していたことを、ミチルは思い出した。いろいろなことがありすぎて、記憶の片隅の本当の隅に、追いやられていた。そもそもはじまりは『不遇な末っ子大賞』だった。

「その賞はね、七つの星から最も強い守護を受けている『夜明けの七賢』っていう、とても偉い人たちによって選考されるの」

その『夜明けの七賢』という人たちが、どれほど偉い人なのか、ミチルには想像できなかった。けれど、七賢と呼ばれるほど、すごい人たちに選んでもらえたということは、素直に嬉しかった。

「ミチルさんは、『不遇』って言葉の意味を知っているかしら?」
「なんだか、残念な感じですけど」
「『不遇』っていうのはね、その人が持っている才能にふさわしい境遇を得ていないことを言うのよ」
「はい……」

そう言われても、ミチルにはピンとこなかった。確かに、まわりに比べれば、少し、いや、ほんのちょっと、いい境遇ではなかったかもしれない。

けれど、才能にふさわしい境遇かどうかは、わからない。そもそも自分の才能がなにかも、わかっていない。

「きっと、あなたが大賞に選ばれたのは、あなたの持っている才能が、それにふさわしい境遇におかれることを願ってのことだと、私は思うの」

グレイシーは、穏やかな笑顔を浮かべた。

その賞がどれほどすごい賞なのかも、どれほど偉い人が選んだのかも、叶えたいことも、才能も、ミチルには、わからないままだった。けれど、グレイシーが応援してくれている。それだけは、しっかりと受けとれた。

「アタシ、見つけます。アタシの叶えたいこと」

グレイシーは、ミチルの目を見て、優しくうなずいた。

「お昼すぎに、また来ますから。残念だけど、準備しておいてちょうだいね」

グレイシーは、そう言うと、部屋の前から立ち去った。廊下には、ルークだけが残った。

「ミチル」
「ん?」
「一緒に見つけよう。ミチルの叶えたいこと」
「うん」


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大塚裕人:ゆう
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