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【小説】二番目のシンデレラ -40-

「ルーク!」
外にいたのは、ルークだった。ミチルはカーテンを開け、続けて窓も開けた。

「大丈夫か?」
「こっちのセリフだよ」
「オレは心配ない」
「ほんとに?」
「うん。寝てたのか?」
「そうみたい」
「部屋に行っても大丈夫?」
「うん」

ルークは、寄宿舎の入り口にまわった。ミチルは窓を閉めて、ルークが来るのをベッドに座って待った。

しばらくしても、ルークは来ない。許可がないと来られないのだろうか。心配していると、入り口の扉がゴンゴンと鳴った。変な音だな、と思いながら扉を開いた。

扉の前のルークは、片手にひとつずつ、夕食ののったトレイを持っていた。両手がふさがっていたので、足でノックしたようだ。

「夕食、持ってきた」

トレイには、ポトフとパンが二切れのっていた。見るのと同時にミチルのお腹が、ぐぎゅうと低い音をたてた。ミチルは慌ててお腹をおさえたけれど、時すでに遅し。空腹なのは、ルークに伝わっていた。

「椅子、持ってくる」

テーブルにトレイをおくと、ルークは食堂から丸椅子をかりてきた。ふたりは、テーブルをはさんで座った。

「いただきます」

ミチルは、木のスプーンを口にはこぶ。ポトフは、野菜の甘くて濃い味がした。くたくたになった野菜は、口の中に入れると、噛む前にとけていった。大きなソーセージは、噛むとはじけて肉汁が口いっぱいに広がった。あっという間に、皿は空になった。

「さっき、先生が来た」

スプーンをおきながら、ルークが言う。

「グレイシー先生?」
「いや、アーサー先生」
「なんて?」
「明日、ミチルに学校を案内してくれって」
「大丈夫だよ、そんなの。ルークは授業があるでしょ」

「でも、ここでお前が知ってるのは、オレだけだから」
「そうだけど。勝手に見学するよ」
「そっちのほうが心配で授業どころじゃないよ」
「そっか。ごめんね」

「すぐに謝るのは、癖なのか?」
「そうだね。うん。じゃあ、ありがと」
「そっちのほうがいい」

ルークは、椅子を後ろに下げて立ち上がった。

「明日の朝、また窓のとこに来るから」
「うん」

ルークはふたり分の食器をトレイにのせて、部屋を出た。

「椅子、使っていいって」

ふり向いて、それだけ言うと、そのまま食堂に入っていった。

廊下には誰もいない。けれど、寄宿舎の外から何人もの声が聞こえてくる。授業が終わって、生徒たちが帰ってきたのだろう。

「知ってるのは、ルークだけか」

ミチルは部屋の扉を閉め、ルークが座っていた丸椅子に座った。


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大塚裕人:ゆう
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