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【小説】二番目のシンデレラ -46-

ボールをとった生徒たちは、間隔をとって並んだ。

アーサーは、広がった生徒全員に聞こえるよう声を張った。

「では、浮遊、空中停止、解放の順で移動させてください。はじめっ」

生徒たちはステッキをとり出し、それぞれのタイミングで自分の前においたボールに呪文を発する。

なかなかボールが浮かばない子もいた。中には、その場でボールが回転している子や別の場所に転がっていくのを追いかけている子もいた。

ミチルに近いところにいたマシューが、ステッキをまわして呪文を発した。

「チッカルポ」

マシューの前のボールが、ぷっかりと浮かんだ。三メートルほどボールが浮かんだところで、今度は別の呪文を発した。

「ノンサマモ」

すると、ボールは空中でぴたりと止まった。まるで、見えない台の上におかれているかのように動かない。しばらくすると、また別の呪文を発する。

「アイコフ」

ボールは、ゆっくりとおりてきて、マシューの足元で静止した。

「すげぇー。さすが、マシューだな」

ジェスが、マシューのボールを見ながら言う。マシューのまわりの何人かが、手を止めて見ていた。マシューは得意げに鼻をこすった。『どうだ』と言わんばかりの表情をミチルに向ける。

すごいと思うけど、そんな表情を向けられても、という思いをこめた笑顔をミチルはマシューに返した。視線はすでにルークを追っている。

ルークはマシューよりも二列奥にいるため、声は聞こえない。ステッキをまわすのが見えた。同時に、ルークのボールが弾丸のようなスピードで空に消えた。ルークは口を開けたまま、空を見上げている。

「おい、ルークがボールを消したぞ」

誰かが言う。辺りで笑いがおきた。
ルークは、再びステッキをまわした。

すると、今度は、同じスピードでボールが落ちてきたかと思うと、勢いよくグラウンドにのめりこんだ。グラウンドの土が四方に飛ぶ。小さな悲鳴とともに、まわりにいた生徒たちが、手をかざして逃げた。

一面、芝のグラウンドに、ぽっかりと丸い穴が開いた。

「またルークがボールを消したぞ」

数人の男子が、グラウンドの穴をのぞきこんでいた。手招きして誰かをよんでいる子もいる。ミチルも少し腰を浮かせて、様子をうかがった。

「ルークは、ボールを消すのが得意だな」

マシューが大声で言った。また辺りで笑いがおきた。


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大塚裕人:ゆう
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