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【小説】二番目のシンデレラ -36-

「魔法使いかぁ」

ミチルは、テーブルに両手をのせた。

「なりたいですか?」
「うーん。アタシ、なにがやりたいのか、わからなくて」
「やりたいことが、明確に決まっているほうが、珍しいと思いますよ」
「でも、ルークは変だって」

「ルークは、目標を持っていますからね。目標に向かって歩くのもひとつですが、探しながら歩くのだって、それはそれで楽しい、と私は思いますよ。思いがけないものを見つけたり、忘れていたことを思い出したり」

ガラガラと入り口の引き戸が音をたてた。ミチルがふり向くと、グラスののったトレイを持ったグレイシーが立っていた。

「お邪魔だったかしら?」
「いえいえ」

アーサーは柔らかい笑顔で、グレイシーを迎えた。グレイシーは、ミチルの前にグラスをおいた。ひとつはアーサーにわたし、もうひとつはミチルのとなりの席において、そこに座った。

「ミチルさん、アイスティーはお好き?」
「はい、ありがとうございます」
「あら、どうしちゃったの。かしこまっちゃって」
「なんだか、授業を受けてる気分になっちゃって」
「熱心に聞いてくれましたよ」

「まあ、すごい。はじめは、まったく信じてもらえなかったのにね」
「だって、突然、魔法使いって言われても」
「それは、もう、大変だったんですから」
「おばさん――グレイシー先生。それは、言わないでくださいよ」

「おばさんで構わないわよ」
「素敵な名前を聞いたので、名前でよばせてください」
「まあ、ありがとう」

グレイシーは、嬉しそうに笑顔を向けた。

「それで、どうして、空から降ってきたの?」

アイスティーをひと口飲むと、グレイシーはミチルにたずねた。ミチルは、ことの経緯をふたりに説明した。

「ミチルさんの叶えたいことが見つかるまで、ルークにそばでいてちょうだいって私が言ったから、反対にルークについてきたのね。で、もどってきたのが、空だったと」
「そうなんです」

「まあ、ルークにしては、上出来ね」
「どういうことですか?」


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大塚裕人:ゆう
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