【小説】二番目のシンデレラ -43-
寄宿舎から外に出ると、今日も青い空が広がっていた。
校舎に向かって歩いていると、後ろからふたりの男の子が走ってきた。ふたりは、ミチルの前で急停止する。二、三歩さがって、ミチルとならぶ。
示し合わせたかのように視線を合わせると、ふたりして、にやっと笑った。ミチルは首を傾げた。
そのまま何も言わずに、ふたりは走り去った。ふたりとも黒に臙脂のラインが入った制服だ。
ミチルは、自分の服をもう一度確認した。
「やっぱり、変なのかな」
「珍しいだけだろ」
校舎に入ると、何人もの生徒が、遠くからミチルのことを見ていた。教室の窓から顔だけ出している子もいる。
見えない光線をいくつもあてられているようで、なんだか居心地が悪い。ミチルはどこを見ていいのかわからず、天井を見上げた。
鐘の音が鳴り響く。始業の合図のようだ。廊下にいた生徒たちは、いっせいに教室の中に入っていった。廊下には、ミチルとルークのふたりだけになった。
ルークについて、大きく右に曲がった階段をのぼる。踊り場には肖像画、その次が鹿で、その上に馬。今日は順調だ。
三階、二階、一階の順に見てまわった。校舎は、グラウンド側の東棟と対面の西棟が、中央の廊下でつながっている。
第三会議室のある東棟は、会議室や特別教室、それに校長室や職員室で、生徒のいる教室はなかった。西棟が、生徒たちの教室だった。
西棟の二階の教室では、授業が行われていた。教室の前を通ると、ひとつだけ窓が開いていた。生徒のひとりが、ちらりとミチルに目を向ける。二階の生徒は、黒に青いラインが入った制服を着ていた。
「七つの惑星と七つの金属の関係については、前回の授業で説明した通りだが、今日は有名な『夜明けの七賢』について――」
ミチルが廊下で授業を聞いていると、廊下の先にいるルークが激しく手招きした。『早く来い』の合図だろう。
ミチルは、左右に首をふって拒否を試みた。ルークは、胸の前で手を交差させて、大きくバツを見せた。ミチルは小さく溜息をつくと、後ろ髪を引かれる思いで、ルークに従った。
一階に下りると同時に、また鐘の音が鳴った。一限が終わったようだ。黒に臙脂の制服を着た生徒たちが廊下に出てくる。
「ここが、ルークの教室?」
「うん」
ルークが歩きだそうとしたとき、体格のいい四角い顔の少年が、教室の入り口からあらわれた。
「よう、箒好きのルーク」
「マシュー」
ルークからもれた声を、ミチルはなんとか聞きとった。