
すごい知財EXPO事前登録者限定セミナー「IPランドスケープに必要なスキルと、それを発揮させるコツ」を聞いた備忘録
すごい知財EXPOで行われたセミナー「IPランドスケープに必要なスキルと、それを発揮させるコツ」において、IPランドスケープの専門家であるイーパテントアクティスの代表取締役社長の塩谷氏と、日本知的財産協会情報活用委員会の委員長である長田氏との対談を聞いたので、その内容と感想を書きたい。
この対談では、IPランドスケープに必要なスキルと、そのスキルを最大限に活用するための秘訣が議論されました。
すごい知財EXPOとは?
セミナー概要
近年、特許情報の収集・分析を戦略的に活用し、市場や技術動向を見極める「IPランドスケープ」の重要性が急速に高まっている。一方で、実務の現場では「どのようなスキルが必要なのか」「そのスキルを社内でどう活かすのか」といった疑問や課題を抱える企業も少なくない。
そこで今回の講演では、「IPランドスケープに必要なスキルと、それを発揮させるコツ」をテーマに、実際の企業活動で役立つ実践的なヒントを紹介する。多面的なスキルが求められる背景と、その全体像を概観しながら、スキルを強みに変えるためのヒントを紹介する予定である。ぜひこの機会に、IPランドスケープを活用する第一歩を共に踏み出していただきたい。
登壇者
塩谷 綱正 氏(株式会社イーパテント・アクティス 代表取締役社長)
長田 恵祐 氏(日本知的財産協会 情報活用委員会 委員長)
対談内容
対談内容を簡単に紹介します。
自己紹介
塩谷:イーパテントアクティスの塩谷です。知財情報のを組織の力に変えるコンサルタントとして、企業が知識を実際の行動や変化に繋げる支援をしています。
長田:日本知的財産協会(JIPA)の長田(情報活用委員会委員長)です。
情報活用委員会の変遷
塩谷:情報活用委員会は、2020年に名称が変更されましたが、その背景にはどのような理由があったのでしょうか?
長田:IPランドスケープが注目され始めたことや、企業価値向上に向けた知的財産情報の活用が求められるようになったことが背景にあります。検索だけでなく、幅広いテーマに取り組むようになったため、名称も「情報活用委員会」へと変更しました。
IPランドスケープ実現に必要な要素
塩谷:IPランドスケープを実現するために必要な要素を分解すると、どのようなものがあるでしょうか?
長田:専門知識はもちろん、ビジネスやマーケティングなどの経営知識も必要です。また、社内外とのコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、分析力、課題発見力など、多岐にわたる能力が求められます。知識に加え、巻き込む力や課題解決力、シナリオ構築力、そして粘り強さも重要です。
塩谷:スキルと成果を結びつけるには、分析結果を共有し、事業的な効果に結びつけることが重要です。
「事業的な効果」は、KPI設定も含め知財側からは設定は難しいですが、何度でも試みないといけないでしょう。
スキル発揮のためのステップ
塩谷:スキルを最大限に発揮し、成果に繋げるためにはどのようなステップを踏むべきでしょうか?
長田:まず、何のためにIPランドスケープを行うのか、目的を明確にすることが重要です。スキルを身につけることも大切ですが、目的を見失わずにアプローチすることを心がけるべきです。
塩谷:目的を明確にするためには、まず顧客(社内の関係部署など)の状況を把握し、彼らが何に困っているのか、どのような情報を求めているのかを理解することが重要です。
上村感想:私もこれを聞いて、市場情報だけでなく、社内情報を駆使し、お困りごとを俯瞰してみれる「社内リサーチ力」を業務で意識しようと感じました。
IPランドスケープのレベル
塩谷:IPランドスケープには、担当者レベルから経営者レベルまで、様々なレベルがあると思います。それぞれのレベルに応じて、どのようなアプローチが効果的でしょうか?
長田:経営層が知財を理解し、戦略に活用する意向があれば、トップダウンでのアプローチも可能です。しかし、一般的には、担当者レベルから地道に実績を積み重ねていく方が良いでしょう。
塩谷:下位レベルでの経験は、満足度は低いかもしれませんが、ノウハウの蓄積には非常に役立ちます。
刺さるIPランドスケープとは
塩谷:「刺さるIPランドスケープ」とは、どのような状態を指すのでしょうか?
長田:個人的には、次のアクションに繋がるものだと考えています。分析結果を見て、少しでも前に進むようなアクションが生まれれば、それは「刺さる」と言えるでしょう。
塩谷:情報が不足している箇所を特定し、その穴を埋めるような情報提供をすることが重要です。
長田:目指すべきは、相手が本当に必要としている情報を提供し、 解決に繋げることです。
ここで塩谷氏の穴を埋めるアクション=刺さるではなく、「ハマる」IPランドスケープを意識する必要があると感じました。
提案で終わらせないために
塩谷:提案だけで終わらせず、次のステップに進むためには、どのような意識が必要でしょうか?
長田:何のためのランドスケープかという目的を明確にし、分析結果を提示するだけでなく、相手に問いかけるような終わり方を試してみるのも有効です。「この分析結果から、どう思われますか?」と問いかけることで、相手の意見を引き出し、次のアクションに繋げることができます。
まとめ
塩谷:今日は、スキルとそれを生かすコツというテーマで議論してきましたが、相手がスキルを発揮できるような働きかけも重要ですよね。
長田:IPランドスケープの前に、まず知財情報の活用意義を理解・納得してもらうことが大切だと改めて感じました。
IPランドスケープの重要性
近年、IPランドスケープは、市場や技術動向を戦略的に把握するために不可欠なものとして、その重要性が急速に高まっています。IPランドスケープを戦略的に活用することで、企業はビジネスの成果につなげることが可能になります。
IPランドスケープに求められるスキル
IPランドスケープの実践には、多岐にわたるスキルが求められます。
以下は、セミナーの内容と塩谷氏の意見も踏まえた内容です。
知識
知的財産に関する専門知識
ビジネス、マーケティング、経営に関する知識
コミュニケーション能力
社内外の関係者との効果的な対話
相手が求める情報を引き出す力
分析力
目的 に応じた適切な分析
課題を発見する力
課題発見・解決力
事業の課題を明らかにし、解決策を導き出す力
巻き込む力
周囲の人や組織を巻き込む力
プレゼンテーション能力
分析結果を分かりやすく伝える力
シナリオ構築力
分析結果を基に将来の事業展開や技術戦略を描く力
粘り強さ
情報を収集し、分析を深掘りする姿勢
スキルを最大限に発揮させるためのヒント
IPランドスケープのスキルを向上させ、その効果を最大限に引き出すためには、以下のポイントが重要です。
目的の明確化
IPランドスケープを行う目的を明確にすることが重要です。
顧客が何を求めているかを理解し、顧客の立場に立って考える
段階的なスキルアップ
いきなり高度な分析に挑戦するのではなく、身近なテーマから始め、徐々にレベルアップしていくことが推奨されます。
担当者や開発部門など、身近な人々の課題解決から始める
関係者を巻き込む
分析結果を共有し、議論することで新たな視点やアイデアが生まれます。
知財情報を活用することで、どのようなメリットがあるかを理解してもらい、共感者を増やしていくことが大切です。
アクションにつなげる
IPランドスケープは分析して終わりではありません。分析結果を具体的なアクションにつなげることが重要です。
分析結果を基に、次のアクションを促すような問いかけをすることで、関係者の関心を高めることができます。
草、竹、松
IPランドスケープにも段階があり、下から上へとステップアップしていくことが大切です。
梅(身近な人のために働く):身近な人の気持ちは理解しやすい
竹(少し上の立場の人のために働く):梅からレベルアップ、階層をあげる
松(経営者のために働く):経営者の視点に近づくほど、相手の立場に立って考えることは難しくなるが、効果は大きい
刺さるIPランドスケープとは
「刺さる」IPランドスケープとは、アクションにつながるものを指します。ランドスケープの結果を受けて、次なる行動が生まれるようなものが理想です。ただ、刺さるよりも「ハマる」方が上手く行きやすいのではないだろうか?
まとめ
長田氏の生生しい話と塩谷氏のIPランドスケープへの冷静な俯瞰と分解がとても刺激的なとてもよいセミナーでした。
実際、IPランドスケープを推進する上で、多くの悩みを抱える実務者は多いと思います。今回出たエッセンスは、組織、学習、コミュニケーションに焦点を当てており、「ハード」スキルではなく、「ソフト」スキルについてでした。
多くのセミナーを見ると、ハードスキルに目が行きがちなところがありますが、まずは「ソフト」な部分に目を配らせるのが実は重要なのだと思えたセミナーでした。
以上