アフリカのサミット「キリマンジャロ」で人力タクシーに乗る#1
「今すぐ下山しろ」
サミット直前でメディカルスタッフからストップがかかった。それもそのはずだ。体温は38.3℃、PaO2は60Torr(酸素飽和度90%)を切っており、意識は朦朧としていた。
2022年6月、私は7年間務めた会社を辞め、アフリカ東海岸に位置するタンザニアに来やってきた。何か新しいことに挑戦したなった。そのうちの一つがそう、7大サミットの一つであるキリマンジャロ登山だった。
昨年、30歳の節目で長期休暇を取り、御嶽山に登ってから、登山にはまった。グッズも揃え、雪山にも挑戦した。昨年9月から4ヶ月で20山以上登った。
高度順応のため、今年5月末には、塩見岳の雪掻きボランティアで塩見小屋に泊まり込んだ。
登山で体調を崩したことはなく、体力もそれなりに自信があった。(3月の東京マラソンはサブスリーだった)
7月頭、タンザニアの旧首都ダルエスサラームで1ヶ月のボランティアを終え、キリマンジャロ空港に飛んだ。
飛行機からはキリマンジャロがばっちりと見え感動した。
富士山とは比べ物にならないほど高い、そのことがよく分かった。
これからあの山に登ると思うと、心が震えた。
キリマンジャロ空港に到着するとガイドのHunterが出迎えてくれた。知り合いの紹介でかなり格安でツアーに応じてくれた。一部日本から持っていけなかった寝袋、シューズ、その他装備はその日にレンタルした。結構借りた気がしたが、5000円程度でかなり安上がりだった。準備は完璧だった。あとは明日を迎えるだけだ!
余裕があったので夜はHunterと夕食に出かけた。
登山ルートはマラング、マチャメ、レモショ、ロンガイ、ウンブウェと主要なものが5つあるが、私は山小屋があるマラングを選んだ。海外からのツアー客全体の9割がこのルートを選択するメジャールートだ。1日ごとの約1000m高度を上げ、4日目の深夜にサミットにアタックする山行となる。(高度順応日を1日増やすケースもある)
登山初日、起床時間8時。遂にこの日がやってきた。
と言っても、今日はハイキングデーだ。高度2000m弱から2700m地点のマンダラハットまで歩く3時間ルートだ。ウォーミングアップのようなものだ。
ホテルで朝食を済ませ、少し休んでいると、登山パートナーが車で集まってきた。
ガイドのHunterの他、荷物運びのポーター、食事やサポートをしてくれるウェイター、あとは調理役のクック、計5人が私と一緒に登ってくれることになっていた。
メンバーが揃ったため、マラングゲートに向かった。Moshiの中心街にあるホテルから約2時間でゲートに到着した。ゲートは登山客で溢れていた。
#2へ続く …