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お棺に入れるもの
母には90歳を過ぎた叔母がいます。
お子さんのいない叔母夫婦は、姪にあたる母をとても可愛がってくださり、母も、叔父さんが亡くなられた後は、よく叔母さんを訪ねていました。
その叔母から「色々とを伝えておきたいことがあるの」と電話。
何かあった時のことを母に頼んでいた叔母にとって、母にお願いできない今の状況は不安なのだと思います。そんな気持ちを少しでも取りのぞけるといいなと思い、ちょっと遠くの町まで叔母さんに会いに行くことにしました。お腹の調子がよくないことは内緒にして…(先月末、ちょうどお腹の痛い頃でした!)
叔母さんの住むマンションに着き、部屋に入った私は驚きました。
部屋の中に「物がない」のです。
これが、お終いに向かう準備をしている人の住まいなのだなと、心がぎゅんとなり苦しくなりました。
***
叔母さんは90歳を超えてもお元気です。活動的で、趣味もあって、イキイキなさっています。そんな叔母さんが、自分で自分のお終いに向けて、こんなにも日々、整えたり、考えたり、全力で向き合っていたのかと愕然としました。叔母さんみたいに歳を重ねられたらいいな、と思っていた、私の軽く浅はかな考え方が、本当に恥ずかしかったです…
***
押し入れの中にも、クローゼットにも、ほぼ何も入っていなくて…
大きな家具はアンティークの本棚と食卓くらい。
一緒に住んでいた叔父さんの持ち物も処分したとのことで、残っていたのはハーフコート1枚。「これは私のお棺の中に入れてほしいの」とのこと。
ハーフコートをたたみなおして収納ケースに収めている叔母さんの背中を見つめながら、涙が出そうになるのをこらえました。叔父さんへの大きな愛情を感じたから。
自分の身体一つになった時に、共に在りたいと選ぶものが、きっと、その人にとって本当に大切なものなのでしょう。
私だったら何を選ぶだろう?
何と共に在りたいのだろうか?
最近、ふとした瞬間に、そんなことばかり考えています。