サンショウ~「気持ちの切り替えスイッチ」を押してくれる日本最古の香辛料~
秋が深まり、ここ八ヶ岳の木々も少しずつ色づいてきました。
さて今日は、この季節、ひときわ目を惹く真っ赤な実をつけた樹木、サンショウについてです。
サンショウというと、春の木の芽和えや、かば焼きなどにかける粉山椒が思い浮かぶ方は多いと思いますが、サンショウは外用もできる生薬です。
利用方法をお伝えするその前に。
「我が家のサンショウは少しも香らない」という声を聞くことがあるのですが、その木はもしかしてサンショウではないかもしれません。
サンショウの見分け方は簡単で、棘の付き方で見分けることができます。
サンショウの棘は、一つのところに左右対称に付いています。
サンショウに対して「イヌザイショウ」という名前の樹木があります。
見た目はサンショウにそっくりなのですが、棘が一つのところから左右対称には出ておらず、互い違いに棘が付いています。
イヌザンショウは、あのすっきりとしたサンショウの香りは全くせず、薬効もありません。
サンショウはミカン科なので、ミカンのような柑橘系のさわやかな香りがしますね。
ところで、「イヌ」と名の付く植物はたくさんあります。
イヌザンショウ
イヌサフラン
イヌエンジュ
イヌツゲ
イヌビワ
など。
なぜ「イヌ」なのか。
これは諸説あるのですが、「犬」ではなく「否(いな)」から来ているという説が有力な気がします。
サンショウに対してイヌザンショウ、サフランに対してイヌサフランというように、元々特定の植物があって、「その植物ではない」という意味です。
なんだか可哀そうな名前の付け方ですね。
さて、サンショウの薬効について
使う部分は、今ちょうど赤くなっている果皮です。
赤く熟したサンショウの果実を採取して乾燥させ、乾いたら叩いて中の黒い種子を出します。
果皮2~5グラムを300ccの水で全体量が半量になるまで煮出したものを、一日三回食間に服用すると、消化不良やおなかにたまったガスに効果があると言われています。(サンショウは刺激が強いので、激しい病気の場合は使用を避けてください)
また、上記の煎じ液は水虫に塗布すると効果があると言われています。
ここまでは一般的に言われている薬効です。
以下は私が感じるサンショウについてです。
もしも身の回りにサンショウの木が生えていたら、ぜひ指先で葉っぱを揉んで香りをかいでみてください。
なんだか気持ちがウジウジとしているとき、リフレッシュしたいときなど、
気持ちの切り替えスイッチを「パキッ」と押してくれるような香りを感じます。
縄文時代の遺跡からは、サンショウの実が付着した土器が見つかったそうです。
かつて「縄文銀座」であったと言われているここ八ヶ岳では、サンショウの木はそこここに自生しています。
サンショウは日本の最古の香辛料であると同時に、かつてここに住んでいた人たちもリフレッシュしたいときはその香りをかいでいたのかもなあと、サンショウの葉の香りを嗅ぎながら縄文時代に思いを馳せてみました。