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はじめに 私はフリーランスに「なった」のか、「なるしかなかった」のか。
私は、フリーランスのライターをやっている。そうすると、SNSの広告がパーソナライズされて、「フリーランスになって自由な働き方を実現しよう!」みたいなもので埋め尽くされる。何か違う。ずっとそう思ってきた。
今の仕事は好きだけど、フリーランスになりたかったわけじゃない。フリーランスになるしか、私が生きていく道はなかった。
フリーランスをやっている人々がよく口にする、「おすすめはしない」という言葉。私もその通りだと思う。フリーランスじゃなくても生きていけるなら、フリーランスにならない方がいい。
でも、その言葉を転がす度に、私は思っていた。私は、フリーランスになるしかなかった。そうするしかなかったのに、インボイス制度について抗議している人々を、「フリーランスになったのは自己責任でしょう」と突き放す声も多く見られるのが現実だ。
「フリーランスはいいよ」と言うことはできない。リスクの大きい選択だから。でも、「フリーランスになったのは自己責任だ」と言われるのは納得がいかない。
私を労働から排除し、崖まで追いやったのは、間違いなく社会なのだから。
燻るこの思いに火をつけたのは、ある障害者の方が、「自分は雇用されることができないから、こうするしかなかった」と自身の起業理由を語っている記事を読んだことだ。
私自身のことと重なって、その方の記事を読むのが辛かった。その方は事業に成功されていて、記事の内容自体は前向きなものなのに、その方が進路を考える際にあまりにも障害が多くを占めていることが、頭から離れなかった。もしもその方に障害がなかったら、進路の選択肢はもっと多かったのかもしれない。
生計を立てる手段としての「働く」の選択肢が、本人の能力以外のところで、狭められてしまう人がいる。それは、果たして自己責任だろうか。絶対に違う。
この連載では、働く上で選択肢を狭められたと感じている人々にお話を聞いて、多様な人材がそれぞれの能力を発揮できる社会を作るために何が必要なのか、考えていく。
繰り返すが、「働き方は、完全に自己責任」ではない。本人が選んだ部分も、いくらかはあるだろう。大人なのだから、自分の人生の責任は自分で取る必要がある。でも、社会に”選ばされた”側面がまったくないなんて、言わせない。
人の選択に、社会は必ず関係しているのだから。
連載「多様な人材が能力を発揮できる社会を考えるインタビュー集」は不定期に更新していきます。「労働の選択肢を狭められたと感じている」方(現在の仕事に満足している/いないは問いません。)で、ご協力を考えてくださる場合には、雁屋優までご連絡いただけると幸いです。取材に関する疑問や不安をお伝えいただき、納得してもらえる形で取材、執筆させていただきます。
雁屋優 Twitter:@yukariya07
こちらのDMまでお願いいたします。
(2022年9月11日加筆修正)
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