新生児期から乳児に多いRSウィルス感染症〜受診のタイミングと注意したい呼吸器症状〜
はじめに
【RSウィルス】という感染症をご存知でしょうか?
RSウィルス感染症は、全年代に感染する病気ではありますが基本的に新生児期〜乳児期にかけて感染することによって、重症化した場合には命にまで関わってしまうこともあります。
「普通の風邪だと思っていた」というママが大半で、受診のつもりで来たら緊急入院になってしまった…。ということもあります。
ですが、あまりこの病気について実体験もふまえ記載されているものが少ないので
実例を含めて、この記事を参考に受診のきっかけにしてもらえれば幸いです。
〈このnoteは『COTETE Labo』掲載記事です〉
そもそも細菌とウィルスって何が違うの?
細菌とウィルスは、そもそも構造や大きさから違います。
細菌は一般的に生物の基本である細胞壁・細胞膜・DNAや各種タンパク質などで構造されています。
一方ウィルスは細胞構造は持っておらず、遺伝情報であるDNA・RNAがウィルス内部にあるのが一般的と言われています。
要は細胞は環境が整えば自分で生きられますが、ウィルスはそれができません。
大きさはどちらも小さくて肉眼では見えません。しかし、大きさでいうと、明らかに細菌が大きくウイルスの方がとても小さいのです。(ウィルスは細胞の1/1000〜1/100)
治療についても違いがあり、細菌は生物に近いので抗生物質が効果的ですが、ウィルスは生物というより物質に近いです。そのため、抗生物質での治療ができません。ですので、そのウィルスによる症状を抑えるための、対処療法しか行えないのです。
RSウィルス感染症とは
RSウィルス感染症(respiratory syncytial virus infection)とは、RSウィルスに感染することで起こる呼吸器の感染症をいいます。
RSウィルスは世界中にあるウィルスであり、生後2歳までの間でほぼ100%一度は感染しているとされています。それほど、感染率の高い病気といえます。
どのように感染するの?
感染経路としては、RSウィルスに感染している人のくしゃみや咳、会話で感染する飛沫感染(ひまつ感染)
感染している人との握手や濃厚に接触することでの接触感染で感染します。
どんな症状があるの?
R Sウィルスに感染すると、およそ4〜6日の潜伏期間を得て発熱・鼻汁などの症状が現れます。
そのうち、7割が軽症で「通常の風邪」と同じような鼻汁や咳などの症状のみで軽快します。しかし、残りの3割が咳の悪化や呼吸器症状・喘鳴・呼吸困難症状などが出現し重症化します。重篤な場合には、無呼吸発作・急性脳症などが起こる可能性がありこれらの合併症を引き起こす場合、大人になってからもその合併症がつきまとう可能性が高く、注意が必要です。
症状は5〜7日目でピークになるとされており、その間に症状が悪化するケースが多いです。
子どもの様子は?
軽傷のケースであれば、通常の風邪とほぼ変わりません。
ただ、周りのお子さんや兄弟には感染しないように
配慮して過ごすようにしてください。
もしRSウィルスと診断されて、その時は自宅で様子をみるようにいわれても
下記のような症状がみられる場合にはすぐに病院受診をされることをお勧めします。
これらの症状がある時には、早めに病院へ受診してください。
治療方法は?
治療方法としては、対症療法になるため基本的には
・酸素投与
呼吸が苦しくならないようにするために、酸素マスクなどを使用し
酸素がしっかりと身体に取り込めるように呼吸を助けます。
・輸液管理
RSウィルス感染にて重症化した場合には、鼻汁や咳などで息苦しい状態が
続くため、食欲がなくなったり食事をする時にむせ込んで呼吸が悪くなって
しまうこともあります。身体に無理に負担をかけなくてもいいように
点滴などの輸液で水分を入れてあげます。
・呼吸管理
鼻汁・咳なども続き息苦しい状態になりやすいです。
呼吸が楽にできるように、痰を出しやすくする薬や咳止め、吸入・吸引を
行い、なるべく呼吸が辛くならないようにします。
実際に重症化したケース
私が経験したRSウィルス感染症の重症例をご紹介します。
あくまで私が経験した例ですので「必ずこうなる」というわけではありません。
ただ、このような事例もあるので注意をしてくださいね。という意味で
私の経験をお伝えし、RSウィルスの重症化予防に繋げていただきたいと思い
ます。
新生児期の重症例
新生児期のRSウィルス感染で入院していたAちゃん。
当時はまだ生後20日に満たない女の子でした。
それまでは治療として酸素投与をおこないミルクも飲めていたのですが
急に呼吸が悪化しました。
酸素の値を示す数値が急に上がらなくなってしまったため、
吸入や吸引を行ないつつ酸素マスクの酸素量を上げていましたが
それでも酸素の値が改善せず、大人ですら「苦しい」と思う数値を示し
そこからなかなか改善しませんでした。
新生児期は特に、酸素がとても必要で
酸素が悪くなってしまうと呼吸も止まってしまう可能性も出てきます。
そのため、すぐに呼吸管理ができるICUに異動し
必要な呼吸管理と治療を行い、その後呼吸状態が改善しました。
そのままの呼吸状態であれば、命にすら関わる状況でしたが
早期の治療ができたので無事に退院するまでに回復したのです。
正しい知識と早めの受診
ついつい、毎日が忙しいので
風邪気味の子どもの様子をみても「このくらいならいいか」と
病院受診を後回しにしてしまいがちかもしれませんが
風邪症状のなかには、このようなRSウィルスも潜んでいます。
子どもの様子をみつつ
「いつもより元気ないな?」
「鼻水ずっと続いてる?食欲ない?」
「夜、寝るのが苦しそうだな」
など、少しの「?」があった場合には
早めの受診を行なって、必要であれば感染症など調べてもらっても
いいと思います。
子ども本人から訴えることはできません。
日々の様子をみて必要であれば
早めに受診や治療をサポートしてあげてくださいね。