喧騒を見下ろすロータスタワー
ミャンマーから帰国後、息継ぎするような短い時間を経て家を出る。
何十年ぶりかの成田エクスプレスに乗って、変わらない快適さに感動をした。
成田空港。羽田と比べるとさすが日本の玄関口は健在で、年季は入っでいるものの、敷地の広大さに驚くだけでなく、なんだか自慢したくもなるような気持ちにもなった。成田はすごいんだよ、と。
渡航前、なぜかオンラインチェックインができずカウンターに並ぶ。帰国する国の人が大半なんだろうと想像していたが、思ったよりも日本の観光客らしき人たちが多かったのに驚く。
「私たち、初めてこの国に行くんです」
カウンターに並んでいると、ふいに後ろにいたご年配の夫婦が声をかけてくれた。
「あぁ、そうなんですね。どの辺りを訪れる予定なんですか?」
職業柄、人から話しかけられると会話のキャッチボールをしてしまう。
ご夫婦はリタイア後、年に一度海外旅行へでかけている、前回はイタリアにいったこと、静かだがニコニコされている旦那様は趣味で英語を習っている、現地の古い建造物を見るのが楽しみなど、順番を待っている間たくさんお話を聞かせてもらい楽しかった。
チェックインを済ませ、手配していたポケットwifiをピックアップし、羽田で時間をとられた保安検査へ素早く移動すると、人の列は全くなく、非常にスムーズに通過ができた。
時間に余裕ができたので、免税店を見て回り、大きなガラス窓から飛び立つ飛行機を見たりして過ごしていた。喫煙所でなんとなく煙をくゆらせていたら、隣りにいた台湾の男性たちがスマホの動画を音量つきで視聴をしだした。
これから国に帰るのだろう。待ちきれなくて国の空気を動画から感じ取ろうとしているんだなと思っていたら、
「あなたも台湾にいきますか?」
と、日本語で突然声をかけられた。おそらく動画の音量にびっくりしてその方向へ視線をやったので、向こうもなにか気を遣って声をかけたのかもしれない。
聞くと日本で働いていらっしゃる台湾の方で、久しぶりに実家に帰るのだそう。
話しかけた人と一緒にいた人は日本語を話せなかったけれど、長く国を離れていたのか国が恋しそうな表情をして、動画を見ていたのが印象的だった。
しばらくして搭乗手続きが始まり、飛行機へ乗り込む。機内は比較的空いていて、窓側の席をとっていたが隣は空いたままで出発し、とてもテンションがあがった。いつでもトイレにいけるじゃん、と。
道中快適な姿勢で過ごすことができ、また長いフライトもいい感じに睡眠をとることができて理想的なフライトであった。
9時間後、雲が薄く覆われる中飛行機は残業から帰宅したような滑り込み方で、日暮れ前の国にランディング。
やってきました、スリランカです。
スリランカもミャンマーと同じく、一度訪れたことがあり、とにかくずっと激辛のカレーを食べていたことと、山岳地帯の美しさ、海岸線の絶景が今でも記憶に残っている。
空港に到着。入国を終え、すぐさまタクシーカウンターでタクシーを手配してもらい出発。
入国後、イミグレの人、保安検査の人、両替所、タクシーカウンターの人など、英語が堪能でコミュニケーションがとてもスムーズだった。
イギリス統治時代の名残なのか、こんなに会話に苦労しなかったのはとても嬉しかった。
タクシーのお兄さんも寡黙ながら、
「日本の車はなにが流行ってるんだ」
「スリランカは初めてか」
「観光にいくならキャンディやゴールがいいぞ」
など、英語で話してくれる。これは隠れた英会話スポットではないか。
タクシーカウンターで交渉をした結果、空港から下道でホテルまでいったのだが、タクシーのお兄さんは急いでくれていたのか、早く家に帰りたかったのか、冷や汗がでるくらい一般道を「スピーディに」進んでくれた。
途中前に躍り出たタクシーやトュクトュクなどもおかまいなしにパッシング、クラクションで追い散らし、なんだかものすごい道中であった。
すごい運転するなぁ、なんて思いつつ窓の外から反対車線に目をやると、片側二車線のスペースに入らんと、追い越そうと、割り込もうと、道路を走る車たちが会話でもするかのようにクラクションを鳴らしまくっていた。
すでに外は暗くなり、明かりの乏しい街を進んでいくと、遠くに巨大な京都タワーよろしくロータスタワーが鮮やかにライトアップされていた。
「あそこにはレストランもあるぜ」
目を輝かせてタワーを見つめる僕に、タクシーのお兄さんは数年前にできたこと、コロンボもだいぶきれいになったことなど教えてくれた。
空港から約1時間後、ホテルに到着。
大きなそのホテルでは、以前系列店で爆発騒ぎがあったらしく、ゲートでは爆発物チェックが行われていた。
ヤンゴンに数日前までいたことを忘れるくらい、ホテルは豪華で、受付の人もラウンジの人も、ポーターの人もレストランの受付の人もとにかく気さくに声をかけてくださったのが心地よかった。
これからコロンボを拠点に滞在します!