アニメの内容は忘れたけれど【昔からぼくの”よくない”ところ】
小学校の頃、念願の利用カードを手に入れたぼくは、
市立図書館に入り浸っていた。
本ももちろんだが、図書館に行けばVHSやLD(レーザーディスク)で、
映画やアニメが見放題なのだ。
その日は、アニメ「スカイキッドブラック魔王」のLDを観ることにして、
受け付けでLDと利用カードを差し出した。
「表にして出してもらえますか?」
カウンターに両手をついたスタッフのおばさんが、
ため息をついたような顔でぼくに言った。
ぼくが出したカードは、
バーコードの書かれていない裏面を向いていた。
昔からぼくのよくないところだ。
ボーッとしてるからなのか、気が利かないからなのか、
小学校高学年にもなって、こういうポカをよくするのだ。
無事カードを表向きにし、席についたが、
こうなるともう自己嫌悪は止まらない。
「なんで、ぼくはこう人として当たり前のことができないのだろう」
「そういえば、この前もこんなことを注意されたな」
「なおしたいけど、また同じようなミスをして後から後悔するんだろうな」
ところで、自己嫌悪も少し経ったが、アニメの方は一向に始まらない。
我に返って見た真っ青なテレビ画面には、
LDが裏返しになって挿入されている旨が書かれていた。
子ども心に気まずい気持ちで、先ほどの女性スタッフにそのことを伝えた。
薄笑いを浮かべた彼女が、一言もなく、
LDを直しに行った姿を、ぼくはいまだに忘れられない。