『どうなる?日本社会のDXとデジタル庁~時田隆仁×南壮一郎×村井英樹×山口明夫×平将明』
週末レビューの”読んだ本・観たもの”で紹介するか悩んだが、これを観て、この一週間(正確には二週間)考えさせられるものが多かったので、個別取り上げて書きたいと思う。
この動画は、以下4名の方々が、日本のDXにおける課題を整理し、方法論を議論する、なんとも豪華な対談だ。
時田さん(富士通 代表取締役社長 兼 CDXO)
南さん(ビジョナル 代表取締役社長)
村井さん(衆議院議員)
山口さん(IBM 代表取締役社長執行役員)
平さん(衆議院議員)
※肩書きは登壇当時のもの
その中でも特に印象に残った点/発言を書いていく。
さいたま市がビズリーチで副業・兼業限定「教育DX人材」を公募
文部科学省が掲げる「GIGAスクール構想」実現に向け、教育改革をけん引するビジネスのプロをビズリーチで募ったという内容。
全国の教育委員会、自治体において、副業・兼業限定でGIGAスクール構想に関わる教育DX人材を公募するのは初めてということだ。
ここではIT産業というより、人材ビジネスに対して感じたことだが、今後こういった高付加価値(明確な意義のもとにトップオブトップな人材を募る)を提供できる企業と、兎に角データ数を武器に求人をばら撒く人月ビジネス企業の差が拡大するのではと思う。
それどころか、後者は自動化できそうである。例えばエンジニアマッチングであれば、個人にとことん寄り添う(転職前後のフォローなど徹底したUX等)か、IT産業のクライアントと一緒に採用を通じて”2025年の崖”に挑むなど、人材を結びつける意義がより問わるのではないだろうか。
本当にユーザー企業のエンジニアが増えればOKか?
IT人材の7割が「ベンダー企業」に所属する日本
IT人材の6~7割が「ユーザー企業」に所属するアメリカ
よく日本のDXが進まない要因として取り上げられる数字である。
だが、この意見に山口さん(IBM代表)は疑問を呈する。
また、日本のデジタル化遅れについて時田さん(富士通代表)はこう説明する。
最近は、DXとデジタイゼーション/デジタライゼーションの違いなど解説する記事も増えたかと思うが、やはり根本の業務プロセスから見直す必要がありそうだ。
別のシーンで山口さん(IBM代表)は、「日本は個別最適は悪くないが、全体最適がなされていない」とも説明する。
フロントエンドで実現する顧客体験は米国比で優れているが、(モバイル広告やSNSマーケティングは行っているが)バックエンド側で組織横断的にプロセスが繋がっていない。
特定業務はRPAで自動化しているが、組織横断的にプロセスの見直しが行われていない。
FAQにAIが活用されているが、経営判断のためのAI全体活用がなされていない。
最後に、「そういった意味では、デジタル庁は横グシを相当発揮できるのでは」と結んだ。
我々がこれまで顧客のために良かれと思ってやってきたことが、”ベンダーロックイン”という全く反転した価値観に変わっている。
昨今のニュースでは、あたかもSIerが顧客囲い込み/依存を目的とした個別最適を行って風に言われているが、時田さん(富士通代表)はこう述べる。
誰かのせいにするのは簡単だし心地が良い。
だが今は、各企業/自治体/組織が自身の業務や経営のあり方を見つめなす、デジタル化以前の話に取り組むフェーズだと、ここまでの議論を聞いて感じた。
日本企業がメガクラウドベンダと同じようなものを作れるのかどうかについて、インプリメントのスピード感や投資の規模感からも難しいと時田さん(富士通代表)は説明した。
どのようなサービスを活用するかのHowでは勝てずとも、先の山口さん(IBM代表)の発言にもあったような、顧客体験価値の創出などきめ細やかなUXを実現する業務フロー、つまりWhyでは日本は戦えるのではないかと信じたい。