【日本の危機?】世界の医薬品市場、ドラッグ・ラグについて
バイオテックの話題に関連して、世界の医薬品市場と、日本の置かれている状況について書いてみます。以下は、2021年の世界の医薬品の国別売上高です。
全体1兆4235億ドルのうち、米国が全体の40%を占め、次に中国12%、日本6%と続きます。EU4か国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)+イギリスを1グループとみる場合、全体に占める割合は14.8%です。
日本は医療制度が充実しているといわれていますが、売上ベースではわずか6%のようです。
実数での国別売上高は以下の青棒になります。オレンジ棒は2026年の予測売上高です。
ここで日本について何か気づいた方、いらっしゃいますでしょうか。
そうです。日本だけ、将来予測が減少しているのです。
以下に2017~2021年の年平均成長率(青)、2022~2026年の年平均成長率(オレンジ)をお示しします。過去5年間も、今後5年間も、日本だけマイナス成長となっています。
この事実は日本にどのような影響をもたらすのでしょうか。
まず、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの問題が挙げられるかと思います。
ドラッグ・ラグとは、海外で承認されている薬が日本で承認されるまでにかかる時差のことを言います。ドラッグ・ロスとは、海外で承認されている薬がもはや日本では使えない(承認予定がない)ことを指します。
ドラッグ・ラグが長くなったり、ドラッグ・ロスが生じる原因として、日本で新薬を開発することの費用対効果が悪いことが指摘されています。具体的には先ほどの日本市場が縮小し続けていること、想定薬価は安いが開発コストは高いことが挙げられています。
また、近年はEmerging Biopharma(新興バイオ医薬品企業)が開発をすすめることも多く、そういった新興企業は、日本での医薬品開発のコスパの悪さから日本での開発を計画しないことが増えています。
この状況が悪化し、日本ではいつまでたっても最新の医薬品で治療することができない事態に陥ってほしくないなあと思っています。
参考文献
The Global Use of Medicines 2022: OUTLOOK TO 2026, Jan 2022, IQVIA Institute
医薬産業政策研究所 ニュース No.67 2022年11月発行