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聴神経腫瘍に対する定位放射線治療後の腫瘍内出血について:多施設研究

  • Bin-Alamer O, et al.,  Intratumoral Hemorrhage in Vestibular Schwannomas After Stereotactic Radiosurgery: Multi-Institutional Study. Neurosurgery. 2023 Aug 15. doi: 10.1227/neu.0000000000002627. Epub ahead of print. PMID: 37581440.

要旨

背景:定位放射線治療(SRS)後の聴神経腫瘍(VS)における腫瘍内出血(ITH)は稀である。ITHの発生率を明らかにし、その管理と転帰について検討した。
方法:International Radiosurgery Research Foundation, ISRSと提携する10施設での多施設共同後方視的研究。SRS後のVS患者9565人を抽出した。
結果:SRS後にITHを発症した患者は合計25人(累積発症率0.26%、出血時期は中央値でSRS後10か月)で、血腫量中央値は1.2mlであった。ほとんどの患者はKoosグレードII-IVのVSであり、年齢中央値は62歳であった。ITH出現後、21人は保存的加療、2人は緊急外科的介入を受け、2人は保存的加療開始数年後に三叉神経痛や顔面神経麻痺悪化のため、摘出術を受けた。摘出された腫瘍の病理組織学的所見は、炎症細胞と微小出血を伴った典型的な良性VS組織像で、とくに硬化像はみられなかった。最終経過観察時には17例が改善し、8例は臨床的に安定していた。ITHによる死亡例はなかった。
結論:VSに対するSRS後のITHはきわめてまれであるが、臨床症状や重症度にはばらつきがある。患者固有の因子、臨床的および/または画像上の進行の速さ、ITHの拡大、患者の臨床症状に基づいて個別に管理されるべきである。

リスク因子

 コントロール不良の高血圧、抗血小板薬、抗凝固療法
 嚢胞性腫瘍(嚢胞自体が微小出血の結果と考えられる)、大型腫瘍
 一方、SRS自体はITHのリスクを増加させない

管理・転帰について

 出血の増大や神経症状悪化があれば外科的摘出が必要だが、それ以外では保存的加療で十分なことが多い。本研究ではITHによる死亡例はゼロだった。

感想

北米、アジア(台湾、インド)、中東(エジプト)、東欧(チェコ)の10施設による多施設共同研究。(ピッツバーグ大の単施設による同内容の論文もあり。Bin-Alamer O et al., JNS, 2023)腫瘍内出血症例の16%は、定期的な経過観察中にたまたま発見され無症状であったとのこと。
自分もかつて単施設での400例超のSRS後のVS症例を追いかけたことがあるが、症候性腫瘍内出血は1例であったので、本研究の累積発生率0.26%は納得できる数値であった。
一方で、SRS後フォローアップのプロトコル(画像撮影間隔やモダリティ・撮影シークエンスなど)が施設間で統一されていないという問題あり。suceptibility-weighted MRIは最も感度・特異度が高いシークエンスだが、本研究の対象は約40年に及んでいることから、フォローアップに用いられていたのはわずかだろう。より正確にITHを検索した場合はもうちょっと頻度は高くなる可能性がある。画像上ITHを認めた場合は慎重なフォローが必要になるが、臨床的に重篤になるITHはかなり稀という、これまでの認識には変わりなく、より大規模なデータで再確認することができた。

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