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私が生きた証

「100年後自分が生きた証は何か残せるのだろうか」


今から5年ほど前、ふとそんなことを思ったことがある。そんな大それたことでなくてもいい。例えば子どもを産んだ人だったら、その子の中に自分のDNAが受け継がれ、その子がまた子どもを作ればまたその先に自分が生きた証が受け継がれていく。実際に今の私は私の親の親の親の……。大昔の誰かの生きた証なのだ。

でも私は子どもを作らなかった。5年まえはギリギリ子どもを産むこともできる年齢だったけれど、そのような展開にはならなかった。だから、100年後に子孫を残すことはもうできない。(子どものいない人生を悔いているわけでは決してない)

歴史の教科書に残るようなことでなくてもいい、私が生きていたことを何か「形」に残したい。……一番私らしいことは、今やっている仕事だ。

外構と言って、門周りや庭の計画をしている。家をより魅力的に見せる手法として、また住んでいる人を素敵に見せるものとしての門構え、部屋よりも豊かに過ごせる庭。居ながらにしてリゾート地に行ったくらいにくつろげる庭。そのようなことばかり四六時中考えている。

それなら私が設計した庭が100年残るのでは? と思われるだろうか。残念ながらNOだ。 よほどの名庭にでも選ばれない限り、現在の日本の住宅の考え方では100年後に同じ状態で家や庭が残ることは考えにくい。大抵は建て替えられるだろう。だから、私の施工例はきっと100年後には跡形もないと思う。

設計する時、お客さんに要望をお聞きするのだが、これにも独自のスタイルがある、と思っている。「何をどこに何で作りたいか」を聞くのではなく、私が大切にしているのは「何をしたいか」と「どんな気持ちで過ごしたいか」だ。「何をどこに何で?」で始めると必ずカタログからの物選びに陥る。それならお客様がホームセンターに行き、DIYで庭を作るのと変わらない。もっと気持ちを大事にして、その気持ちを形にするようにすると「事作り」になる。そうやって完成した門構えや庭は全く違う物に仕上がるものだ。


平成からその次の時代へかけて、こんな仕事の仕方をしていたという、その「考え」そのものをなら、100年後に残すことができるかもしれない。いや、残したい。それには教育? 後進の育成が必要だろう。誰かを雇ってその中で、伝えていくしかないのか。

よく言われることだが、人を正規に雇用するのはとてもお金もかかるのに、その人たちにうまく伝わって継承されるかはかなり疑問だ。

相性もあるし、才能もあるし。すぐにやめちゃうかもしれないし、育ったらやめちゃうかもしれないし、かなりリスキーだ。

それより、一つ一つ私ができる範囲の人数のお客様に丁寧に向き合っていくことの方がずっと仕事としては良いものができる。そこを犠牲にしては本末転倒だ。

でも残したい! 

そんなことを二年ほどずっと考えている間に、世の中の技術は格段に進化した。AIの力は特に飛躍的に伸びた、ように感じる。

AIが将棋の世界で一流の棋士に勝ったり、自動運転の車もそう遠くない将来に実現しそうだし……。

去年の秋くらいだったと思う。

今の私の仕事の頭を全部AIにできないか? 突然思いついた! 古い漫画のパーマンに出てくるコピーロボットのようなものだ。精度の問題はあれ、きっと技術的には可能なはずだ。

きっと私の設計作法(形のこと、ヒアリングのことなど全て)をできるだけ細分化して明文化できれば、それが細かくて項目が多ければ多いほど、精度の高いコピーロボットになりそうだ。

子どもは残せなかったけれど、私のコピーロボットなら残すことができるかもしれない。いや、残すのだ! 画像はコピーすれば劣化する。でもコピーロボットは AIだ。きっと実務経験を積み、データー量が増えれば増えるほど進化していくのではないか? 

今から30年後、私のコピーロボットがあったらいいな。

いや作ろう! コンピューターの技術的な面はどなたかに相談するとして、まずは自分の脳みそを洗いざらい出し切り、整理整頓する作業に取り掛かろう。

コピーロボットが全国の同業者や、仕事をしたい人のところに行き、全国の家の庭の設計をする。いや、ロボットだ、翻訳機能も付いているはず! 世界中どこへでも同時にコピーロボットなら派遣させることができる。世界中のコピーロボットの情報はビッグデーターとして集積されて、本物の私が10年も20年もかけて蓄積された知識や技術はきっとあっという間に超えられてしまうのだろう。そうなったら最高だ。

こうして「私が行きた証」はどんどん進化して100年後、200年後に残って行く。


どなたか、このプロジェクトにAIの技術でお力添えいただける方いませんか?


※実際にはロボットの体ではなく、アプリのようなものになるのかと思います。





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