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選択することの話

選ぶこと、選ばないこと。

複数の選択肢の中からなにかを「選ぶ」ということは、その他の選択肢を「選ばなかったこと」と同じである。選ぶことのできる選択肢は複数ある場合も多いが、大抵の場合は1つしか選べないし、自分の思うような選択肢を同時に選ぶことはできない。

インパクトの大きなところでいうと、進学。自分が合格した大学の中から実際に進むことができるのは1つの学校だけ。ある学校に進むという選択をすることはつまり、その他の学校に行くことを諦めるということに等しい。
例えば、就職。ある企業に就職を決めるということはその他の企業に就職することを諦めるということ。

もっと身近な例を。
朝起きる。あまりにも眠いので「もう1時間だけ布団で寝る」という選択をする。これは、「その1時間を、あるいはその1時間でできた家事や課題をしない」という選択をすることと同じだ。

何かを選ぶということは、その他全ての選択肢を諦めるということに等しい。経済学で言うところの機会費用の話。

スポーツにも、同じような構図が存在する。

勝った人、負けた人の話。

あるチームが優勝するということは即ちその他のチームは負けたということ。あるチームの優勝の影には、たくさんのチームの敗北が存在する。
例えば甲子園、例えばインターハイ、例えば、小さな町の地方大会。
勝ったチームのドラマがあれば、負けたチームのドラマがある。

私は『ハイキュー!!』という漫画が好きだ。週刊少年ジャンプで連載をしている、バレーボールの漫画である。
『ハイキュー!!』は、負けたチームをおざなりにしない。負けたチームの描写が、すごく丁寧だ。
印象に残っているのは、春高予選、青葉城西が負けたあとのシーン。
及川の涙、今までありがとうの言葉。負けたチームのドラマがちゃんとあって、それを描いている。
『選ばれなかった』側をしっかりと描いているところが、好きだ。

アニメ、漫画はきれいなところだけあれば良い、かもしれない。
そのほうが、作品として面白いものになるだろうし、負けた側よりも勝った方のこれからが気になるのは当然だ。
学生生活だって、みんなでワイワイしたり、ちょっと寄り道して買い食いしたり、青春のきれいな部分だけ抜き取れれば、作品としてはそれで十分だ。

でも、私は忘れない。勝ったチームの影で、たくさんのチームが負けていること。その誰もが、胸に思いを秘めていること。
きれいな描写の影に、生々しい世界があること。きらきらした青春の影に、なんでも無くて地味な生活が溢れていること。

数々の選択を経て、今の自分があること。
選ばなかった選択の積み重ねの上に、今の自分があること。

選ぶこと、選ばないことの話。

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秋瀬憂
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