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異端児のジレンマ

2024/10/06
自宅にて



昔から大人数での飲み会が苦手だ。
具体的に言えば、「4人以上で開催される、終わりが見えない飲み会」だ。

世間では、飲み会に顔をださなければ協調性が無いだとか面白く無いだとか言われ、陰で文句を言われ、笑われる。それは不本意なので、どうしてもいかなければまずそうな場合は、無理して参加する。
全く、現代人は常に何かを嘲笑っていなければ不安なのだろう。
多様性が叫ばれるこの現代で、心の多様性に配慮する必要はないのだろうか。全く呆れてしまう。


大人数での飲み会の開始1時間前、いつも不健康な胸の高まりに悩まされる。一緒にいる友人たちに迷惑はかけたく無いので、平静を装う努力はするが、ある勘のいい(細かい変化に気づいてくれるのは本当はありがたい)友人はいつもそれに気づき、寄り添ってくれる。

「正味面倒臭いよな」
「早めに切り上げてサシで飲み行こうぜ」

本当にありがたい。
そんな彼は、僕と違って大人数の飲み会ではバカになれるタイプだ。自分がいなければ、そんなに気を使う必要もなくみんなで楽しく飲めるだろうに。そう思うが、いつも飲み会での避難場所として頼ってしまう。そんな大きな支えがありつつも、やはり飲み会自体への抵抗は揺るがない。


なぜ毎回、こんなにも億劫な気持ちになるのか考えてみた。

まず、飲み会の話題は「他人の悪口」だとか「自己顕示欲の押し付け」が多い。言う必要のない悪口、全く興味のない自慢話。その全てがちょっとでも笑えるもので良ければいいが、正直そんなことはない。
だから、家で本を読んだりゲームをしたりする方がいいのだ。

次に、僕は良くも悪くも考えすぎる。4人以上の飲み会では同じグループ内でも展開されている話題が二つに別れることがある。
特にその片方の話題が上で述べた笑えない話であったとき。これがキツイ。

「あっちの話題の人は楽しめているのかな」
「目の前のこの子は楽しいんだろうか」
「あっちの話題に行った方が楽しいのに」

自分の側の話題が面白くなくてついつい向こうの話に耳を傾けてしまうと、自分が仲間はずれにされている感覚を覚えさえもする。

たまに、このことを相談してみるが、「考え過ぎ」とか「気にし過ぎ」とか言う言葉で済まされてしまう。よくよく考えれば、それは気にせずいられる人たちの考えであって、参考になるはずもない。

最後に、金銭面。飲み会は、お酒が苦手な人たちがお酒が好きな人に金銭を巻き上げられる構造になっている。
飲んだ量に重みを乗せた加重平均を取るならこの点文句はないけれど、アルコールが入りきった会計時には、そんな頭は働かない。あれよあれよと合計金額を人数で割られ、3,000円の見えない請求書が配られる。

「飲み放題だったら関係ないじゃん」

そんなことを言う、饒舌で詐欺師めいた奴もいる。いつも違うと思う。飲み放題にして得するのは君たちだけで、お酒が飲めない人からしてみれば一杯に1,000円以上かけているようなものだから、そもそも損を強いられている。それなら同じお金を払って、友人が働くバーで悩みを聞いてもらいたい。


こんなことを考えていると、あることに気づいた。
結局僕は、自分を守ってあげたいだけなのだ。

お笑いのない本音の悪口を聞くのが苦手なのは、自分もそう言われているか不安になるからだし、自己顕示欲の押し付けが苦手なのは、自分に顕示できる「何か」が無いから。人数を気にしてしまうのは、どこか自分が「どうでもいい存在」になりたく無いだけだし、金銭面は文字通りお金に余裕がないから。

僕はそれで問題ないと思っている。そう思いたい。
自分の機嫌は自分でしか取れないから自分大事にしてあげることは大切だと思うし、飲み会に行かなければ文句を言う人たちとは根本的に話が合わないので、長くは続かないと思う。だから今後も自分は同じようにするだろうし、同じように悩むはずだ。

世間では大多数の意見が正しくて、少数の意見はそこから外れた異端だとされる。大人数の飲み会への不参加は、この図式にぴったり当てはまるので、完全に異端児の行動だ。いくら「普通」の人でも、異端児的な行動が心地いい場面はあるだろうし、少なくとも今回の場合自分はそうだ。

それでも、異端児的な行動は時には人に「自分勝手で器の小さい人物」だという印象を与える。自分を守ろうとすると、自分が傷つく。

ジレンマと対峙する。
こう言う時、どうすれば良いのだろうか?

やっぱり悩む。



余談です。
先日、星野源さんのエッセイ集、『いのちの車窓から2』を読みました。
ネタバレになるのは嫌なので、何も言いませんが「喜劇」のエピソードを読んで心から感動しました。

どうしても読んでほしいので、お時間とお財布に余裕のある方は手に取ってみてほしいです(笑)

今日はこの曲。源さんへのリスペクトも込めて。
星野源で、『喜劇』

余談でした

『喜劇』/ 星野源


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